odd_hatchの読書ノート

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アメリカ文学_エンタメ

デイル・フルタニ「ミステリー・クラブ事件簿」(集英社文庫)

1990年ころのロサンジェルス。プログラマーを解雇されて閑を持て余した日系の中年男の下に白人女性が訪れ、ある書類の受け渡しを代わってほしいと依頼される。ミステリー・クラブの例会準備のために、オフィスに「探偵」の看板を掲げていたので、勘違いされ…

ヘンリ・スレッサー「ママにささげる犯罪」(ハヤカワポケットミステリ)

「うまい犯罪 しゃれた殺人」が好評だったので、ヒッチコックが編んで1962年に出版された。この国では1970年代に文庫になっていた。 前の短編集ではほめまくったけど、こちらでは、苦情も書いておくことにしよう。 ちょっと辛味のきいた物語だけを読み続ける…

ヘンリ・スレッサー「うまい犯罪 しゃれた殺人」(ハヤカワポケットミステリ)

1960年にヒッチコックが編んだ短編集。 一編あたりのサイズは、原稿用紙に換算して20枚くらいというところ。登場人物はまあ3人。点描的な人物を入れても10人を越えることはない。物語も、せいぜい1時間くらいのできごとで、途中に時間が飛ぶことがあっ…

ロバート・シルヴァーバーグ「確率人間」(サンリオSF文庫)

存在がシュレーディンガーの猫のように量子的に変動し、現存在の根拠を失った男。なぜおれは、連続的な存在ではないのか、というような不条理SFかとタイトルから考えた。PKDみたいな狂気の世界が開陳されるのではないか、と。 ところが本書の「確率人間」は…

トーマス・M・ディッシュ「キャンプ・コンセントレーション」(サンリオSF文庫)

まずタイトルから。通常は「コンセントレーション・キャンプ」で使われて「収容所」の意味を持つ。ここでは意地悪く、「キャンプ」に低俗なもの・悪趣味なものを楽しむ趣味倒錯の意味をもたせ、「コンセントレーション」に神経衰弱の意味も含ませる。そのう…

サミュエル・R. ディレイニー「ノヴァ」(ハヤカワ文庫)

西暦3172年。宇宙的な経済圏はプレアデス星系とドレイク星系に二分され、それぞれの大企業が牛耳っている。プレアデス星系の覇者フォン・レイ家とドレイク星系のレッド家は、事業のバッティングがあり、昔からの因縁が続いている。それにけりをつけるために…

サミュエル・R. ディレイニー「アインシュタイン交点」(ハヤカワ文庫)

もともとのタイトルはイエーツの詩からとった「摩訶不思議な混沌とした闇黒」らしい。なるほど、このタイトルはこの小説のある面を示しているが、そのままでは理解されがたいし、なにしろ出版したのはペーパーバックの老舗のエースブックスだ(PKDの初期長編…

サミュエル・R. ディレイニー「バベル17」(ハヤカワ文庫)

異星人との星間戦争。インベーダーが同盟軍の破壊活動をするとき、発信源不明の謎の通信が傍受される。それに「バベル-17」と名づけ、解読しようとしたところ軍の研究所はことごとく失敗。そこで、絶世の美女の言語学者で詩人のリドラ・ウォンに調査が要請…

ロバート・ハインライン「月は無慈悲な夜の女王」(ハヤカワ文庫)-1

西暦2073年。人類は月の開発に成功していた。月では岩石に含まれる水を使って、小麦の栽培をして、世界連邦の下の国家に販売している。ただ、自治は認められていない。月は地球にある世界連邦の管理下にあり、流刑囚を送る場所で、つきで生まれたものはその…

ヘンリー・カットナー「御先祖様はアトランティス人」(ソノラマ文庫)

「読書の快楽」角川文庫1985年で紹介されたときには、すでに絶版品切れで入手に苦労した一冊。 ヘンリー・カットナーは1930年代から活躍したパルプ雑誌専門の短編小説家。いくつものペンネームを使って大量の短編を書いたが、44歳で早世。完成度とかワンダー…

