odd_hatchの読書ノート

エントリーは3000を超えているので、記事一覧よりもカテゴリー「INDEX」をご覧ください。2023/9/21

山口雅也

山口雅也「キッド・ピストルズの醜態」(光文社文庫) 古い形式や趣向を21世紀に生き延びさせようとするレトロな志向の短編集

キッド・ピストルズの説明は下記を参照。本書は2010年に出た第6作なので、とても息の長いシリーズだ。例によってマザー・グースの歌詞の通りに事件が起きる。2019/11/1 山口雅也「キッド・ピストルズの冒涜」(創元推理文庫) 1991年 だらしない男の密室 ・…

山口雅也「落語魅捨理全集 坊主の愉しみ」(講談社文庫) 全編を暗記して復唱すれば落語として上演できそう。

落語はのなかには不可能な謎が現れることがある。落語では落ちをつけるので謎はそのまま放置されるのだが、ミステリーマニアには合理的な解決をつけたいと思うものがいる。と言って知っているのは都筑道夫の「なめくじ長屋」第5巻きまぐれ砂絵がそう。副題…

山口雅也「日本殺人事件」(角川文庫)

日本人の母(再婚のため血縁はない)を失ったとき、トーキョー・サムはまだ見ぬニホンへの憧憬が強まった。サンフランシスコの私立探偵ライセンスは米軍基地のあるカンノン市では有効である。そこで、失業したサムはわずかなたくわえでニホンへ向かった。そ…

山口雅也「続・日本殺人事件」(創元推理文庫)

「日本殺人事件」1994年の評判が良かったので、作者に連絡をとってあと2作を翻訳して1997年に発表した、とされる。 巨人の国のガリヴァー ・・・ 私立探偵事務所を開くことになったトーキョー・サム。最初の依頼人はなんとスモウ・レスラーだった。カンノン…

山口雅也「生ける屍の死」(創元推理文庫)-1

創元推理文庫で650ページ弱の分厚さで、途中でメモを取るのをあきらめたから、以下のサマリーには盛大に勘違いがあると思います。 アメリカ、ニューイングランドの片田舎にあるトゥームズヴィル(墓の町)という奇妙な名前の町。イギリスから移民したバーリ…

山口雅也「生ける屍の死(創元推理文庫)-2

2019/11/05 山口雅也「生ける屍の死」(創元推理文庫)-1 1989年の続き 初出は1989年(その後改訂されたらしい)。思い出すと、1980年代後半に「脳死」論争があった。医療機器の発達で脳以外の器官は機能停止にならないが、脳だけが機能停止した状態があり、…

山口雅也「キッド・ピストルズの冒涜」(創元推理文庫)

パラレル世界のイギリスは読者の現実世界と地続きではあるが、微妙な差異がある。たとえば、シェークスピアは「オセロ」を喜劇として発表し、ジョン・レノンは暗殺されていなくて・・・。それでも経済停滞はどうしようもなく(バージェス「時計仕掛けのオレ…

山口雅也「垂里冴子のお見合いと推理」(講談社文庫)

「垂里家の長女・冴子、当年とって33歳、未婚。美しく聡明、なおかつ控えめな彼女に縁談が持ち込まれるたびに、起る事件。冴子は、事件を解決するが、縁談は、流れてしまう……。見合いはすれども、嫁には行かぬ、数奇な冴子の運命と奇妙な事件たち」http://bo…