odd_hatchの読書ノート

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リヒャルト・ワーグナー

エドゥアルド・ハンスリック「音楽美論」(岩波文庫)

本書の議論にはいるまえに、ヘルムート・プレスナー「ドイツロマン主義とナチズム」(講談社学術文庫)で当時の状況を確認していおこう。図式化すると、ドイツは西洋諸国に比べ遅れていて、民主主義の未成立と宗教の世俗化によって情熱の持っていき場が哲学…

2012バイロイト音楽祭の「パルジファル」について

2012年のバイロイト音楽祭の上演作品のうち、「パルジファル」が放送された。演出が面白かったので、メモを残しておく*1。 ワーグナーの台本に、以下の本を重ね合わせると、演出意図が見えてくると思うので。 ・トーマス・マン「リヒャルト・ワーグナーの苦悩…

清水多吉「ヴァーグナー家の人々」(中公新書)

クルト・リース「フルトヴェングラー」(みすず書房)が同時代の記録であるとすると、こちらは「後世の歴史家(@「銀河英雄伝説」)が記述したもの。フランクフルト学派、とくにアドルノの研究者である著者が40代後半の1979年にバイロイトを訪問したところか…

トーマス・マン「リヒャルト・ワーグナーの苦悩と偉大」(岩波文庫)

ふたつの講演が収録されている。最初の「リヒャルト・ワーグナーの苦悩と偉大」は1933年2月10日ミュンヘン大学でのもの。ヒトラーの首相任命の10日後。反響はすさまじく、のちにマンがドイツにかえれなくなる原因となった。のちにドイツの音楽家からこの講演…

リヒャルト・ワーグナー「芸術と革命」(岩波文庫)

30代のワーグナーが1848年の革命に際して書いた若書きの文章。結局、彼の主論文である「未来の芸術作品」「歌劇と戯曲」などは訳出されず(岩波文庫では)、こういう若書きの、論旨不明な文章をこの国に紹介してどうしたかったのかしらん。 共和主義の運動は…

リヒャルト・ワーグナー「ベエトオヴェンまいり」(岩波文庫)

1813年生まれのワーグナーが20代のときに書いた小説(のごときもの、といわざるをえないな)を収録。「妖精」「恋愛禁制」「リエンツィ」などのグランドオペラは書いたものの、売れ行きはさっぱり。借金でドイツにいられなくなり、パリその他を放浪しながら…

リヒャルト・ワーグナー「さすらいのオランダ人・タンホイザー」(岩波文庫)

今度は初期の歌劇のスクリプト。 さすらいのオランダ人 ・・・ その昔(いったいいつのことか、帆船航海で喜望峰を目指していたとされるから1400年以降か)、オランダ人の船長が嵐にあい呪いの言葉を口にしたら天罰覿面、7年に一度しか陸地に上陸できず(そ…

リヒャルト・ワーグナー「ロオエングリイン・トリスタンとイゾルデ」(岩波文庫)

「トリスタンとイゾルデ」の異本3冊を読んだ後に、ワーグナー自身のものを読むことにする。 2011/12/26 ドイツ民衆本の世界6「トリストラントとイザルデ」(国書刊行会) 2011/12/27 フランス古典「トリスタン・イズー物語」(岩波文庫) 1984年秋にワーグナ…

ブルフィンチ「中世騎士物語」(岩波文庫)

「トリスタンとイゾルデ」のバリアント。今度はイギリスの場合(著者はアメリカ人だけど、この本のもとにした伝承や中世文学はイギリスのもの)。 最初に中世物語の起源が書かれる。きわめて簡略化したまとめをすると、もともとは口承であったのが、11世紀く…

フランス古典「トリスタン・イズー物語」(岩波文庫)

「トリスタンとイゾルデ」のバリアント。今度はフランスの場合。 「愛の媚薬を誤って飲み交わしてしまった王妃イズーと王の甥トリスタン。このときから二人は死に至るまで止むことのない永遠の愛に結び付けられる。ヨーロッパ中世最大のこの恋物語は、世の掟…

ドイツ民衆本の世界6「トリストラントとイザルデ」(国書刊行会)

「偶然の悪戯から媚薬を飲んでしまった若きトリストラントとイザルデは、道ならぬ恋に陥り、あらゆる制約を超越して、日夜愛の饗宴に酔いしれる。ケルト起源の伝承がフランスを経てドイツ語に移され、ワーグナーのオペラでも知られるこの物語は、中世キリス…

高辻知義「ワーグナー」(岩波新書)

作曲家としては勿論のこと、劇作家、思想家、美学者として、ワーグナーほど多彩な役割を演じた音楽家は他に例を見ない。同時に、ワーグナーほど毀誉褒貶の振幅の激しい作曲家もいない。稀代の風雲児の複雑に織りなされた生涯を底流するものは何であったか?創…

堀内修「ワーグナー」(講談社現代新書) <追記2011/4/21>

出版されたのと同時に購入したと思う。1980年代後半、バブル経済に入ると、ワーグナーの楽劇上演が相次いだ。1986年ウィーン歌劇場の「トリスタンとイゾルデ」、2年後の「パルジファル」。バイエルン歌劇場の「マイスタージンガー」。渋谷オーチャードホール…