2014-10-01から1ヶ月間の記事一覧
ベネゼエラの犯罪者の「私」(終身刑を宣告されている)が怪しげな漁師だったか船員だったかの誘導で、ソロモン諸島にあると思しき無人島に隠れ住む(近くの都市がラバウルだから、この辺なのだろう)。この島は周囲から隔絶していて、船は来ない。人がいない…
ニューヨークの養護院にいるラミーレスという老人と、彼を介護するアルバイト・ライリーの会話のみで進む小説(最後に数通の手紙が現れる)。ラミーレスはアルゼンチンの労働組合活動家で、投獄・拷問を受け、記憶喪失になり、人権擁護委員会の手によってア…
これまでの三作では軍事政権の様子は背景にあったが、ここでは前面に現れている。軍事政権は、反政府運動の指導者であるヴァレンティンを捕らえて、組織の情報を聞き出そうとしたが、彼は拷問に屈しない。そこで、同室人のモリーナ(未成年者の猥褻幇助罪で…
1973年の第4作。 タイトルからすると探偵小説みたいで、実際に犯罪小説のプロットを借りてそのとおりに物語が進む。とはいえくせもののプイグのことなので、見かけだけで判断すると足をすくわれかねない。 主要な登場人物は二人。女性グラディスは彫刻家の…
1969年出版のプイグ第3作。この国への紹介は1990年とちょっと遅れた。文庫本は1994年。 1947年に伊達男のフアン・カルロス・エッチェパーレの死亡記事が新聞に載ったところから始まる。享年29歳で結核にかかっていた(まだ抗生物質は高値で、庶民には買えな…
ホセ・ドノーソはチリの作家。1925年生まれなので、この短編集を書いた1972年は47歳。著作は若いときからあるが、注目されるようになったのは1960年代ころで遅咲き。その間、西洋、メキシコ、スペインなどの国外生活もしているし、カルロス・フエンテスの家…
コルタサルは1914年生まれ1984年没。ベルギー生まれで両親の住むブエノスアイレスに戻る。戦後にパリにわたり、生涯をフランスで過ごした。この短編集でしか知らないので、断定するのは危険だけど、ほかの中南米の作家ほどに中南米という場所への偏執はない…
メキシコの作家カルロス・フエンテスの短編集。例によって初出が書いてないが、たぶん初期の作品ばかり。ネットで発表年を調べた。 チャック・モール 1954 ・・・ タイトルはメキシコの雨の神。この偶像が販売されているらしい。キリスト教に反感をもつ小役…
1990年の前後に、この文庫は国別の怪談アンソロジーをいくつも出した。ドイツ、アメリカ、フランス、イギリス、ロシア、東欧、中国、日本。そしてラテン・アメリカ。ラテンアメリカ文学はそれまで単行本で出版されていて。サンリオ文庫がまず文庫にした。こ…
初出は1987年。中南米文学の単行本は高くて買えなかったので、それこそサンリオSF文庫にしかなく、重宝した。この本に収録された作家を後で追いかけた記憶がある。いや、そんなことを言うことができなくて、とにかく文庫化された中南米文学は片端から買うし…
1946年の東京巣鴨。ニュージーランドの私立探偵が大戦中に日本近海で行方不明になった爆撃機乗りの行方を調査したいと収容所にやってきた。所長のアメリカ人大佐は、自由な行き来を承認するかわりに、収監されているBC級戦犯容疑者の記憶を取り戻せと要求す…
2014年8月に刊行された。この年の夏には、「マスカレード・ホテル」と本作「マスカレード・イブ」の大々的なキャンペーンがうたれ、どうやら売れているよう。販促や宣伝の事情はよく知らないが、入手したので読んでみた。 「マスカレード・ホテル」の主人公…
2014/08/26 石川淳「普賢」(集英社文庫) 2014/08/25 石川淳「白描」(集英社文庫) 2014/08/22 石川淳「癇癖談」(ちくま文庫) 2014/08/21 石川淳「焼跡のイエス・処女懐胎」(新潮文庫) 2014/08/19 石川淳「おとしばなし」(集英社文庫) 2014/08/20 石…