トマス・フラナガン「アデスタを吹く冷たい風」(ハヤカワポケットミステリ)

トマス・フラナガンはこの解説(1961年初出)によると、謎の作家。EQMMに短編をこれだけ発表しただけ(当時)。このあと1970年代から長編を書いて高評価を得たらしい。あいにく邦訳されていない。 さて、テナント少佐シリーズは舞台設定が尋常でない。地中海…

アレクセイ・パンシン「成長の儀式」(ハヤカワポケットSF)

アレクセイ・パンシンの「成長の儀式」(ハヤカワポケットSF)の舞台は、星間飛行をする宇宙船だ。地球は西暦二〇〇〇年頃に人口爆発とそれによる国家戦争で滅んでしまっている。人類はそれまでに開発していた二百あまりの殖民惑星と一六〇機の星間宇宙船(…

アーネスト・カレンバック「エコトピア・レポート」(創元推理文庫)

1970年代、サンフランシスコ周辺地域はエコロジスト党に率いられ、アメリカから独立を宣言した。経済制裁などを行ったにもかかわらず、エコトピア国は独立を保つとともに、ほぼ鎖国体制になった。以来約20年が経過し、エコトピアの状況が要と知れないので、…

ノーマン・スピンラッド「星々からの歌」(ハヤカワ文庫)

数百年前の<大壊滅>(どうやら世界全面核戦争らしい)によって、地球は荒廃し、人類のほぼ9割以上が死滅。カリフォルニア周辺がどうやら生存環境を残している。およそ数百人程度のコミューンが点在していて、細々とした交易をしている。中には<スペイサ…

ソムトウ・スチャリクトル「スターシップと俳句」(ハヤカワ文庫)

2001年に「千年紀大戦(今だったら「ミレニアム・ウォー」で通じたろうな)」が起きてほぼすべての生命が消滅(それなんて「エヴァンゲリオン」「AKIRA」)。わずかに生き残った人類からはミュータントが生まれているが、すぐに死亡する(それなんて「AKIRA…

キルゴア・トラウト「貝殻の上のヴィーナス」(ハヤカワ文庫)

「電気バンジョー片手に”誰も答えられぬ質問”に答えを求め、星星を遍歴する宇宙吟遊詩人サイモン・ワグスタッフ。そのおともは、イヌとフクロウ、そして美人アンドロイド。だが、彼のあった異星人たち−猫から進化したシャルトーン星人、雄は空を飛行船のよう…

ヴァン・ヴォークト「目的地アルファ・ケンタウリ」(創元推理文庫)

「宇宙における歪みが、太陽系に破滅をもたらすという予測に基づき、アルファ・ケンタウリに向かう宇宙船〈人類の希望号〉。だが、理論上のミスから宇宙船は難航し、船内には不平不満が募り、やがて反乱へと発展した・・・。人類の新天地を求めて果てしなく…

エリック・ラッセル「パニック・ボタン」(創元推理文庫)

追伸1953 ・・・ 人生の晩年を迎えた医師。そこからでたことのない街のコーヒーショップで教え子と出会う。教え子は宇宙飛行士になりさまざまな惑星をめぐっていた。そのときに、不快な惑星の不快な異星人の話をし、その写真を見せる。驚愕したのは、写真に…

エリック・ラッセル「わたしは無」(創元推理文庫)

1905年生まれ1978年没。同じころに生まれた作家にはフレドリック・ブラウンやヴァン・ヴォークトなどがいる。イギリス生まれだけど、アメリカで活躍していたので、アメリカのSF作家のくくりにしてよいかしら。バロウズやスミスと、アシモフ・ハインライン・…

ロバート・ネイサン「ジェニーの肖像」(ハヤカワ文庫)

大不況から10年も経過していたが、経済は復興せず、青年画家イーベンは売れない風景画しか書かない。夕暮れの公園で一人の少女に出会う。数日後に再開したとき、彼女ジョニーはなぜか数年を経たかのように成長していた。イーベンは彼女に魅かれ、肖像画を描…

