odd_hatchの読書ノート

エントリーは3000を超えているので、記事一覧よりもカテゴリー「INDEX」をご覧ください。2023/9/21

2024-05-01から1ヶ月間の記事一覧

川北稔「世界システム論講義」(ちくま学芸文庫)-3 世界システムのヘゲモニー国も、せいぜい50年ほどしか覇権をとれない。次の覇権国はまだ見えてこない。

2024/06/04 川北稔「世界システム論講義」(ちくま学芸文庫)-1 世界システム論は、近代世界を一つの生き物のように考え、象徴としての「コロンブス」以降の世界はヨーロッパ世界システムの展開である 2016年2024/06/03 川北稔「世界システム論講義」(ちく…

インマニュエル・ウォーラーステイン「新版 史的システムとしての資本主義」(岩波書店)-1 地中海貿易を遮断されたヨーロッパが新大陸での民族浄化と奴隷制、国内の性差別で資本主義を発展させた。

「新版」であるのは1983年にでた「史的システムとしての資本主義」に、「資本主義の文明」二編を追加した版を1995年に出版したため。近代史を「世界システム」の変遷とみるやりかたはだいぶ普及しているが、その嚆矢になった論文。 川北稔「世界システム論講…

インマニュエル・ウォーラーステイン「新版 史的システムとしての資本主義」(岩波書店)-2 資本・企業家は資本蓄積だけが目的であるように、労働者は自らの生存と負担軽減だけが目的。反システムの社会主義は資本主義的世界システムの援軍になる。

2024/05/30 インマニュエル・ウォーラーステイン「新版 史的システムとしての資本主義」(岩波書店)-1 地中海貿易を遮断されたヨーロッパが新大陸での民族浄化と奴隷制、国内の性差別で資本主義を発展させた。 1995年の続き 前言撤回。人種差別(レイシズム…

インマニュエル・ウォーラーステイン「新版 史的システムとしての資本主義」(岩波書店)-3 資本主義的世界システムは危機。その先は新封建国家か民主的ファシズムか。

2024/05/30 インマニュエル・ウォーラーステイン「新版 史的システムとしての資本主義」(岩波書店)-1 地中海貿易を遮断されたヨーロッパが新大陸での民族浄化と奴隷制、国内の性差別で資本主義を発展させた。 1995年2024/05/28 インマニュエル・ウォーラー…

森島恒雄「魔女狩り」(岩波新書) マイノリティと女性を嫌悪するプロパガンダが起こした大殺戮

魔女という概念は古代からあったが、中世のキリスト教社会では寛容だった。懺悔を白という命令だけでおしまいになることが多かったという。それが転換するのは、13世紀の南フランスやカタルーニアなどで異端(アルビ派、ヴィルドー派、カタリ派など)が活動…

上杉忍「アメリカ黒人の歴史」(中公新書) 黒人奴隷制に支えられた白人の国アメリカはいかにして世界システムの覇権を取ったか。

20世紀後半に書かれた「アメリカ黒人の歴史」を先に読んだ。感想は以下。2022/03/22 本田創造「アメリカ黒人の歴史 新版」(岩波新書)-1 1990年2022/03/19 本田創造「アメリカ黒人の歴史 新版」(岩波新書)-2 1990年 本書は2013年に書かれた。21世紀になっ…

ジェームス・M・バーグマン「黒人差別とアメリカ公民権運動」(集英社新書) 1950-60年代の公民権運動。白人レイシストと行政・司法が結託して黒人に暴力・リンチを行い、どう対抗するかが重要課題。

アメリカ黒人の歴史のうち、1950-60年代の公民権運動を描く。黒人の歴史(アメリカでは大学の授業がある)の通史は以下を参照。 odd-hatch.hatenablog.jp odd-hatch.hatenablog.jp 上杉忍「アメリカ黒人の歴史」(中公新書) 本書を呼んだ限りでは、「公民権…

渡辺靖「白人ナショナリズム」(中公新書) 日本をうらやむアメリカのネトウヨのいま。自国第一主義団体はグローバルな連帯をめざす!?