1980年代(83-86年)に雑誌「海」やシネ・ヴィアンのパンフレットに載せた二人の対談。何しろ年間150-300本の映画を見ることを数十年続けた二人なので、傾聴するばかり。映像と音の誘惑 ・・・ 映画に関係する人が映画をみない、映画人が昔の映画(とその関…
この本の記載にそって簡単に映画史をおさらいすると、なんといっても映画の「本場」はアメリカ・ハリウッド。ここの全盛期は1930-40年代。で、戦後にその他の国の映画が相互に交換、上映されると、ハリウッドとは違った映画に衝撃を受ける人がでた。1940年代…
以前ベラ・バラージュを読んだときには、彼が注目したほどクロースアップの重要性を認めなかったけど、アクションでもラブロマンスでもコメディでもサスペンスでも、不意に現れる(しかし制作側には計算づくの)クロースアップに見とれることを思い出した。…
1983年初版。自分は、テレビ番組のウルトラマンほかのシリーズはリアルタイムでみたのだが、東宝特撮映画は乗り遅れた。なので、ほかのサイトなどを参考にこの時代の背景をまとめてみる。 ゴジラシリーズは1975年の「メカゴジラの逆襲」で制作が中止された。…
吉村 公三郎(1911年9月9日 - 2000年11月7日)は昭和の初期に映画畑に入り、島津保次郎の助監督としてキャリアを積んで、23歳で監督デビュー。戦争になると徴兵されて、南方戦線に送られる。幸い、兵士ではなく情報部の後方勤務だった。慰問や映画の仕事を…
溝口健二を紹介すると、1898年生まれ。1920年(大正9年)に日活向島撮影所に入社。24歳にして映画監督デビュー。当時は無声映画。のちに松竹や大映に移った。死去の直前には大映の取締役に就任。ずっと継続して映画監督を続ける。代表作は「滝の白糸」「浪華…
1969年の初出。そのあとに制作された映画の論評を加えて、1986年に文庫化。黒沢監督はその後も映画の製作をつづけたので、「夢」「八月の狂詩曲」「まあだだよ」には触れていない。1990年以降の製作作品は、「黒澤明作品解題」(岩波現代文庫)で言及してい…
自分の持っているCDに川上音二郎一座の録音がある。これは、パリに巡業に出た川上一座の演目を高座のあいまをみて収録したもの。録音された年はなんと1900年。なにしろ明治の終わりの日本人が喋り、歌うのが聞けるという点で貴重きわまりない(SPはミント状…
2010/11/27 ジョン・ディクスン・カー「夜歩く」(ハヤカワ文庫) 1930 2010/11/30 ジョン・ディクスン・カー「絞首台の謎」(創元推理文庫) 1931 2010/11/26 ジョン・ディクスン・カー「髑髏城」(創元推理文庫) 1931 2010/11/14 ジョン・ディクスン・カ…
この本によると、戦前の日活には坂東妻三郎、片岡千恵蔵、月形龍之介、そして嵐寛寿郎の4人がいて、それぞれが主役を張っていた。年に一度くらいは共演作が作られて、それはとても人気があったという。とても遅ればせながら、自分も彼ら主演の映画を見るよう…
自分はこの人の映画解説を子供のころからTVで見てきたので、彼の口調や笑顔はよく知っている。彼が語ると、出来の悪い映画にも面白そうに思える。映画そのものの悪口を言わないとか、上映する映画のかわりに俳優やカメラマンのことをかたるとか、、なるほど…
バンコランがレストランである男を監視している(1930年代にタキシードで、フロックコートで、金ぴかの杖だぜ)。そこにショーモン大尉がやってきて、フィアンセであるオデットが失踪してしまったと肩を落とした。聞くと、蝋人形館(マダム・タッソーのを思…