odd_hatchの読書ノート

エントリーは3000を超えているので、記事一覧よりもカテゴリー「INDEX」をご覧ください。2023/9/21

ヴァン・ダイン

ヴァン・ダイン INDEX

2017/05/01 ヴァン・ダイン「ベンスン殺人事件」(創元推理文庫) 1926年 2017/04/28 ヴァン・ダイン「カナリア殺人事件」(創元推理文庫) 1927年 2017/04/27 ヴァン・ダイン「グリーン家殺人事件」(創元推理文庫) 1928年 2011/03/06 ヴァン・ダイン「僧…

ヴァン・ダイン「ベンスン殺人事件」(創元推理文庫) ファイロ・ヴァンスはアメリカ知識人が夢見た理想的教養市民

株の仲買人で道楽者のアルヴィン・ベンスンが自室で射殺された。ソファでくつろいでいるところを正面から。道楽者で金に汚い被害者は人に恨まれていた。とくに、愛人にしている歌手(メトロポリタンオペラで歌った後独立)とそのフィアンセの大尉、道楽仲間…

ヴァン・ダイン「カナリア殺人事件」(創元推理文庫) ファイロ・ヴァンスは美学的方法による探偵

アメリカの戦前バブル全盛期である1927年のベストセラー。のちの探偵小説に多大な影響を与えた作品。 ニューヨーク・ブロードウェイ(って1927年にあったのかな)の名花マーガレット・オデール(通称カナリア)が自室で殺されていた。その夜には数名の出入り…

ヴァン・ダイン「グリーン家殺人事件」(創元推理文庫) 現場検証と尋問だけではつまらない? なら事件を増やしましょう

大量生産・大量消費、メディア革命、家庭電化推進、モータリゼーション革命など現代化が進んでいる1920年代のニューヨーク。そこに前世紀からの古めかしい館がある。20年前に死んだ当主の遺言で、遺族は25年間その館に住まないと莫大な遺産の相続権を放棄し…

ヴァン・ダイン「僧正殺人事件」(創元推理文庫)-1 ミッシングリンクとサイコパス殺人の元祖

ニューヨークの高級住宅街にある世界的な理論物理学者ディラード教授邸と「数学の天才」ドラッカーの家が並ぶ敷地で若者が殺されていた。アーチェリーの矢で射ころされた青年は本名からつけられたあだ名が「クック・ロビン」。彼のライバルは雀でもあるスパ…

ヴァン・ダイン「僧正殺人事件」(創元推理文庫)-2 とヴァン・ダインの二十則「探偵小説を書くときの二十則」について

2017/04/26 ヴァン・ダイン「僧正殺人事件」(創元推理文庫)-1 1929年の続き。 ヴァン=ダインの「カナリア殺人事件」「グリーン家殺人事件」「僧正殺人事件」を読みながら、探偵小説は二つの物語が同時進行するのだなあ、というのを思った。すなわち、死体…

ヴァン・ダイン「カブト虫殺人事件」(創元推理文庫) 学術研究に没頭する資産家も世界不況では優雅なことをいっていられない

ヴァン・ダインはエジプト美術の専門家だったのかしら。ファイロ・ヴァンスにさかんに蘊蓄を語らせているうえ、エジプトの古文書の翻訳もさせている(「グリーン家」「僧正」の事件で中断したらしい)。では、その蘊蓄が事件にどうかかわっているか、という…

ヴァン・ダイン「ケンネル殺人事件」(創元推理文庫)-2 エラリー・クイーン「奇蹟の年」のヴァン・ダイン作品は一気に古めかしくなってしまった

前回の感想(ヴァン・ダイン「ケンネル殺人事件」創元推理文庫)では、サマリーがなかったので、10年以上たってから再読した。作者は満足のいく探偵小説は半ダースしかつくれないといっていて、これがその6作目。時代(1932年初出)を考慮しての評価では及…

ヴァン・ダイン「グレイシー・アレン殺人事件」(創元推理文庫) 知的エリート・ミーツ・はすっぱ庶民娘

ヴァン・ダインの探偵小説は評判をとってすぐに映画化された。でも、犯人当ての映画はあまり当たらなかったようだ。小説を忠実に再現しようとすると、室内の尋問か会議ばかりでシーンの変化が少なく、アクションがない。配役を見れば(役者の顔を見れば)犯…

ヴァン・ダイン「僧正殺人事件」(講談社文庫) 平井呈一訳

この文庫はもう新刊書店の店頭には並んでいない講談社文庫版(一時期は創元推理、講談社、角川、旺文社などいくつもの訳がでていたのだった)。訳者は平井呈一。荒俣宏のお師匠さんであり、彼の文章で往時の姿をしのぶことができる。それによると、江戸の戯…

ヴァン・ダイン「ケンネル殺人事件」(創元推理文庫) アメリカ・ミステリ中興の祖で、アメリカ・バブル時代のモデルを提示。

巨匠会心の第6作! 世界推理文壇の寵児となった作者が、〈コスモポリタン〉誌のたび重なる要請に応えて連載した本書は、果然ヴァン・ダイン・ファンの期待にたがわぬ傑作となった。古代中国陶器と犬についてのペダントリーに彩られた殺人事件は、それらの要…