odd_hatchの読書ノート

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北山俊哉/真渕勝/久米郁男「はじめて出会う政治学 -- フリー・ライダーを超えて 新版」(有斐閣アルマ)-2

2020/11/05 北山俊哉/真渕勝/久米郁男「はじめて出会う政治学 -- フリー・ライダーを超えて 新版」(有斐閣アルマ)-1 2003年の続き

 

 2020年にこれを読むと腹が立つねえ。20年前(手持ちの「新版」は2003年改訂)の著者が能天気におもえるのと、現実の政治が国民の生活をちっとも守らない「悪夢」「地獄」の自民党政権になっているから。

 

パート3 政治のしくみ
7章 国会 ・・・ 日本では内閣提出法案の成立率が低い。その理由のひとつは会期が短い(150日。アメリカは2年)。イギリスの野党のようにダメ法案を成立させ、実効がなかったことを選挙の争点にする戦術をとらないこともある。会期が短いと野党の追及を与党や政権が逃げまわることでうやむやにすることができる。
(執筆当時は自民党の単独政権時代が「終わった」とみなされていた。また本書で与野党のダメな運営とされる逃げ回る、無茶苦茶な答弁、資料を隠す・改ざんする・作らない・ださない、強行採決などを安倍政権の与党は常習するようになった。)

8章 内閣と総理大臣 ・・・ (安倍晋三をみていると、ここに書かれたことが絵空事にみえる。総理大臣の役目を全部放棄・破壊・破棄して、専制をしている。まとめる気にならない。)

9章 官僚 ・・・ 官僚は大臣(政治家)と緊張関係になければならない。エリート官僚は出世は早いが退職も早いので、退職後の就職先を準備している。特殊法人と官僚の癒着や低生産性などは問題。(という批判も、安倍政権で官邸が官僚の人事権を握ったので、官僚は内閣や官僚の言いなりになってしまった。とはいえ、安倍政権終了後には官僚がまたでかい顔をとるのだろう。)

パート4 政治と世界

10章 冷戦の終わり ・・・ 冷戦が終了、米ソ対決や資本主義vs社会主義自由社会vs監視統制社会などの図式が解消された。という1993年当時の話。もはや歴史的文書。俺の見たところ、日本の外交政策は一貫して反共イデオロギー尊王攘夷であった。反米か親米かは状況に応じて右往左往。21世紀は親米と嫌アジアの極右外交になっている。

11章 経済交渉 ・・・ 対米経済交渉の話。1990年代の話なので、どうでもいい。むしろ経済学で補完したほうがよい。
岩田規久男 「国際金融入門(旧版)」(岩波新書)
小野善康「景気と国際金融」(岩波新書)
 この20年後、2010年代では日本は先進国ではなくなり、アメリカの経済交渉の相手は中国になった。

12章 国境を越える政治 ・・・ 国家間の関係が経済で深まり、相互依存するようになった。外交のプレーヤーは国家だけでなく、民間団体や企業や個人も。一方で紛争は絶えず、国家間の関係断絶もある。
(この章も事例が古くて参考にならない。2010年代のこの国の問題は、極右政権のためにグローバル化・相互依存関係を無視して、孤立化を深めていること。その間に経済がダメになっているのに、いっさい手を打っていないこと。)

 

 1990年代には政治の基本を押さえるための学生向け参考書(にしては記述は薄いなあ;なので「現代政治学」(有斐閣アルマ)で補完しよう。複数の版があるのでできるだけ新しいもの)だった。初読ノ2007年には参考になった。それが2020年に読むと、ユートピアの政治を記述しているように見える。この国の極右政権が近代化によってつくってきたルールを無視して、専制政治にしているから。これを打倒して、立憲主義を実施する政権にしないと、本書は行き場を失うよ。もちろん、そのような民主的な政権ができたとしても、この国の産業界も官僚にも問題がありすぎるから、そのときには本書の指摘が有効になる。

 たぶん改訂版。