odd_hatchの読書ノート

エントリーは2600を超えているので、記事一覧よりもカテゴリー「INDEX」をご覧ください。2021/9/25

その他の文学

ダンテ「新生」(岩波文庫)

イタリア(という国も概念もなかった時代だとおもう)の大詩人ダンテが若き日に書いた。 1293年前後、詩人が28歳のころ、それまで書きためた詩31編を骨子にし、これらを分析解説する散文を加えて全42(もしくは43)章にまとめあげた詩文集。詩の内訳はソネッ…

ダンテ/野上泰一「神曲物語」(現代教養文庫)-1「地獄篇」

13-14世紀の詩人で政治家のダンテが書いた畢生の大作。成立の背景その他はwikiを参照。 ja.wikipedia.org すでに森鴎外の紹介以来数種の翻訳がでている。岩波文庫や集英社文庫などで入手可能。でも、厳格な規律に従って書かれた700年前(1300-1320年にかけて…

ダンテ/野上泰一「神曲物語」(現代教養文庫)-2「浄罪篇」

2022/07/28 ダンテ/野上泰一「神曲物語」(現代教養文庫)-1「地獄篇」 1300年の続き ダンテ「神曲」の韻文訳は数種類でていて、古いものはネットで見つけることができる。そういうのをいくつか目を通してみたが、厳密な逐語訳では筋を負うことが難しい。ま…

ダンテ/野上泰一「神曲物語」(現代教養文庫)-3「天堂篇」

2022/07/28 ダンテ/野上泰一「神曲物語」(現代教養文庫)-1「地獄篇」 1300年2022/07/26 ダンテ/野上泰一「神曲物語」(現代教養文庫)-2「浄罪篇」 1300年の続き ヴィルジリオの案内で行く地獄と煉獄では、多くの障害があり、あるいはダンテの知り合いと問…

イタロ・カルヴィーノ「くもの巣の小道」(福武文庫)

イタロ・カルヴィーノの最初の長編小説。カルヴィーノはパルチザンに加わっていたし、WW2戦後にはイタリアで「レジスタンス小説」が多数出版されたそうだ。その時流に乗っていながら、ズレたところのある小説。 おそらく1944年夏の北イタリア(具体的な年月…

イタロ・カルヴィーノ「むずかしい愛」(岩波文庫)

解説を読んでも発刊の経緯はよくわからない。1958年初出の似たようなテーマを集めた短編集。 ある兵士の冒険 ・・・ 汽車に乗っている兵士が豊満な若い女性に愛撫を試みる。言葉のないコミュニケーションを言っているのかもしれないが、行為は痴漢そのものな…

イタロ・カルヴィーノ「レ・コスミコミケ」(ハヤカワ文庫)-1

Qfwfq老人(別の訳者ではクフウフクと表記)のホラ話。科学の記述を聞くと、わしはそこにいたと叫んで、思い出話に花を咲かせる。1965年初出。 月の距離 ・・・ 月の軌道がいまより地球に近かったころ。老人のいた岩礁から月にいくことができた(途中の無重…

イタロ・カルヴィーノ「レ・コスミコミケ」(ハヤカワ文庫)-2

2022/07/19 イタロ・カルヴィーノ「レ・コスミコミケ」(ハヤカワ文庫)-1 1966年の続き Qfwfq老人のホラ話。後半。 いくら賭ける? ・・・ 宇宙ができるまえ、何が起こるかを老人は学部長と賭けをする。どんどんエスカレートして地球の歴史のささいなことま…

イタロ・カルヴィーノ「柔らかい月」(ハヤカワ文庫、河出文庫)-1

「レ・コスミコスケ」1966年に続く1967年の短編集。第1部はQfwfq老人のホラ話。訳者が変わったので、老人のイメージから中堅サラリーマンのようになった(一人称が「わし」から「私」に変更)。でも、底を流れるのは過去が回復しないことへの諦念。同類や仲…

