2014-03-01から1ヶ月間の記事一覧
タイトルの「天のろくろ」は、まあ運命みたいな、あるいは世界を創造管理している超越的な存在のいいかな。解説によると、作者はこのことば(「The Lathe of Heaven」)を荘子に見つけた(第二十三)というが、あいにく英訳した訳者の誤訳であるとこのこと。…
角川文庫の初出は1980年だが、その前の単行本は1974年。内容をみると書かれたのは1960年代後半。 霧をつむぐ指 ・・・ 翻訳の下請けや英語の試験問題作成で食べている佐久間啓子。自称画家の若い沼江(ヌエ)という男と知り合う。ヌエはそのまま啓子のアパー…
1976年に作者自身によって編まれた「自選傑作集」。1986年にケイブンシャ文庫になった。 退職刑事「写真うつりのよい女」「四十分間の女」 ・・・ 別に書いたので省略。十七人目の死神「はだか川心中」 ・・・ 山間のひなびた温泉宿で一年前に心中が…
もともとは匿名で雑誌に連載したエロティック・コメディ。1977年に単行本にしたときに、本名(?)を明かした。この文庫では、匿名の時に使ったペンネームで解説を書いて、本名に文句を言っているという凝った仕掛けになっている。 海からきた女 ・・・ 上野…
1979年単行本、1987年文庫化。個々の短編の発表年と初出誌は記載なし。 狼は月に吠えるか ・・・ 身の周りの女性が次々と殺されていく。その夜はぐっすり寝ているはずなのに。自分は狼男ではないかという疑いが消えない。イタリアに旅行にいったときロマの女…
1980年前後に書かれた短編を集めたもの。怪奇、ミステリ、ハードボイルドなど多彩な内容。 見知らぬ妻1982.05 ・・・ テレビで知らない女が「おれ」を探していた。サラ金(このころにはあったのだね)の追い立てで失踪したので戻ってきてくれ、子供が死にそ…
元本は1983年で、82-83年にかかれたもの。例外がふたつあるらしい(と解説に書いてあった)。 銀座の児雷也 ・・・ 昭和11年。コロムビアの日本支社はハリウッドの脚本家を招いて、ロケハンをすることになった。案内の哲夫は銀座の縁日で射殺事件に遭遇する…
1987年に文庫化されたショートショート集。 収録されたのは以下の通り。気になったのにはいくつか注釈をつけた。★をつけたのは、2分間ミステリのような謎解き。 金平糖の赤い壺/月のある坂道/妄想図/間もなく四時/つめたい先輩/つかい道 ・・・ 結婚詐欺の話…
1980年代半ばの短編と中編を収録。1987年に単行本になり、1990年にこの文庫になった。タイトルにもなった秘密箱は、簡単には開かない仕掛けをもった仕掛け箱のこと。貴重品の盗難防止目的で18世紀ころから作られたという。からくり箱は、この国の寄木の技法…
1980年代にはセンセーの文庫がたくさんあったのだが、消費税導入後、急速に姿を消してしまった。21世紀になって、光文社文庫がテーマ別に編集して、10冊の選集を編んだ。その中の怪談編を読む。収録されている「血のスープ」は文庫化されたことがなかった。…
昭和の終わりから平成の初めにかけた短編小説とショートショートを集めたもの。1990年に文庫初出。 五十二枚の幻燈たね板 ・・・ 1988.6.1から1989.6.28まで、「大阪産経新聞」に週一で連載されたショートショート。なのでちょうど52編。ミステリ風、SF風も…
昭和の終わりから平成の頭にかけて書かれた短編を集めたもの。1991年に文庫初出。 手のひらの夜1988.秋 ・・・ 見知らぬ女が突然あらわれ、裸体をさらす。そこに恋人が来て、兄からは妻は失踪したと創団がある。恋人によると見知らぬ女は兄嫁だというが、心…
昭和の終わりから平成の頭にかけて書かれた短編を集めたもの。1993年に文庫初出。 袋小路1989.06 ・・・ 「怪談を書いているが霊魂を信じていないだろう」という電話の主が、最近書いた袋小路の話と同じ場所に案内する。そこで怪奇現象を見、部屋に帰ると「…
昭和の終わりから平成の頭にかけて書かれた短編を集めたもの。1994年に文庫初出。 手首1987.08 ・・・ 自分の一部が切断される夢を夜ごと見る。今度はたぶん首が転がっているのを見るだろう。ただ、手掛かりがあって、夢に出てくるドアとそっくりのスナック…
1998年の短編集。文庫オリジナル。作家は、ここに収録されたような小説を「ふしぎ小説」と名付ける。江戸川乱歩の「奇妙な味」とも違う「ふしぎ小説」とはどんなものなのか。 偽家族1994.01 ・・・ 「私」は死んだ友人の息子をマンションに引き取り、面倒を…
続いて、フランス革命以後の国民国家(ネーション―ステート)の概説。 ・ネーション(国民)は6個の要因が作用して生まれた結果であるとする。 1)住民および外国人の眼に国を体現していると見え、聖化されて忠誠な執着の対象になり、共同体のアイデンティ…
副題は「分裂と統合の1500年」。「ヨーロッパ」という場所は、ローマ帝国以降に生まれたという考え。 ヨーロッパというくくりで1500年の歴史を見るのが斬新なみかた。ヨーロッパをイギリスからポーランドまで、北欧三国からイタリア、スペインまでとみて、そ…
西洋由来の科学を大学で勉強したり、西洋クラシック音楽を聴いたり、多くの小説を読んでいたりすると、必然的に(自分にとってはという限定付きで)「ヨーロッパ」という場所に興味を持つことになる。とはいうものの、多くの場合はそこに住む人々の集合の差…
ここでは1470年から1570年にかけての歴史がおもに大名の視点で語られる。このあとの天下統一は次の巻の主題なので、織田・豊臣・徳川の話はほとんど出てこない。かわりに、伊達政宗、武田信玄、上杉謙信、北条早雲、毛利元就などの地方大名が語られる。戦後…
網野善彦「日本の歴史をよみなおす」(ちくま学芸文庫)-1 後半は「続・日本の歴史をよみなおす」というタイトルで出版されたもの。ちくま学芸文庫版は二つの本の合本。「日本中世の民衆像」(岩波新書)から10年を経ての講義なので、前著の内容を覆す発言も…
この国の通史を勉強するのに便利なのは、中央公論社の「日本の歴史」シリーズ。昭和30-40年代にこの国の歴史家を動員して書いたこの浩瀚な大著は読み通すのも大変。とはいえ、その後、この国の歴史の研究の仕方が変わったらしい。単純には過去の歴史書を読ん…
タイトルの通り。2010年11月に開始してから3年3か月かかった。 この間、よく読まれたページの統計を見ると以下の通り。 1.odd_hatchの読書ノート 2.ScanSnap S1500で消耗品を交換しないで10万枚スキャンしてみた 3.江戸川乱歩「幽霊塔」(創元推理文庫) 4…
1957年に出版された。3つの論文を収録。共通するテーマはタイトル通りの「夜の音楽」。ここに登場する作曲家をリストアップすると、フォーレ、ショパン、サティの3人を中心に、ドビュッシー、ラヴェル、シャブリエらのフランス人、バラキエフ、リャードフな…