アメリカの白人ナショナリズムの動向を2020年にレポートする。重要なできごとは、911事件とその後のヘイトクライム、2017年10月シャーロッツビルで起きた白人ナショナリストによる襲撃事件(一人死亡)。本書刊行後では、Qアノン、2021年1月のアメリカ議会襲…

墓田桂「難民問題」(中公新書) 国の難民問題を担当していた人の啓蒙書。法務省や入管の代弁なので参考にならない。

国の難民問題を担当していた人の啓蒙書。2016年刊行。法務省や入管の代弁なので参考にならなかった。 第1章 難民とは何か ・・・ 定義や範囲はいろいろ変わるが、人種・宗教・国籍・特定集団の構成員であることや政治的意見を理由に迫害を受ける恐れがあっ…

平野千果子「人種主義の歴史」(岩波新書) 16世紀のアフリカ黒人奴隷制から始まる差別目的の人種主義(racism)が存在しない「人種」を作ってきた。

本書で人種主義としているのはレイシズム(racism)の日本語訳。この言葉が使われるようになったのは19世紀末からだが、差別の意味をもつraceは古くから使われてきた。「人種」は存在しないが、差別目的の人種主義が人種をつくってきた。それぞれの時代の思…

趙景達「近代朝鮮と日本」(岩波新書)-1 朝鮮に視点を定め、日本が「異人」であるかのように朝鮮と日本の近代史を見直す。

これまで全く無知だったので、朝鮮の近代史と日本の植民地政策を勉強するために、以下を読んできた。2017/05/25 海野福寿「韓国併合」(岩波新書) 1995年2017/05/24 高崎宗司「植民地朝鮮の日本」(岩波新書) 2002年 また同じ時代の日本の近代史はさまざま…

趙景達「近代朝鮮と日本」(岩波新書)-2 日本史を外国の目から見るとき、列島の住民の「常識」(例えば司馬遼太郎「坂の上の雲」)が覆される。

2024/05/14 趙景達「近代朝鮮と日本」(岩波新書)-1 朝鮮に視点を定め、日本が「異人」であるかのように朝鮮と日本の近代史を見直す。 2012年の続き 日本史を外国の目から見るとき、列島の住民の「常識」が覆される。ことにこの時代の朝鮮半島のできごとを…

杉原達「中国人強制連行」(岩波新書) 大日本帝国は占領地の中国人を拉致して日本その他で危険な労働を強制し多数を殺した。

1946年に外務省が調査したら、約4万人の中国人が戦争末期の1944~45年に強制連行された。連行先では強制労働が行われ、24時間の監視、生存ラインぎりぎりの食糧、悪質な労働環境と住環境、医療なし、監視員他による暴行や拷問の頻発などにより、多数の中国…

安田浩一「「右翼」の戦後史」(講談社現代新書) 右翼の歴史は保守政党による支援の歴史。大日本帝国憲法・軍人勅諭・教育勅語が右翼の聖典。

ヘイト団体や差別団体の活動を監視していると、どうしても右翼団体が視野に入ってくる。ときに差別団体(在特会とか日本第一党とか)よりも悪質なヘイトスピーチを,ヘイトスピーチ解消法施行後にも行っている。なぜ右翼は外国人排斥を主張するのか、なぜ右翼…

渡辺延志「関東大震災「虐殺否定」の真相 ハーバード大学教授の論拠を検証する」(ちくま新書) ラムザイヤー論文を検証。執筆者も、当時の政府も軍も警察もフェイクニュースを流していた。

2019年にハーバード大学のラムザイヤー教授(専門は法学らしい)が関東大震災の朝鮮人虐殺を否定する論文を発表した。第1章に論文のサマリーが載っているが、内容は日本のネトウヨがいっている否定論と同じだ。関東大震災の朝鮮人虐殺のことを「朝鮮人…