odd_hatchの読書ノート

エントリーは3000を超えているので、記事一覧よりもカテゴリー「INDEX」をご覧ください。2023/9/21

ハーマン・メルヴィル「白鯨 下」(新潮文庫)-ダイジェスト1 奇人変人ばかりのクルーが集まり、狂気の海に出航する。

 15分でわかるハーマン・メルヴィル「白鯨」ダイジェスト(1)。
 章題は新潮文庫版によっているが、一部は異なる。章題のあとの「(鯨学)」「(捕鯨船)」は博物学的記述であることを示すために自分が追加した。サマリー中の( )は自分の補注。
 おおざっぱなストーリーはジョン・ヒューストン監督「白鯨」1956年(脚本はなんとレイ・ブラッドベリ)を見ればよい。大筋は以下のサマリーに一致しているが、後半になってからいくつかの設定とエピソードが原作と異なる。この映画、グレゴリー・ペック以下、大げさで堅苦しい芝居といわれるのだが、自分には好印象。

 

第1章「まぼろし」 ・・・ イシュマエル登場。鬱屈がひどくなると海に出たくなる。捕鯨船の水夫になることにする。

第2章「カーペット・バッグ」 ・・・ ナンタケットを目指し、ニュー・ベドフォードの安宿「潮吹亭」に宿をとる。宿の亭主は「コフィン(棺)」。

第3章「潮吹き亭」 ・・・ 銛打ち、首売り商人、食人種のクィークェグと同室になる。

第4章「掛けぶとん」 ・・・ クィークェグの彫り物、着替え、髭剃りについて。

第5章「朝食」 ・・・ 捕鯨船乗りの傍若無人と社交性のなさ。クィークェグの食事作法(銛でレア・ステーキを食べる)について。食事のあとのたばこ。

第6章「通り」 ・・・ 起床のち散歩。ニュー・ベドフォードの紹介。すでに多民族、多人種の住む町。

第7章「教会堂」 ・・・ 霙交じりの雪になって「捕鯨者の教会堂」に入る。クィークェグがいる。捕鯨中に亡くなった人々の墓誌を読む。

第8章「説教壇」 ・・・ マップル牧師がひどく高い説教壇に登る。「世界の船首」。

第9章「説教」 ・・・ ヨナ書に基づく説教。神から逃げるものにして、後悔の規範となるヨナ。回心ののちの、虚偽に対して真っ向から真理を解くものであるヨナ。

第10章「こころの友」 ・・・ 野蛮人であるクィークェグに崇高さを見出す。イシュマエルはクィークェグの終生の友となる。クィークェグは自分の財産の半分をイシュマエルに渡し、イシュマエルはクィークェグの偶像ヨジョを拝む。

第11章「ナイトガウン」 ・・・ ベッドをともにするが眠らない。夜明け前にたばこを吸いあう。

第12章「おいたち」 ・・・ クィークェグの半生。西南の島の王子として生まれ、自国民の清潔向上のためにキリスト教国に行く。しかし教徒の道徳の低さに失望して異教徒として生きることを決める。

第13章「手押し車」 ・・・ ナンタケットで捕鯨船に乗り込むことを決意。クィークェグ、一輪車を荷物と一緒に背負った話をする。クィークェグを馬鹿にした男が川に落ちたのを救い、クィークェグは称賛を浴びる。「苔」号に乗る。

第14章「ナンターケット」 ・・・ ナンターケット到着。

第15章「チャウダー」 ・・・ 「汐吹亭」の姉妹旅館、「鍋」屋に到着。看板が絞首台に見える。極上の鍋料理(チャウダー)を食べる。

第16章「船」 ・・・ クィークェグがいうには偶像神ヨジョはイシュマエルの探した船こそがあらかじめ決められた船であるという。3艘のなかから「ピークォド」号を選ぶ。怒りっぽく偉い船長がよいと船主がいう。

第17章「ラマダーン」 ・・・ 帰宅するとクィークェグはラマダン(断食)の最中。一昼夜、趺座。

第18章「クイークェグのしるし」 ・・・ クィークェグの宗教を咎める船主に、長老教会派のイシュマエルが懸命に擁護。クィークェグの銛打ちですぐに契約。船主ピーレグとビルタドのコント。

第19章「預言者」 ・・・ ボロ着物を着たイライジャがイシュマエルにエイハブ船長の予言を告げる。

第20章「出港準備」 ・・・ 出港準備。

第21章「上船」 ・・・ 夜明け前、イライジャが再び警告。イシュマエル、黒い影が船に乗るのを見る。

第22章「メリー・クリスマス」 ・・・ スターバック一等航海士登場。出港(クリスマスの日)。

第23章「風下の岸」 ・・・ 出港にあたっての決意。陸地なきところに最高の真理がある。

第24章「弁護」 ・・・ 捕鯨業の歴史とその尊厳について。

第25章「追記」 ・・・ 鯨の油は女王の戴冠式に使われる(から、高貴な仕事)。

第26章「騎士と従者(その一)」 ・・・ スターバック。背の高いがっしりした男。剛毅で慎重。

第27章「騎士と従者(その二)」 ・・・ スタブ二等航海士。フラスク三等航海士。タシュテグ銛打ち(インディアン)。ダグー銛打ち(アフリカン)。ピップ小僧(アフリカン)。

