ドイツ文学
テオドール・シュトルムは1817年生まれ1888年没。クラシックマニアからすると、リスト(1811-1886)やワーグナー(1813-1883)の同世代人。別に仕事を持っていて余暇に文筆活動をした人で、この短編集に収められたのは彼が30代の作品だ。とても甘いロマンテ…
1990年代初頭に角川文庫が長らく絶版・品切れになってたカフカをまとめて復刊した。全部買ったのだが、1950年代の翻訳はどうにも読みづらい。おかげで翻訳者はもちろん、カフカにも悪印象を持つようになってしまった。ずっと敬遠。 でも、中編「変身」ならば…
フリッツ・ラングの大作映画「メトロポリス」。初めて見た時から魅了された。よくあるオールタイムベストテン映画にはキューブリック「2001年宇宙の旅」が第1位になることが多いが、俺なら「メトロポリス」だな。ストーリーのめまぐるしさ、複数あるテーマの…
2025/08/29 テア・フォン・ハルボウ「メトロポリス」(中公文庫)-1 数奇な運命をたどった映画と小説。 1926年の続き ストーリーの主人公は若者フレーダー。独裁者ヨー・フレーデルソンの息子で将来を嘱望されているが、聖処女マリアを幻視してから忘れられ…
2025/08/28 テア・フォン・ハルボウ「メトロポリス」(中公文庫)-2 大人の主人公たちの欲望はアニメ「新世紀エヴァンゲリオン」と同じ死んだ女への追慕。 1926年の続き 映画第3部になると、3つのモッブが現れる。人造人間マリアによる指嗾で、都市の秩序…
2025/08/27 テア・フォン・ハルボウ「メトロポリス」(中公文庫)-3 反資本主義と反機械で殺気立つモッブは民族中心の全体主義運動に絡めとられる。 1926年の続き 映画で最も印象的だったのは、機械人間のマリアでも、大げさなだけで無能なフリーダーの稚拙…
文学好きが高じると、自前の「世界文学全集」を作りたくなる。ヘッセほどの読書家が「全集」(実際は選集)を作ると、他の読書好きが参考にできるよいリストになる。敗戦後日本で筑摩書房、平凡社、新潮社、中央公論社などが作った「世界文学全集」はヘッセ…
1200~1210年に中世ドイツ語で書かれた古典を1970年代の日本語訳で読むのは、たとえば英訳された「平家物語」を読むようなものか。日本中世の武士の作法や暮らしぶりは他の本や映画などで想像できるのであるが、中世ドイツとなるとはてさて。そこでワーグナ…
2023/06/06 ヴォルフラム・フォン・エッシェンバハ「パルチヴァール」(郁文堂)-1 13世紀初頭に成立したドイツ騎士物語の最高峰 1210年の続き 第9章「パルチヴァールとトレフリツェント」の章で、ワーグナー版ではあいまいだったことがすっかり開明する。 …
2023/06/05 ヴォルフラム・フォン・エッシェンバハ「パルチヴァール」(郁文堂)-2 ワーグナー版「パルジファル」と同じ話かと思ったら全然違った 1210年の続き パルチヴァールが放浪の旅を続けているとき、ガーヴァーンが魔術師クリンショルの作った魔法の…
2023/06/03 ヴォルフラム・フォン・エッシェンバハ「パルチヴァール」(郁文堂)-3 パルチヴァールは聖杯城に入城するが、クンドリーもクンリグゾルも関係なかった 1210年の続き ヴォルフラム・フォン・エッシェンバハの生涯は詳しいことはわからないらしい…
初読は男子校の高校生だったので、ウェルテルの苦悩などわからないも同じだったなあ。と往時を懐かしむ。 1774年ゲーテ25歳の時の出世作。1784年に改稿(新潮文庫は改稿後の版を翻訳したとのこと)。 第1部 ・・・ 1771年5月。この世に飽きているウェルテル…
2023/05/30 ゲーテ「若きウェルテルの悩み」(新潮文庫)-1 仕事につかないでいい人が暇や退屈の中から〈この私〉という自我を発見する 1774年の続き 第2部 ・・・ ウェルテルくんは実家に帰って、公爵の仕事をするようになる。失恋の痛みは強く、「つまらな…
2018/11/08 フレドゥン・キアンプール「幽霊ピアニスト事件」(創元推理文庫)-1 2008年の続き 1949年の物語も同時に語られる。1940年、ポーランド出身の青年(主人公)たちがナチス隆盛期のドイツを逃れて。パリの社交界に入り込む。サロンがまだ残っていて…
1999年、ある青年がドイツ・ハノーファーのカフェで目覚める。自分は1949年に死んだはずなのに。金は持っているので安心したが、50年で起きたインフレは途方もない。自分のできることであるピアノを弾くと、古めかしいテクニックと解釈(コルトーに似ている…