ロバート・ブロック「サイコ」(ハヤカワポケットミステリ)

自分のもっているのは創元推理文庫ではなく、1975年初出のハヤカワポケットミステリ。なので、タイトルは異なっている。画像参照のこと。 さて、ヒッチコック監督の1961年の映画「サイコ」の原作であるということで、もう紹介は完了。くだくだしいストーリー…

シャーリー・ジャクスン「山荘綺談」(ハヤカワ文庫)

シャーリー・ジャクスン「山荘綺談」とリチャード・マシスン「地獄の家」(ハヤカワ文庫)をあわせて。ほぼ同日にまとめて読んだので。 どちらも幽霊屋敷ものホラーの古典。前者は1951年、後者は1972年の作。現在は、「山荘綺談」ではなく、「たたり」創元推…

C・G・フィニー「ラーオ博士のサーカス」(ちくま文庫)

アリゾナ州アバローニ市にサーカスが来たネ。ラーオ博士(老先生のほうがよろし)が団長ネ。サーカスにはメデューサがいるヨ、スフィンクスがいるヨ、キマイラに人魚がいるヨ。あそこではアポロニウスが占いをしているネ、今度死人を生き返らせるアルので、…

トム・リーミー「沈黙の声」(ちくま文庫)

誰だったか、サーカスをテーマにしたファンタジーの傑作には、ブラッドベリ「何かが道をやってくる」、C・G・フィニー「ラーオ博士のサーカス」、それにこの「沈黙の声」があると言っていた。そのときにはサンリオSF文庫は絶版になっていたので、入手で…

トム・リーミー「サンディエゴ・ライトフット・スー」(サンリオSF文庫)

トム・リーミーは1935年テキサス州生まれ。長じてファンジンを作っていたが、作家にはならず映画界で仕事をしていた。40代になって作家に転業。しかし1977年に心臓麻痺で死亡。実質的な活動期間は3年で、長編「沈黙の声」とこの短編集がほぼすべての作品。…

トマス・トライオン「悪を呼ぶ少年」(角川文庫)

竹本健治「匣の中の失楽」にでてくる双子の愛称が、このホラーの主人公たちからとられていた。そのためにこの小説にはずっと興味があったにもかかわらず、1990年ころは品切れになっていた。最近、角川ホラー文庫で復刊された(といっても古本屋で買ったので…

トマス・トライオン「悪魔の収穫祭 上」(角川文庫)

「悪を呼ぶ少年」に続く第2作。1973年。 大手会社の広告担当重役ネッド・コンスタンチンは社長とけんかして退社し、ニューイングランド州コーンウォール・クームという村に1700年代初頭に建てられた家を見つけ、妻と娘の3人で移住する。 この村は極めて閉…

トマス・トライオン「悪魔の収穫祭 下」(角川文庫)

トマス・トライオン「悪魔の収穫祭 上」(角川文庫) - odd_hatchの読書ノート 村がどうなっているのか、というのが大問題なのだけれど、それは新参者のネッドには把握できない。なんとなれば、村人は彼に説明しないから。現在のとうもろこし王ジャスティン…

スティーブン・キング「呪われた町 上」(集英社文庫)

およそ20年ぶりに読んで、既視感を覚えたのは、「ほかの長編のモチーフをひとつにまとめた、なんて贅沢な小説なのだろう」ということ。もちろん順番は逆。これは1975年に出版された第2作(売れない時代に書いた別の長編があるのだけど。「バトルランナー」と…

スティーブン・キング「呪われた町 下」(集英社文庫)

駆け出しの小説家ベン・ミラーズは数十年ぶりに故郷の街に帰ってきた。それは二つの目的があり、ひとつは交通事故で死なせた妻の幻影を消すため、もうひとつは彼のオブセッションである幼児体験の正体を確かめるため。メイン州にあるセーラムズ・ロットとい…