第28章「エイハブ」 ・・・ エイハブ船長。背の高い片足の男(日本の沖でなくす)。不機嫌、決意と執念。

第29章「エイハブ登場、つづいてスタッブ」 ・・・ エイハブ、スタブの軽口に激怒。スタブ、茫然として沈思。

第30章「パイプ」 ・・・ エイハブ、パイプの煙に腹を立てて、パイプを海に投げ捨てる。

第31章「夢魔(クイーン・マブ)」 ・・・ スタブがフラスクに夢の話をする。

第32章「鯨学」(鯨学) ・・・ 鯨とは「汐を噴き水平の尾を持つ魚」。文献と分類について。

第33章「銛打ち頭(スペックシンダー)」(捕鯨船) ・・・ 銛打ち頭の仕事。エイハブの暴君性について。

第34章「船長室の食卓」(捕鯨船) ・・・ 船長と航海士、つづいて銛打ちが食事。他は別の部屋で。エイハブは「異邦人」。

第35章「檣頭(マスト・ヘッド)」(捕鯨船) ・・・ 檣頭勤務とその瞑想について。檣頭と覇王の類似。

第36章「後甲板」 ・・・ エイハブ、後甲板に一同を集め「白鯨、モービー・ディックを見つけたものにこれをやる」と16ドル金貨をマストに打ち付ける。魚への復讐にスターバック、憂いに包まれる。船倉から低い笑い声。航海士と銛打ちを集め、彼らの握った槍を交差させて誓いの儀式。一堂に酒をふるまう。

第37章「日没」 ・・・ エイハブの独白。「大いなる神よ、おぬしらよりもおれが上だ。」

第38章「たそがれ」 ・・・ スターバックの独白。「俺の魂は組み敷かれた。」「俺の心に残っている人間らしい温かい感情で、おれはお前(人生)と闘うぞ。」

第39章「初当直」 ・・・ スタブの独白。「どういうことになるかわからんが、おいらは笑いのめすばかりよ。」

第40章「真夜中、前甲板」 ・・・ 銛打ちと水夫の酒盛り。喧嘩になるところを嵐が近づいてうやむやに。

第41章「モービー・ディック」 ・・・ 捕鯨船乗りに伝わる白鯨の噂。白鯨は神出鬼没、目立つ姿形なのに容易に見つからず、狂暴凶悪。不死身であるとも。エイハブの足を失った前回の航海について。エイハブの狂気と憤怒の原因の考察。

第42章「鯨の白さ」(鯨学) ・・・ 白の象徴。神聖と清浄、気品と威厳。恐怖と鬼気、死者と悲傷。「白色の経帷子」としての白鯨。

第43章「聞け」 ・・・ 後部船倉に誰かいる?

第44章「海図」 ・・・ 深夜にエイハブは海図を見て、白鯨との邂逅を夢想する。

第45章「宣誓書」(鯨学) ・・・ 抹香鯨の生態。世界の海を回遊し、そのルートは決まっている。ときに狂暴であり、捕鯨船員の心胆を寒からしめたものも枚挙にいとまはない。

第46章「エイハブの推測」 ・・・ エイハブ、この航海のリスクを検討する。一等航海士スターバックが白鯨復讐というミッションに同意していないこと、水夫が気まぐれでプロジェクトの途中で反乱を起こしかねないこと。彼らを通常業務で忙しくし、プロジェクトに疑念を抱かせる時間を持たせないことで対応することにする。

第47章「索畳づくり」 ・・・ 索畳(なわだたみ)作りのさなかに、タシュテグが抹香鯨を発見。

第48章「はじめてボートをおろす」 ・・・ 激しい時化のなか、4艘のボートが出る。エイハブのボートには見知らぬ5人の黄色い男(後甲板の船倉に隠れていた。出港前後の不思議な物音の主)がのる。クィークェグが銛を打つ。

第49章「ハイエナ」 ・・・ ボートから投げ出されずぶぬれになったイシュマエルは、これが捕鯨船の当り前であることを知る。クィークェグを公証人にして遺書を記し、気分が楽になる。

第50章「エイハブのボートと乗組員フェダラー」 ・・・ 通常船長は鯨取り用のボートには乗らぬものであるが、エイハブは予備ボートを改装し、専属の漕ぎ手(頭にターバンを巻いたフェダラーまで用意していた。

第51章「精霊の汐吹き」 ・・・ 大西洋を南下中。深夜に汐吹をみるが、なにもいない怪奇が数回起きる。喜望峰が近づいて、天候が悪化する。

第52章「あほうどり」 ・・・ 嵐の中「アルバトロス」号とすれ違う。ナンタケットに帰港するアルバトロス号とは通信できない。


2016/09/29 ハーマン・メルヴィル「白鯨 下」(新潮文庫)-ダイジェスト2 1850年 に続く。

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