odd_hatchの読書ノート

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近代戦争

吉見義明「従軍慰安婦」(岩波新書)

1945-70年にかけてのこの国の文学や映画には従軍慰安婦が登場することがあった。野間宏「真空地帯」、大岡昇平「俘虜記」、野村芳太郎「拝啓天皇陛下様」、岡本喜八「独立愚連隊、西へ」「肉弾」「血と砂」などが思いつく。慰安婦の実態を知らないでいたので…

小林英夫「日本軍政下のアジア」(岩波新書)

1931-1945年の「アジア太平洋戦争」のおもに非戦闘地や期間における軍政の被害状況をまとめる。戦闘期における日本軍の残虐行為はよく知られているが、非戦闘期になると情報が少ない。軍人、民間人が現地人を暴力的差別的に扱ったというのが断片的に書かれる…

高木健一「今なぜ戦後補償か」(講談社現代新書)

20世紀の15年戦争は、周辺諸国および交戦国に多大な被害を及ぼしたわけだが、この国にいると1952年のサンフランシスコ条約で全部清算されたと考える。しかし、1990年以降に韓国、中国、台湾の戦争被害者が日本や現地の日本法人を相手に補償を請求する裁判が…

井上清「天皇の戦争責任」(岩波現代文庫)

これは半藤一利「日本の一番長い日」とあわせて読むのがよいな。「日本の…」では、8月14日から15日までのクーデター未遂が主に下級士官視点で書かれているが、こちらは開戦から終戦までの政府首脳の動きが書かれている。その資料は、「木戸日記」「杉山メモ…

日本戦没学生記念会「きけわだつみのこえ 第1集」(光文社)

1949年昭和24年に東大協同組合出版部が刊行したもの。そのまえに東大生のみの戦没学生の手記「はるかなる山河に」を出版していて、それを母体にして、ほかの全国の大学高等専門学校出身者の遺稿を集めた。集まったもののうち、75名分をこの題名で出版した。 …

荒俣宏「決戦下のユートピア」(文春文庫)

目の付け所が違うなあ。「あの戦争」を語るとなると、切り口はいろいろあれど、被害者か兵士であった日本人というところに落ち着く。空襲や機銃射撃、空腹、いじめ、買い出し、インフレ、物資不足、教練の記憶か、新兵訓練に外地派遣、死地、飢餓、収容所体…

浅野裕一「孫子」(講談社学術文庫)

テキストクリティークの話から。もともとは紀元前500年ころに成立したといわれるが、自著ないし当時の本はもちろん残っていない。孫子の稿本は遡っても宋の時代(960-1279)まで。その写本は限りない人の手を経ていて、本文と注釈の区別がつかなくなっている…

木下順二「木下順二戯曲選 III」(岩波文庫)

オットーと呼ばれる日本人 ・・・ 1930年代の上海。ドイツのナチスに席を置くジョンソンと呼ばれるドイツ人を首魁を中心にしたアメリカ人、中国人、日本人たちの国際共産主義スパイ活動。その一員である「男(とだけ呼ばれるので「オットー」)」が主人公。…

沼田多稼蔵「日露陸戦新史」(岩波新書)

そう簡単には入手できない一冊。自分の手元にあるのは昭和15年初版のもの。新規開店した古本屋にいったらこれが300円で売られていた。1990年ころの話。数年を経ずしてつぶれてしまった。 内容を例によってまとめてみるが、今回は超訳をところどころで採用。 …

野村實「日本海海戦の真実」(講談社現代新書)

1905年5月25日の日本海海戦のことは、ノビコフ・プリボイ「ツシマ」によってロシア側のことを知ることができるとはいえ、この国の多くの人は司馬遼太郎「坂の上の雲」で知ることになるだろう。ここには、1968年ころの連載中、まだ存命中だった日本海海戦経験…

