odd_hatchの読書ノート

エントリーは3000を超えているので、記事一覧よりもカテゴリー「INDEX」をご覧ください。2023/9/21

近代戦争

森村誠一「悪魔の飽食」(カッパノベルス) 731部隊による戦争犯罪が知られるきっかけになったベストセラー。

1982年のベストセラー。百万部を超えたらしい。このような陰惨なノンフィクションを受け入れる土壌があったことを懐かしく思い出す。レーガン政権になって核戦争の可能性が増したと思われた時代だったこと、それから医療行政の不手際が目立つことあたりがそ…

大宅壮一編「日本の一番長い日」(角川文庫) 熱しやすく激しやすくて、成功の見込みのない行動をすぐ起こし、あっという間に挫折。「観念」への熱狂と乗り換えはいかにも日本的。

学生時代に読んでいて書架に眠っていたものを再読。岡本喜八監督による同名映画をみたのが最近(2006年現在)だったので興味を持ったから。著者名は手元にある古い角川文庫版によるが、あとがきによると実際の著述は半藤一利氏。最近、文春文庫で復刊されたほ…

徳川夢声「夢声戦争日記 抄」(中公文庫) 漫談家が戦時中に慰問に呼ばれたのは軍隊も庶民も笑いと娯楽を欲していたため。

無声映画を上演する時、日本では弁士という特別の形態があった。どうやら西洋ではオーケストラあるいは小型楽隊が場面に合わせて演奏しているのを聴いていた。それはあたかもバレエを見ているようなものだ。ところが日本では小さな楽隊に合わせて、弁士が場…

多川精一「戦争のグラフィズム」(平凡社ライブラリ) 日本陸軍が制作した幻の雑誌「FRONT」の記録。東方社に集まった顔ぶれがすごいメンツばかり。

対米開戦の避けられないと思われた昭和14-5年ころに、陸軍参謀部は考えた。米にはLifeが、ソ連にはUSSRというグラフ誌があるではないか。それに比べわが軍、わが国には。というわけで、参謀本部の肝いりで「対ソ宣伝計画」を目的にした民間雑誌会社を作るこ…

高杉一郎「極光のかげに」(岩波文庫) 共産主義者の育成学校であったソ連の捕虜収容所。。自分で考える時間を奪われ、集団意思に強制的に従わさせられる。

「敗戦後,著者は俘虜としてシベリアで強制労働についた.その四年間の記録である.常に冷静さと人間への信頼とを失わなかった著者の強靭な精神が,苦しみ喘ぐ同胞の姿と共に,ソ連の実像を捉え得た.初版(一九五〇)の序に,渡辺一夫氏は,「制度は人間の…

早乙女勝元「東京大空襲」(岩波新書) 行政が空襲記録をつくらないので、民間が聞き取り調査する。無差別空襲を立案指揮したルメイに日本国は勲章を贈った。

サイパン島などを陥落したのち、アメリカ海軍は空爆の指揮官をルメイ将軍に変えた。その結果、軍事施設をピンポイントで狙う作戦が変更され、無差別爆撃になった。東京への昭和20年1月と2月のテスト空襲で十分な成果を得られると判断したため、3月10日、14日…