odd_hatchの読書ノート

エントリーは3200を超えているので、記事一覧よりもカテゴリー「INDEX」をご覧ください。2024/11/5

アドルノ

テオドール・アドルノ/マックス・ホルクハイマー「啓蒙の弁証法」(岩波書店)-1

四半世紀ぶりの読み直し。かつて読んだときには、アドルノの近代批判、とくに数値化・要素還元主義への批判を読み取ろうとした。当時の関心が科学論、科学批判にあったから(別冊宝島「現代思想のキーワード」1980年の影響)。 今回の再読では、全体主義批判…

テオドール・アドルノ/マックス・ホルクハイマー「啓蒙の弁証法」(岩波書店)-2

2021/12/09 テオドール・アドルノ/マックス・ホルクハイマー「啓蒙の弁証法」(岩波書店)-1 1947年の続き 後半はアドルノが書いた章。 文化産業――大衆欺瞞としての啓蒙 ・・・ 孤立化・アトム化した大衆は娯楽を欲しがり、資本は文化産業を作って大衆の求め…

テオドール・アドルノ「ベートーヴェン 音楽の哲学」(作品社) 「ベートーヴェンに関する哲学的仕事」のための断片集。素人にはアドルノの論を抽出・再構築するのは無理だった。

編者解説によると、アドルノには「ベートーヴェンに関する哲学的仕事」をまとめる構想があったらしい。大量のメモが書かれた。いくつかは短い文章になったものがあり、「美の理論」「楽興の時」などに収録された。それらは「哲学的仕事」を網羅するまでに至…

INDEX アドルノ関連

2021/12/09 テオドール・アドルノ/マックス・ホルクハイマー「啓蒙の弁証法」(岩波書店)-1 1947年 2021/12/07 テオドール・アドルノ/マックス・ホルクハイマー「啓蒙の弁証法」(岩波書店)-2 1947年 2017/04/10 テオドール・アドルノ「ベートーヴェン 音…

チャールズ・ローゼン「シェーンベルク」(岩波現代選書) 聞かれるよりも語られるほうが多い作曲家。

シェーンベルクは聞かれるよりも語られるほうが多い作曲家、になるのかな。彼の生涯を概観すると、1)神童、2)ウィーンでの無視、3)ベルリンからの追放、4)ハリウッドの疎外、みたいなストーリーを描ける。彼の作品を概観すると、1)表現主義、2)…

テオドール・アドルノ「アルバン・ベルク」(法政大学出版局) アドルノが師事した作曲家の評伝。記述の向こうにぼんやりと1920-30年代のウィーンとベルリンが見えてくる。

自分はベルクの良い聞き手ではないし、アドルノのよい読み手でもない。前者は作曲後100年を経ていても難渋なところがあるし、後者のドイツ人が読んでもわかならない文章の日本語訳で彼の考えを理解しているともいえない。そういう言い訳を前に置くことにして…

テオドール・アドルノ「楽興の時」(白水社)-1 「ベートーヴェンの晩年様式」「異化された大作『ミサ・ソレムニス』によせて」は必読論文。

最初に金になった文章が音楽評論であるという著者の、若い時から晩年までに書かれたエッセイを収録。哲学や音楽の専門家を読み手に想定していないので、とっつきやすい。「音楽社会学序説」「不協和音」からアドルノに入るものいいけど、これのほうがいいの…

テオドール・アドルノ「楽興の時」(白水社)-2 アドルノがみると20世紀音楽は反動と進歩の昆明状態。

2012/11/09 テオドール・アドルノ「楽興の時」(白水社)-1の続き 続いて後半。 クシェネックの観相学のために1957-8 ・・・ クシェネック(1900-1991)は知らない作曲家。下記で詳しい。「クレ(ー)ネク」「クシェ(ー)ネク」「クジェーネク」「クルシェ…

マーティン・ジェイ「アドルノ」(岩波現代文庫) アドルノはなにかを構築することには興味はなさそうで、むしろ批判すること、否定することを優先。

翻訳ではなにをいっているのかわからず、人の話によるとドイツ語ネイティブの人でも原文は難解な文章であるという。そういうアドルノへの興味は新ウィーン学派の音楽を聴きだしたことにあったが、アドルノの文章を読んでみてもわからない。というわけで、199…

テオドール・アドルノ「音楽社会学序説」(平凡社ライブラリ) 全体主義と文化産業が主導する音楽の有り方の批判。

最初の論文で聴取者の類型を試みている。エキスパート、良き聴取者、趣味型聴取者、ルサンチマン型聴取者、娯楽型聴取者、無関心など。これらの類型はわかりやすい、我々の現状に一致している、それに該当するようなネットへの書き込みがある、など、俗耳に…

テオドール・アドルノ「不協和音」(平凡社ライブラリ) アドルノの考えるあるべき姿の音楽は否定の向こう側にぼんやりと姿をみせているのだろう。

アドルノは過去に何冊か読んでいる(「啓蒙の弁証法」「アルバン・ベルク」「楽興の時」)のだが、とてつもなく難解だった。ところが、ここに収録されているエッセイは非常にわかりやすい。1 音楽における物神的性格と聴取の退化 ・・・ 現代のことを書いて…