odd_hatchの読書ノート

エントリーは2400を超えているので、記事一覧よりもカテゴリー「INDEX」をご覧ください。2020/10/13

戦争

大内力「日本の歴史24 ファシズムへの道」(中公文庫)-1

1926年から1936年までの昭和ゼロ年代。大正デモクラシーは「内には民本主義、外には帝国主義」であったが、この10年間で内はファシズムになった。 驚くべきことは、ファシズム体制が完成するまでに、象徴的な事件もカリスマ的な人物もでてこないこと。メルク…

大内力「日本の歴史24 ファシズムへの道」(中公文庫)-2

2021/03/02 大内力「日本の歴史24 ファシズムへの道」(中公文庫)-1 の続き 20世紀前半の国内政治がわかりにくいのは、元老だの元老院だのがあり、選挙で選出されていないものが政治的な決定を下すことができ、首相にいたっては天皇の裁可がないと組閣がで…

大内力「日本の歴史24 ファシズムへの道」(中公文庫)-3

2021/03/02 大内力「日本の歴史24 ファシズムへの道」(中公文庫)-1 2021/03/01 大内力「日本の歴史24 ファシズムへの道」(中公文庫)-2 の続き 経済で重要なのは、関東大震災の復興事業と金解禁、世界不況。前二つは、別に読んだ本のエントリーに詳述した…

エーリヒ・マティアス「なぜヒトラーを阻止できなかったか」(岩波現代選書)

WW2敗戦後、まず哲学者が表題の反省をした。ヤスパースやマイネッケ(「ドイツの悲劇」中公文庫)、マックス・ピカート(「沈黙の世界」みすず書房)を読んだ記憶がある。ドイツ精神を問題にした抽象的な議論のあとに、社会学や政治学から反省の書が出た。こ…

林茂「日本の歴史25 太平洋戦争」(中公文庫)-1

226事件終了後から敗戦まで。1936年から1945年までの10年間。 東アジアに日本主導のブロック経済圏をつくり、先進国の仲間入りをすること。これくらいが日本の国家目標であって、ブロック経済圏構想はおもに陸軍によって実施運営されることになった。軍事に…

林茂「日本の歴史25 太平洋戦争」(中公文庫)-2

2021/02/22 林茂「日本の歴史25 太平洋戦争」(中公文庫)-1 の続き 治安維持法、国家総動員法によって日本を運営する<システム>@カレル・ヴァン・ウォルフレンの外にいる人たちは、政治決定に参加することができなくなった。選挙があっても、政党が解党し…

太平洋戦争研究会「日中戦争がよくわかる本」(PHP文庫)

ここでいう日中戦争は1937年の日華事変から1945年の敗戦まで。 とはいえ、日本軍が中国大陸に軍隊を常駐するようになったのは1900年の義和団事件のとき。以来30年以上にわたって、常駐した軍隊が中国軍と交戦したり、市民に暴虐をふるうことがあったので、19…

笠原十九司「南京事件」(岩波新書)

南京事件の経緯は秦郁彦「南京事件」(中公新書)の感想に書いたので、それ以外のところを補足する。秦の本だと、アトロシティに注目が集まって、なぜ南京を攻略するのかが見えてこない。 単純化すると、前年の226事件で陸軍内部の抗争が終結。日独防共協定…

笠原十九司「増補 南京事件論争史」(平凡社ライブラリ)

1937年12月の南京事件(南京大虐殺、南京アトロシティ)は、事件当初から軍の知るところになっていたし、大本営にも伝えられ中止のために参謀などが派遣されたが止められず、現地発の情報は西洋に伝えられていた。現地軍はこのときの資料や記録を敗戦直後に…

吉田裕「日本軍兵士」(中公新書)

大岡昇平「俘虜記」(新潮文庫)や「野火」、野間宏「真空地帯」(新潮文庫)を読むと、日本軍は腐敗が激しい、隊内暴力が蔓延している、兵隊を粗末に扱うなど、日本軍のだめなところがたくさん目に付く。これまではおそらく軍全体の問題ではあるのだろうが…

常石敬一「七三一部隊」(講談社現代新書)

2010年代にめだつ歴史捏造のひとつのねたが「731部隊は防疫給水専門だった(だから人体実験はしていないし、捕虜の虐待もしていない)」というものがある。南京事件や従軍「慰安婦(性奴隷)」否定ほどの勢力はないものの、SNSではしつこく書き込みが行われ…

栗原俊雄「特攻 戦争と日本人」(中公新書)

栗原俊雄「戦艦大和」(岩波新書)では、戦艦による水上特攻をテーマにしたが、こちらは15年戦争(1931-1945)の生還を期さない戦闘を取り上げる。 さまざまな事情で生還を期さない戦いを選択することは、戦場においてみられる。飛行機や戦車や船舶の運行に…