ノビコフ・プリボイ「バルチック艦隊の潰滅」(原書房)現在は「ツシマ」で出版

1933年に発表され、同年にスターリン賞を受賞した小説。この国には1930年代に翻訳され、現在でも原題「ツシマ」のタイトルで上下2巻で販売されているらしい。自分が読んだのは、「バルチック艦隊の潰滅」というタイトルの一冊本。なにしろ9ポか10ポの細か…

家永三郎「太平洋戦争」(岩波現代文庫)

文字から炎が湧き上がるかのような熱い文章。1913年生まれ。学生時代の1932年にマルクス主義と出会い、圧倒的な体験になった。その後、高校の教師になるが戦前・戦中は時局批判の活動ができない。戦後、その体験から現代史を講義するとともに、政治批判を活…

森本忠夫「マクロ経営学から見た太平洋戦争」(PHP新書)

「あの」戦争について書かれた本は多岐にのぼる。小学生のころに手にした太平洋戦記を皮切りに多くの本を読んできた。最近の問題意識は、「あの」戦争の個々の局面における決断や戦局推移にではなく、どうすれば「あの」戦争を回避することができたのか、ど…

大江志乃夫「徴兵制」(岩波新書)

書かれたのは1981年。レーガンがアメリカ大統領になり、新たな冷戦の開始を意図した。共産圏の周辺国家に核兵器を配備しようとして、反核運動をおこす原因になった。日本には核兵器を配備することはできなかったが、大幅な防衛費の負担増加を求めた。そのた…

平岡正明「日本人は中国で何をしたか」(潮文庫)

だいたい3つの区分で旧日本軍の行った残虐行為を紹介し、その背景を分析する。その際に、国民党軍や八路軍の戦略、政略も検討対象にする。そのことは、残虐行為の背景を理解する助けになる。 いつものように著者の主張をまとめよう。 ・1931年の柳条湖事件…

森村誠一「悪魔の飽食」(カッパノベルス)

1982年のベストセラー。百万部を超えたらしい。このような陰惨なノンフィクションを受け入れる土壌があったことを懐かしく思い出す。レーガン政権になって核戦争の可能性が増したと思われた時代だったこと、それから医療行政の不手際が目立つことあたりがそ…

大宅壮一編「日本の一番長い日」(角川文庫)

学生時代に読んでいて書架に眠っていたものを再読。岡本喜八監督による同名映画をみたのが最近(2006年現在)だったので興味を持ったから。著者名は手元にある古い角川文庫版によるが、あとがきによると実際の著述は半藤一利氏。最近、文春文庫で復刊されたほ…

徳川夢声「夢声戦争日記 抄」(中公文庫)

無声映画を上演する時、日本では弁士という特別の形態があった。どうやら西洋ではオーケストラあるいは小型楽隊が場面に合わせて演奏しているのを聴いていた。それはあたかもバレエを見ているようなものだ。ところが日本では小さな楽隊に合わせて、弁士が場…

多川精一「戦争のグラフィズム」(平凡社ライブラリ)

対米開戦の避けられないと思われた昭和14-5年ころに、陸軍参謀部は考えた。米にはLifeが、ソ連にはUSSRというグラフ誌があるではないか。それに比べわが軍、わが国には。というわけで、参謀本部の肝いりで「対ソ宣伝計画」を目的にした民間雑誌会社を作るこ…

高杉一郎「極光のかげに」(岩波文庫)

「敗戦後,著者は俘虜としてシベリアで強制労働についた.その四年間の記録である.常に冷静さと人間への信頼とを失わなかった著者の強靭な精神が,苦しみ喘ぐ同胞の姿と共に,ソ連の実像を捉え得た.初版(一九五〇)の序に,渡辺一夫氏は,「制度は人間の…

早乙女勝元「東京大空襲」(岩波新書)

サイパン島などを陥落したのち、アメリカ海軍は空爆の指揮官をルメイ将軍に変えた。その結果、軍事施設をピンポイントで狙う作戦が変更され、無差別爆撃になった。東京への昭和20年1月と2月のテスト空襲で十分な成果を得られると判断したため、3月10日、14日…