短編集・アンソロジー
ときには、古めかしい謎解きものを読みたいと思って(形式がはっきりしているから読んでいて筋に混乱することがないのだ)、アンソロジーを手にする。2002年初出、2014年文庫化。 金田一耕助のパスティーシュ。都築道夫によると、「名探偵のパスティーシュの…
日本のホームズパロディは1980年までは低調だったが、その後急速に増えた。一度1980年代に河出文庫でアンソロジーをつくったときは2巻でほぼ全作を網羅できたが、その後多数でてきたので2010年に再度編み直した。本書の続巻「2」も出ている。とのこと(編者…
20代のなかばのころ、「時間」のことが気になっていくつか本を読んだ。哲学とか宇宙論とか進化論とかその他いろいろ。この本を選んだのは、その興味の一環だったような記憶がある。空間の広がりは、テクノロジーによって圧縮したり拡大したりして、人間が制…
1970-80年代の講談社文庫は後発のためか、海外エンタメ部門では既刊の小説を別訳で出していた。差異化を図るためか、いくつものアンソロジーを編んでいた。すでに品切れになって久しいが、ときどき古本屋で見つかる。そうして手に入れた一冊。編者が読みの優…
1947年に編まれた暗号を主題にするミステリのアンソロジー。下にも書いたように、テクノロジーの発達は暗号を機智で解くことを不可能にしてしまった。本書は、ポーやドイルのような暗号小説の幸福な時代だったころを思い出すよすがになる。 序 レイモンド・…
1970-80年代の講談社文庫は後発のためか、海外エンタメ部門では既刊の小説を別訳で出していた。差異化を図るためか、いくつものアンソロジーを編んでいた。すでに品切れになって久しいが、ときどき古本屋で見つかる。そうして手に入れた一冊。編者が読みに優…
石川喬司「夢探偵」講談社文庫という文庫があって、ミステリとSFの傑作が紹介されていた。それに載っている小説はもちろん入手可能なものがたくさんあるのだが(「ソラリスの陽のもとに」とか「Yの悲劇」とか、そういう有名作)、ショートショートに関しては…
明治から大正にかけてゴシック小説を翻訳する試みがあり、それを集大成する一冊。 エドガー・アラン・ポオ著 日夏耿之介訳 「大鴉」 エドガー・アラン・ポオ著 日夏耿之介訳 「アッシャア屋形崩るるの記」 ホレス・ウォルポール著 平井呈一訳 「おとらんと城…
「永遠の女囚」新青年 1938.11.木々高太郎 ・・・ 田舎の素封家・雲井家。久衛門には別腹の姉妹がいる。姉が婿を取ってあとを継ぐところを、妹の婿に継がせることにした。この妹、たいしたモガで、結婚式を逃げ出すわ、駆け落ちして一週間でかえるわとやり立…
1977年に角川文庫で雑誌「新青年」で発表された短編を集めたアンソロジーが5巻発行された。赤い背表紙で5冊並んでいる姿にあこがれたなあ。すぐさま絶版になり、1990年以降は古本屋で高値をつけていた。そのうちの3冊が2000年に復刻された。しかしすでにこ…
収録されているのは 阿刀田高「天国に一番近いプール」 折原一「不透明な密室」◆ 栗本薫「袋小路の死神」◆ 黒崎緑「洋書騒動」 清水義範「モルグ街の殺人」◆ 法月綸太郎「緑の扉は危険」◆ 羽場博行「虚像の殺意」 連城三城彦「ある東京の扉」 ちょっと古い本…
60−70年代に小学館の出していた「小学○年生」という雑誌では高学年向けになると、ミステリーの問題集を付録にすることがあった。たとえば断片的な目撃証言から容疑者を特定せよというものであったり、理髪店の鏡に映った時計からアリバイをくずせというもの…
福永武彦の「深夜の散歩」だったか「加田伶太郎全集」の序文だったかで盲目探偵の話があったので、マックス・カラドスを知ってはいたのだが、実作を読む機会はなかった。それ以来だから実に25年ぶりの邂逅ということになる。 1 ディオニュシオスの銀貨 (T…
横溝正史「面影双紙」1933 ・・・ 大阪弁と標準語のちゃんぽんで語られた商家の奇談。商い一筋の夫と若い妻。妻は歌舞伎役者と不倫していて、それが発覚したとき夫は失踪する。語りのあとのあざやかな落しで、恐怖が倍増。久生十蘭「海豹島」1939 ・・・ オ…
最初にタイトル、次は作者、あとに探偵の名前、最後は発表年。 1 スタッドリー荘園の恐怖 (L・T・ミード)(ハリファックス博士)1893 ・・・ ハリファックス博士の元に若い夫人が訪れる。毎晩幽霊をみて神経衰弱気味の夫を助けてくれというのだ。博士が…
ベイリー「黄色いなめくじ」1935 ・・・ 小学生低学年の男の子が幼児の妹といっしょに沼に入って死のうとする(日本人だと心中だが、欧米だと心中という概念がないので、殺人と自殺とみなされる)。この子供たちに興味を持ったフォーチュン探偵は、二人の幼…
ヘミングウェイ「殺人者」1927 ・・・ 放浪者ニック・アダムスの冒険(作者は彼を主人公にした短編を複数書いている)。都会の安い飯屋で働いている。二人の不思議な男がくる。彼は大男のスウェーデン人を探している。ニックたちは監禁されそうになるが男たち…
アントニー・ウイン「キプロスの蜂」The Cyprian Bees 1925年 ・・・ 車中で女性が頓死した。猛毒のハチに刺されたあとが見つかる。ヘンリー博士が謎を追う。小説の作法はすぐれていない。最初に「アナフィラキー」が概説されて、そこから逸脱する解釈にはな…
ルブラン「赤い絹の肩かけ」1907 ・・・ おかしな挙動を示す二人つれ。尾行したガニマール警部はリュパンに不思議な事件の解決を持ちかけられる。果たして、彼のいうとおりに犯人を上げることができたが、決定的な証拠がない。そこで、ガニマール警部はリュ…
「短編は推理小説の粋である。その中から珠玉の傑作を年代順に集成したアンソロジー。1には、巻頭に編者江戸川乱歩の「序」を配し、まず1860年のコリンズ「人を呪わば」に始まり、チエホフ「安全マッチ」、モリスン「レントン館盗難事件」、グリーン「医師と…
絶賛、絶版中なのか。所有しているのは初版でしおりひも付き(一時期の創元推理文庫は、初版のみしおり紐を付けていた)。収録作は以下のとおり。 1 この世の外から (クレイトン・ロースン) 2 スドゥーの邸で (ラドヤード・キプリング) ・・「ジャング…
収録作品を備忘のために記しておく。◆は印象深かったもの。どちらかというとパロディ風のほうを好んだらしい。 ある密室(ジョン・ディクスン・カー) クリスマスと人形(エラリイ・クイーン) 世に不可能事なし(クレイトン・ロースン) うぶな心が張り裂け…
「思考機械」という詩的なことば(シュールリアリズムかダダの詩人が使いそうじゃないか!)に引かれて、「ブラウン神父」譚のような人工的な短編であるだろうと10代のときに考えていた。そのために、ずっと手を付けていなかった。最近100円で入手。 驚い…