イタロ・カルヴィーノ「柔らかい月」(ハヤカワ文庫、河出文庫)-2

2022/07/14 イタロ・カルヴィーノ「柔らかい月」(ハヤカワ文庫)-1 1967年の続き 以後はQfwfq氏の名は出てこない。でも「ティ・ゼロ」で「私Q0(0は小文字)」と表記されるので、Qfwfq氏が語り手だと推測可能。 第三部 ティ・ゼロティ・ゼロ ・・・ 突如…

イタロ・カルヴィーノ「パロマー」(岩波文庫)

パロマー氏という中産階級のインテリを語り手にした短編集。短編というにはオチもないし視点はズレるしで奇妙な味をもっている。3部3章3節で合計27のフラグメントからなる。 中年男性、職業不詳、家族は妻と娘一人、パリとローマにアパートを所有―これがパロ…

イソップ「寓話集」(岩波文庫)

イソップ、ギリシャ名アイソポスは紀元前6世紀ころに実在した人物らしい。奴隷で、しかし機知に富み話術に巧み。理由不明であるがデルポイ(という都市)で殺害されたという。醜男でがに股で太鼓腹で…というのは後世のつくり話らしい。そのアイソポスが語っ…

ウンベルト・エーコ「前日島」(文芸春秋社)

「薔薇の名前」で14世紀中欧の異端と修道院を描き、「フーコーの振り子」でテンプル十字団以来の西欧秘密結社の歴史を描いたエーコ、今度は17世紀を描くことになった。この直前には、コペルニクス、ガリレイの天文学革命が起きていて、デカルトとパスカルら…

ウンベルト・エーコ「薔薇の名前 下」(東京創元社)-3

2016/04/04 ウンベルト・エーコ「薔薇の名前 上」(東京創元社)-1 2016/04/05 ウンベルト・エーコ「薔薇の名前 上」(東京創元社)-2 2016/04/06 ウンベルト・エーコ「薔薇の名前 上」(東京創元社)-3 2016/04/07 ウンベルト・エーコ「薔薇の名前 下」(東…

ウンベルト・エーコ「薔薇の名前 下」(東京創元社)-2

2016/04/04 ウンベルト・エーコ「薔薇の名前 上」(東京創元社)-1 2016/04/05 ウンベルト・エーコ「薔薇の名前 上」(東京創元社)-2 2016/04/06 ウンベルト・エーコ「薔薇の名前 上」(東京創元社)-3 2016/04/07 ウンベルト・エーコ「薔薇の名前 下」(東…

ウンベルト・エーコ「薔薇の名前 下」(東京創元社)-1

2016/04/04 ウンベルト・エーコ「薔薇の名前 上」(東京創元社)-1 2016/04/05 ウンベルト・エーコ「薔薇の名前 上」(東京創元社)-2 2016/04/06 ウンベルト・エーコ「薔薇の名前 上」(東京創元社)-3 の続き。 表層の物語は探偵小説の枠組みを借りている…

ウンベルト・エーコ「薔薇の名前 上」(東京創元社)-3

2016/04/04 ウンベルト・エーコ「薔薇の名前 上」(東京創元社)-1 2016/04/05 ウンベルト・エーコ「薔薇の名前 上」(東京創元社)-2 の続き。 聖職者と知識人は文化的に統合し、各地を移動する権利を得ていたが、ほとんどすべての農民は移動の自由がなく、…

ウンベルト・エーコ「薔薇の名前 上」(東京創元社)-2

2016/04/04 ウンベルト・エーコ「薔薇の名前 上」(東京創元社)-1 の続き。 この時代には文化的な統合が聖職者と知識人において果たされていた。その象徴がこの修道院で、イギリス、ドイツ、フランス、イタリア、北アフリカなど出世地と母語を異にする修道…

ウンベルト・エーコ「薔薇の名前 上」(東京創元社)-1

ヨーロッパ中世のことを書いているので、事前に、 鯖田豊之「世界の歴史09 ヨーロッパ中世」(河出文庫)の以下のエントリーを読んでください。 2016/03/29 鯖田豊之「世界の歴史09 ヨーロッパ中世」(河出文庫)-1 2016/03/30 鯖田豊之「世界の歴史09 ヨー…

イタロ・カルヴィーノ「マルコヴァルドさんの四季」(岩波少年文庫)

