2013-10-01から1ヶ月間の記事一覧
上巻は革命以前の帝政時代で、下巻は革命後。1920年代のロシア・アバンギャルドの時代と1930年代の社会主義リアリズムの時代。SFは1930年代には当局に快く思われず、作品が没になったり、書くことを停止された作家もいたとの由。たぶんその一方で、人民教育…
1988年の東欧・ソビエト革命以来、ロシア文学の人気は落ちていく一方であって(と勝手に妄想。ドスト氏は例外的に読まれているのかな)、細々と翻訳が行われていたレムやストルガツキー兄弟のSFも新刊がでなくなってしまった(と見たのは2005年ころ)。この…
19世紀ロシアの作家。活動時期はドストエフスキー後期に重なるかな。折からのナロードニキ運動に共感する一人。将校の息子というからそれなりのインテリ家族であったのだろう。そのままでいけば有力な社会運動家、理論家であったとおもわれるものの、この人…
まあ以下のような妄想を書く人もいないだろうから、「トンデモ」認定を受けることを甘受して妄言を記しておこう。すなわち19世紀以降のロシアとこの国の歴史には類似と平衡関係が認められると。 ・19世紀前半において、両国は農業を主産業とする封建国家であ…
2013/08/19 ギルバート・チェスタトン「奇商クラブ」(創元推理文庫) 隠された新規事業を探せ。最も奇妙な謎解き探偵。 1905年 2013/08/20 ギルバート・チェスタトン「木曜の男」(創元推理文庫) 共産主義や無政府主義に嫌悪と憧憬を同時にもつアンビバレ…
1984年に村上龍と坂本龍一がゲストを読んで対談した記録。ゲストで呼ばれたのは、吉本隆明、河合雅雄、浅田彰、柄谷行人、蓮実重彦、山口昌男。 この時代、浅田彰の「構造と力」が売れて、ニューアカデミズムという名前で若手の哲学者・評論家の本が大量に流…
山口昌男の文章を読むと、元気が湧いてくる。大量の引用、大量の書肆、たくさんの人名、たくさんの作品、幾多の地名。自分の知らないことはたくさんある、それを知ることは楽しい、それがつながることは楽しい。こんな気分になって、知的エネルギーがわいて…
1973年初出で、雑誌「歴史」に一挙掲載されたとか。たぶん著者の基本的な考えがまとめられている。「中心と周縁」理論は以下の引用で概要を理解できるので、とても長くなるが引用しておく。自分の備忘をかねて。 「政治権力の究極的なよりどころは生賛を神に…
1970年代前半の論文が収録。哲学・思想系の「オカタイ」雑誌に掲載されたものだと思うけど、高校の世界史と倫理社会(今はなんて学科名だい?)の知識を持っていればだいたい理解できる。面白いのは、いくつかのキーワードを元にそこにリンクするほかの本・著…
「風浪」は明治8年から10年にかけての熊本が舞台。大政奉還後、廃藩置県、廃刀令、四民平等などの西洋化政策が上からの浸透で進められているころ。下級武士は殿様との関係が切れ、行く末が定まっていなかった。直前に地租改正もあり百姓は困窮状態。熊本県で…
1950年代に書かれた作品が主に収録。 彦市ばなし ・・・ 熊本弁で書かれている。怠け者の彦一が天狗の隠れ蓑を騙し取ろうとし、一方殿様から河童つりと称して鯨の肉を奪い取ろうとする。その結末は・・・ せいぜい20分くらい。のちに狂言の演目として定着し…
オットーと呼ばれる日本人 ・・・ 1930年代の上海。ドイツのナチスに席を置くジョンソンと呼ばれるドイツ人を首魁を中心にしたアメリカ人、中国人、日本人たちの国際共産主義スパイ活動。その一員である「男(とだけ呼ばれるので「オットー」)」が主人公。…
子午線の祀り ・・・ 平家物語から取った戯曲(この人は「平家物語」の解説本を書いている。「古典を読む 平家物語」岩波現代文庫)。主人公は平知盛と源義経。前者は貴族の息子で粗暴な武者だったのが、木曽義仲に京をおわれてからリーダーに変身した人。天皇…
