odd_hatchの読書ノート

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北山俊哉/真渕勝/久米郁男「はじめて出会う政治学 -- フリー・ライダーを超えて 新版」(有斐閣アルマ)-1

 大学の新入生向けテキスト。高校までの覚える授業から考える講義になるにあたって、大学生が自発的・積極的に政治をみられるようにする。そのために卑近な日常のできごとがイントロになり、そのあとに考える枠組みを提示するという仕掛けになっている。もとは2003年なので、いささか古くなった(このあと改訂版が出た模様)。
 2013年の安倍政権発足から、本書に書かれた日本の政治はいたるところで安倍晋三自民党が破壊しまくったので、21世紀の20年代にはもう一度書き直さなければならないだろう。そうすると、どうしても正義や共通善、共和主義、公的自由などの概念の説明にそれぞれ一章を割かねばならない。

 

パート1 政治と経済
1章 組織された集団 ・・・ 産業界・政治家・官僚が鉄の三角同盟(トライアングル)を作って、業界の利権を守っている(それぞれにメリットがあるため)。これが維持されるのは、少数者が利得のために政治活動をするのに対し、多数者は活動するメリットが見えないので放置・黙認するため。努力しないで便益を得られる人をフリーライダー(ただ乗り)といい、傍観者を決め込み、政治活動をさぼる。結果、少数者の利益を守るために多数の利益を犠牲にすることがある。
(長期的には鉄の三角同盟も崩れることはある。少数者の利権による多数者の不便や不利益を多数者が問題にしたとき。)

2章 官と民の関係 ・・・ 経済の自由と政府の経済介入について。市場が失敗することがある。フリーライドしやすく採算が取れない、情報の非対称性があって品質保証できない、外部不経済など。このような主に公共財では政府・自治体がサービスを行う。そこでも独占を許して低品質鋼価格のサービスになったり不採算が改善されないなどの政府が失敗することがある。

3章 大企業と政治 ・・・ 財界の影響力は強いが、それだけで政治が決まるわけではない。政治家の影響力は強いが、それだけで政治が決まるわけではない。誰かが政治を支配しているとみるのではなく、様々な集団が影響力を行使しあっている多元的民主主義で見たほうがよい。(とはいえ、2013年からの安倍内閣はメディアを手なずけて、政治家による専制を実現してしまった。)

パート2 政治と社会
4章 選挙と政治 ・・・ 選挙でだれに投票するか。政策で決める、業績で決める、人柄で決める、政党で決める、などのやりかたがある。(こう長い間劣化した自民党ネトウヨ政権が続くと、そういう投票行動はできなくて、とりあえず与党議員(ワースト1)を落選させるために、鼻をつまんでワースト2の候補に投票することもある。)

5章 地方分権 ・・・ 地方自治体の仕事は、自治事務と国の委託業務がある。委託業務の割合はかなり高い(都道府県で70%、市町村で40%とも)。日本は包括授権方式なので、地方に裁量がある。利点は地方のアイデアが国政を変えたり、独自の政策(外交・交流・NGO支援など)が取れる。欠点は、権限と役割が不明瞭にないやすく国の確認が必要(中央官庁付近に出先機関を作るなどコスト高)、補助金頼み、天下りの温床。日本の知事や市町村長は大統領制に近い。公選制になっているために、国と異なる方針を出すことができる。(公選制のために、ポピュリストが当選して一貫した政策が継続できなくなることもある。)

6章 マスメディアと政治 ・・・ メディアは第4の権力(立法、司法、行政の次)といわれ、政治や政策に影響を及ぼすことができる。しかしメディアは気まぐれ。(21世紀の自民党ネトウヨ政権では政治家とメディアの癒着が起きて、政権批判がなくなったこと。メディアの金科玉条の「不偏不党」は現状維持・現政権擁護にしかならない。)

 

 なんともほのぼのしているなあ、という印象は2003年(初版は1995年)という時代だからだろう。平成不況、失われた10年(20年)のさなかではあるが、まだ日本は先進国であったし、経済大国であったし、国の政治は形式を重視するものではあっても民主主義になっていたし、政治家は高潔で道徳をもっていた(最後の政治家の資質はやはり2000年以降急速に劣化した。21世紀10年代の自民党政治家で閣僚になっているものはこのころに初当選)。それがたったの10-20年で経済も政治もダメになってしまった。ことに学生にとって深刻なのは、金の問題。親の仕送りとバイトでは生きていけないし、将来の希望を持てないような低賃金の職しかない。そのような社会にしてしまったおっさんは本当に申し訳ないと思う。

 

 

 たぶん改訂版。

  

 

2020/11/03 北山俊哉/真渕勝/久米郁男「はじめて出会う政治学 -- フリー・ライダーを超えて 新版」(有斐閣アルマ)-2 2003年に続く