説明にドイツ・ミステリーとあったので、即座に購入。自分が読んできたドイツ文学は1945年までだった(エンデの童話を除く)。19世紀ドイツのことは多少は知っているのに、現代ドイツをほとんど知らない。そこにフォーカスした読書になった。 笠井潔の矢吹駆…
2017/12/12 アンネ・シャプレ「カルーソーという悲劇」(創元推理文庫)-1 1998年 フランクフルトに自動車で一時間先にある田舎町。広告代理店に勤めていた男パウル・ブルーマーが妻と離婚し、田舎暮らしを始めた。業界暴露本を準備しているが、昼間は自転車…
1908年にウィーンで作者不詳で私家出版された好色文学。タイトルを直訳すると、「ヨゼフィーネ・ムッチェンバッヒュル――あるウィーンの娼婦の身の上話」となる。ペピはヨゼフやヨゼフィーネを呼ぶときの愛称とのこと。 まえがきには、ペピは1852年2月20日生…
フーゴ・フォン・ホーフマンスタール「選集3 論文・エッセイ」(河出書房新社)-1の続き 続けて、作家論や作品論。19世紀末の評論は読むのが困難。なにしろ対象の作品を読んでいない。読むことができない。アルテンベルク、グリルパルツァー、ジャン・パウ…
ホーフマンスタールはリヒャルト・シュトラウスの歌劇の台本を書いたことくらいでしか知らない。ドイツ-オーストリアの19世紀末には興味はあるが、おもに音楽に対してであって、文学評論にはむかっていない。そのうえ、最近、詩が読めなくなった。「理系」の…
19歳の少年ポウル・ボイメルはのちに第一次世界大戦と名付けられた戦争に動員される。10週間(短い!)の軍事訓練で、西部戦線に派遣され、フランスやベルギー軍と戦うことになった。同じクラスから数十人も招集されていて、すでに数名は戦死している。そこ…
詐欺師フェーリクス・クルルの告白 ・・・ 2012年には光文社文庫で上下2巻の巨大な長編で翻訳されているが、1951年初版の新潮文庫では第1部と第2部(未定稿)だけが訳出されている。トーマス・マンは1875年6月6日生まれ、1955年8月12日没。ということなので、…
表題作ともう一作がはいった短編集。いずれも1920年代の不安と不況を反映した時代の物語。 マリオと魔術師1930 ・・・ 北イタリアの避暑地を訪れたドイツ人作家の一家。ある夜、魔術師が町の劇場で公演をするというので、一家総出で見に出かけた。この魔術師…
高校生の時に「トニオ・クレーゲル」と併録された新潮文庫で読んだが、なんだかよくわからなかった。それ以来なので四半世紀ぶりということになる。一時期はマンの作品をよく読んだが、その緻密さに驚かされる一方で、なかなか作品世界の中に入っていけない…
いやあ、読了するのに時間がかかった。購入は1993年で、手をつけてから100ページに行かないうちに読むことができなくなり、その後数十ページごとに挫折を繰り返した。ようやく残り250ページをここ数日のうちに読むことができたのだ。同じような体験は「審判…
「ドイツの劇作家ブレヒト(1898-1956)が音楽家クルト・ワイルと組んで、オペラの革新、戯曲と音楽との新しい融合を試みた作品。ロンドンの警視総監と結んだ盗賊の首領マクヒィスが、多くの冒険ののち、絞首台に上がるかわりに爵位と褒章を授けられるという…
1890年代に書かれた。「パンドラの箱」はわいせつ文書として摘発され、改稿を余儀なくされる。この戯曲そのものよりもアルバン・ベルクのオペラで有名になったと思う。ちなみに、ベルクはこの戯曲とハウプトマン「そしてピッパは踊る」のいずれを取り上げる…
これまでの自然主義的な作風、社会の矛盾の摘出を目指していた劇がここで一変する。「織工」から2年後の1894年、作者36歳の作品。 登場するのは、鐘の鋳造家。よい音を作ることに執着した芸術家肌の職人ハインリッヒだ。かれが制作に絶望したとき、出会うの…
1844年に起きた機械破戒運動を参照して1892年にハウプトマンが作った戯曲。この国では1933年に築地小劇場で上演された(訳者久保栄はこの劇場の関係者)。 簡単に背景のおさらい。西欧の綿織物はインドの綿花をオランダ・ベルギーあたりが輸入し綿糸に加工。…
ごく簡単に紹介すると、1862年生まれの劇作家。デビュー当時は、自然主義的作風で社会批判を行うものであったが、次第にロマン主義や象徴主義が作品に反映されていく。とりあえず「日の出前」「織工」が前期の自然主義を代表するもので、「沈鐘」が象徴主義…