マルコヴァルドさんは都会に住む人夫(倉庫勤務の工員だ)。奥さんと4人の子供が狭苦しい家に住んでいる。彼が得意なのは街中に自然の息吹を見つけることだが、それに感心するひとはいない。自分や他人のために良かれと思って行ったことは、たいてい失敗する…

ソポクレス「オイディプス王」(岩波文庫)

テバイの都は危機に瀕していた。疫病、飢饉、家畜の死。都市の豊饒さが失われ、民が貧困に苦しむ。このようなとき、王はすべての責任を負わねばならない。そこで、テバイの王オイディプスはデルポイの神託を聞くことにした。 プロロゴス ・・・ ここで明らか…

エイモス・チュツオーラ「ブッシュ・オブ・ゴースツ」(ちくま文庫)

「町を出た少年が迷い込んだのは、ゴーストでいっぱいのジャングルだった。耐えられぬ悪臭を放つもの、奇妙なかたちをして不思議なしぐさをするもの…。ヨルバ族に先祖から伝わる物語をふまえて、ドラム・ビートに乗せて紡ぎ出される幻想の世界。ナイジェリア…

レオナルド・ダ・ヴィンチ「手記」(岩波文庫)

「近代」というのもなかなかあいまいな言葉で、科学や哲学で見れば、ガリレオやデカルトに始まるということになっているみたい。その前には、占星術師で天文学者であるようなティコ・ブラーエ、コペルニクスという人たちもいることになる。そのような系譜の…

タン・ヨウ「人、中年に至るや」(中公文庫)

「−−−これはインクではなく私自身の血と涙の一滴一滴で煉り上げられた作品だ−−−中国文化革命の嵐の中で苦悩し、その抑圧から立ち直ろうとする眼科医師と技師夫婦の、すべてをすてて仕事にかける中年世代としてのよろこび・悲しみを通して、中国がかかえてい…

郭末若「抗日戦回想録」(中公文庫)

先のコリン・ロス「日中戦争見聞記」(講談社学術文庫)を補完する本。ロスは1939年に重慶に飛び、そこに首都を移動した国民党政府首領・蒋介石と会おうとしている。 こちらは、前年1938年の国共合作時代に武漢で抗日戦線宣伝に携わっていた著者の記録。有名…

郭沫若「歴史小品」(岩波文庫)

中国の歴史上のよく知られた人物を史実・史書にできるかぎり近づけて書いた短編集。 彼らの問題をわれわれの問題にからませて書く力、みごと。とりわけ「項羽の自殺」「孟子妻を出す」「賈長沙痛哭す」の3編が知識人のあり方をよく捕らえている。「人、中年…

ウンベルト・エーコ「フーコーの振り子 下」(文芸春秋社)

こちらでは「現在」の話を書こう。主要登場人物は、語り手である「私」=カゾボン。1943年生まれ?の大学紛争当事者。とはいえ若者の直接行動には懐疑的で、政治にも斜に構えたところのあるニヒリスト(というか優柔不断だが、知的優位に立とうとする臆病も…

ウンベルト・エーコ「フーコーの振り子 上」(文芸春秋社)

ベルボが消えた。フロッピーディスクを残して。カゾボンがピラデという店で、ベルボと知り合ったのは 学生時代。カゾボンはテンプル騎士団について研究する学生、ベルボはガラモン社という出版社で働いて いた。ガラモン社にアルデンティ大佐という怪しげな…

イタロ・カルヴィーノ「マルコ・ポーロの見えない都市」(河出書房新社)

昔書いた文章を発掘したので収録。2001年5月にどこかのサイトにアップしたもの。会員承認制だったと思う。検索しても見当たらないので再録します。 久しぶりのイタロ・カルヴィーノ。マルコ・ポーロがフビライ汗に過去訪問した都市の話をするというもの。物語…

ロンゴス「ダフニスとクロエ」(岩波文庫)

昨日のエントリーでロンゴスをあげたので、「ダフニスとクロエー」を取り上げます。BGMはもちろん、ラヴェルのバレエ音楽で。マルティノン指揮のが気持ちよい。 2世紀ローマでギリシャ語でかかれた大衆文学のひとつ。主要な読み手は、都市市民の有閑マダムで…