2021-09-01から1ヶ月間の記事一覧
ハワイが併合されたのがニュースになったというから1959年のこと。ニューヨークのしょぼくれた私立探偵ハリー・エンジェルに、ルイ・シフルという男からおよそ20年前に失踪したスイング・ジャズ歌手ジョニー・ファイバリットの行方を捜してくれという依頼が…
その名前もない都市には、<探偵社>がある。組織の全貌はつかめないが、とりあえず探偵と監視員と記録員と記録管理員と用務員という職務があるらしい。 「雨が降り続ける名もない都市の〈探偵社〉に勤める記録員アンウィンは、ある朝急に探偵への昇格を命じ…
手元にある都筑道夫の本約130冊のレビューも残すところは「なめくじ長屋」シリーズだけになりました。このシリーズはじっくり時間をかけて読みたいので、レビューを公開するのは数年後になるでしょう。というわけで、いままでに公開したレビューの一覧をつく…
1945年の敗戦と同時に、16歳の少年が早稲田実業に行くのをやめ、劇作家を志す。あるカストリ雑誌の編集部に入り、雑用をしているうちに、雑誌に穴が空こうとしたのでショートショート(という言葉は当時はない)を書いた。それから依頼されるたびに講談…
2021/09/17 都筑道夫「ひとり雑誌第1号」(角川文庫)-1 1950年の続き 雑誌の同じ号に一人で複数の小説ほかを掲載することがあったので、作家はいくつものペンネームをつかった。時代小説用、翻訳用など。タイトルの後ろにかっこをいれたのは、そのペンネー…
続けて第2号。「掘出珍品大特集」と称する。 妖説横浜図絵 ・・・ 都筑道夫「変幻黄金鬼」(時代小説文庫)所収 昔噺羅生門 ・・・ 羅生門の前で自害しようとする男を鬼が助ける。恋路が破れての果てであるが、風雅を解する鬼は一肌脱ごうと、疫病神に頼ん…
第3号は「空前絶後大特集」。 弁天夜叉 ・・・ 女掏摸からのし上がる弁天小僧菊之助(いまでいう男の娘)の身の破滅まで。 敵討三世相 ・・・ 敵討ちにでた兄弟、捕まらない相手、それも幼いころから世話をしてもらった伯父を追うことに飽きる。弟は離反し…
ひとり雑誌全3巻は古い切り抜きから小説(と一冊ごとに2つの講談ダイジェスト)を編集した。好評だったのでもう一冊出すことになったが、小説は残っていないので、講談ダイジェストだけで編むことにした。全8編のうち怪異をあつかったのが5つあるので、「妖…
1950年代と1980年代の時代物、伝奇小説を集める。最初の作はもともとは「魔海風雲録」。同じタイトルの長編を1954年に出したので、短編を本書のように改題。最初の4編が50年代はじめ(「私が二十歳から二三歳までの間に、どこかでかいたもの」)。 変幻黄金…
1954年というと、仙花紙に印刷した粗悪な読み物雑誌の売れ行きが激減し、時代小説のニーズもなくなっていった時期だった(と作者はいう)。そこで初めて長編出版の話がでたときに、それまでの伝奇小説、時代小説、講談書下ろしなどの総決算としてこの長編を…
同タイトルの光文社文庫を読む。併録は「やぶにらみの時計」。エッセイにもあるように20歳から文章を売ってきたので、どれが最初の作品かはわからない。ここに収録されたのは1958年のものだが、すでに売文のキャリアは10年を超えている。20代後半の作者はす…
「おれか?おれは、なにもかも、うしなった私立探偵くずれの男だ。うしなうことのできるものは、もう命しか、残っていない。」 という詠嘆で始まるニューヨークの酔いどれのモノローグ。元は探偵。結婚して楽しい暮らしをしていたが、ある時妻が共同経営者と…