栗原俊雄「戦艦大和」(岩波新書)

戦艦大和のことは昭和40年代半ばに読んだ少年向け戦争ノンフィクションで知った。悲惨な結末に戦慄したが、その後あまりに痛ましくてきちんと調べ直したことがない。「太平洋戦争」の通史を読むと必ず言及されるし、沈没した船体を引き揚げるプロジェクト…

大岡昇平「野火」(角川文庫)

何度も「野火」を読んでいるけど、どうにももどかしいというか、はぐらかされているというか、こちらがテーマをつかみきれていないというか、上手く読めない。とりわけ後半の「人肉食い」を巡る禁忌と乗り越えの議論がわからない。 補充兵として召集された「…

村瀬興雄「世界の歴史15 ファシズムと第二次大戦」(中公文庫)-1

1929年から1945年。1920年代の緊張緩和は1929年アメリカ発の成果不況によって破られる。これによると、アメリカ経済は数年前から不調になっていたが、株価だけが高騰。株価の下落によってアメリカの経済が沈滞。アメリカの企業はヨーロッパ、南アメリカ、東…

村瀬興雄「世界の歴史15 ファシズムと第二次大戦」(中公文庫)-2

2021/02/02 村瀬興雄「世界の歴史15 ファシズムと第二次大戦」(中公文庫)-1 の続き。 日本は1930年代から一種の鎖国をするようになり、権力の情報統制があったので、諸外国の実情はわからないようになっていた。敗戦とスターリンの死によって、ふたつの巨…

雨宮昭一「占領と改革」(岩波新書)

通常、1945年の敗戦で日本は占領された(間接統治だけと思われるが、沖縄諸島他はアメリカのと直接統治、北方四島他はソ連の直接統治)が、「占領政策ですべてが変わった」「日本の政党やリーダーは古くて何も変えようとしなかった」などと説明される。その…

佐藤卓己/孫安石 「東アジアの終戦記念日―敗北と勝利のあいだ」(ちくま新書)

「昭和20年8月15日正午、快晴酷暑のなか、玉音放送が流れ、日本人は一斉に頭を垂れた」というのが終戦や敗戦のイメージ。そこに皇居前の玉砂利で土下座する人々の写真(東京空襲や原爆のきのこ雲なども)を加えて、ビジュアルイメージが完成する。でも、それ…

阿波根昌鴻「米軍と農民」(岩波新書)

伊江島は沖縄本島の北部から西にある島。明治維新後、零泊した武家が移住し、開墾がはじめられた。土地が貧しいので、多くの人を食わせることができず、多くの若者が島を出て働きにでかける。著者・阿波根さんはとりあえず1903年生まれということになってい…

阿波根昌鴻「命こそ宝」(岩波新書)

前著「米軍と農民」は1973年で記述が終わっている。こちらは1973年から1992年までの記録。 大きな変化は1973年の沖縄「本土復帰」(本土からみた「沖縄返還」というのはどうも実情を正しく反映しているとは思えないなあ。では本土復帰がよいかというとこれも…

野坂昭如「国家非武装、されど我愛するもののために戦わん」(光文社)

著者は昭和5年(1930年)生まれ。この場合、元号表示のほうがよい。神戸の貿易商に関連する家で育った。小田実のいう「ええとこのボンさん」だった。近眼で兵隊になれないので、軍国少年として率先して奉仕する。昭和20年の神戸空襲で、家族と家をなくし、終…

中島健蔵「昭和時代」(岩波新書)

1903年生まれ、1979年没。戦前の肩書きは東京帝国大学文学部フランス文学講師にでもなるのだろうが、この人は文学者というよりも、人を集める組織者、運動の理事や幹事を引き受けるオルガナイザー、政治・文学・芸術などの評論家と見ることがおおい。もうひ…

郭末若「抗日戦回想録」(中公文庫)

先のコリン・ロス「日中戦争見聞記」(講談社学術文庫)を補完する本。ロスは1939年に重慶に飛び、そこに首都を移動した国民党政府首領・蒋介石と会おうとしている。 こちらは、前年1938年の国共合作時代に武漢で抗日戦線宣伝に携わっていた著者の記録。有名…

コリン・ロス「日中戦争見聞記」(講談社学術文庫)

われわれが外国を旅したときに、風景・文物・風習がどれも珍しくて、それとわれわれの日常に在るものの差異を考えてしまうことがある。それと同じことは日本を訪れた外国人にも起こっているはずで、彼らが記録したことは、そこに住んでいるものにはあたりま…