ジャン・ポール・ベルモンド主演の映画も作られているのだね。本書は現在(2008/06/30)、絶賛絶版中。まあ、仕方がない。簡単に梗概を書くことにしよう。 引退した元ギャングのもとに、弁護士の自殺の連絡が入る。弁護士は元ギャングの資産管理をしていたが…
ラティ―マーの長編第1作。冬のシカゴを探偵たちが歩き回り、ジン、マティーニ、バーボンを飲みまくる。一度は飲みすぎで倒れているというのに、まったくタフな連中だ。 株式仲買人が死刑執行を待っている。別居して離婚する予定だった妻が、半年前のある深夜…
「夜中の死体置場。卓上の寒暖計は既に91度に達している……。気狂いじみた暑さと死体の異臭に満ちたシカゴの死体置場には、安ホテルで自殺した若い女の死体が収容されていた。そして、この女の身許を確かめようと三人の男が押しかけていた。二人の新聞記者と…
原題を日本語訳すると「大いなる怒り」になる。1953年刊になる前にチャンドラーが「大いなる眠り」を出しているので、混同を避けたのだろう。1940−50年代は「big」が最大級の強調語だったのだ(のちには「great」「dynamites」などに変わる)。 警官を主…
主人公は警官。長年、市を牛耳るギャングと関係を持ち、彼らから利権を得ていた。しかし、彼の弟がギャングの犯罪の現場に居合わせ、告発する。ギャングは主人公を通じて、弟を工作しようとするが、正義漢である弟は撤回しない。そのため弟は殺される。怒り…
「緊急深夜版(Night Extra)」はたぶん朝刊の号外みたいなこと。朝刊の一面を作り終えたころに、事件が入ってくると至急作り返さないといけなくなって、新聞社の全員(記者から写真の現像担当から活字ひろいまで)を緊急招集してことに当たらないといけない…
「2001年宇宙の旅」のディスカバリー号はオタクの天国だよなあ、と妄想していて、ではリアルではどうなのかを考えていたら、それに近いのは南極観測隊だと連想した。あそこでは、冬季になると外部からの資材が届かなくなるし、以前は連絡もなかなかつけにく…
笠井潔「オイディプス症候群」(光文社)を読んでいたら面白い議論があった。 「人が人を殺すことは許されるのか。この設問は、僕たちが生きている近代社会では契約に応じた者が他の契約者を殺すことは許されるか、という命題に変換される。むろん許されない…
もう何度も繰り返し見ているのだが、どうしてこの小説と映画はかくもわれわれを魅了するのだろうか。そんなことを考えていたら、繰り返し読む/見るとはいってもそれは物語やフィルムの最初から最後までをきっちりとスクロールするようなやり方ではないことに…
自分が購入したのはあとがき(文庫旧版)にある1978年の映画再公開にあわせて出版されたとき。「スターウォーズ」にあわせてのリバイバルと思うが、この映画を見るために苦労したなあ。新宿の武蔵野館まででかけたが満員で入館できず、午後の模擬試験のために…
チェスタトンのブラウン神父譚を発表順に並べると下記のようになる。1911年 『ブラウン神父の童心』(The Innocence of Father Brown) 1914年 『ブラウン神父の知恵』(The Wisdom of Father Brown) 1926年 『ブラウン神父の不信』(The Incredulity of Fa…
1)家、共同体で権力をふるう「君主」 2)空位になった権力を奪取しようとする「簒奪者」 3)庇護されなければならない弱者(子供、老人、病人) 4)過去の犯罪を断罪されていない「犯罪者」 5)現在の犯罪の真相を知っている「証人」「探偵」 6)過去…
2013/09/27 笠井潔「オイディプス症候群」(光文社)-1 2013/09/30 笠井潔「オイディプス症候群」(光文社)-2 ここでは「権力」が問題にされる。というのも「閉ざされた山荘」「孤島」では、犯人と被害者が同じ場所に閉じ込められ、逃げる場所がない。そう…