このミステリは、中学生か高校生のときに図書館で借りて読んだ。なんだかよくわからなかった。よくわからなさは、クリスティ「復讐の女神」、P・D・ジェイムズ「女には向かない職業 」でもおなじだった。まあ、ミステリを読み始めたばかりの少年には、そんなもんでしょ。
「時は1757年の九月、雨のそぼ降るロンドンをひた走る一台の馬車の車中に、二人の男女。男は音に聞こえた刑吏のジェフリー・ウィン。女はモーティマー・ラルストン卿の姪、ペッグ。ジェフリーは依頼を受け、フランスへ家出したペッグを大冒険の末に連れ戻してきたところでした。口喧嘩が絶えない二人を乗せた馬車は、折しもロンドン橋へとさしかかり――巨匠カーがものした、剣とロマンス、殺人の謎と盛り沢山の内容の歴史ミステリです。本書には盲目の判事・フィールディングやローレンス・スターンなど実在の人物が脇役として登場。ロンドン橋の他にも蝋人形館や野外遊園地など、さまざまな名所を舞台にした活劇に華を添えます。」
(この引用も2008年4月にwebで見つけたものですが、今回はみつかりませんでした。)
1962年作。
歴史を舞台にしたミステリというよりも、ミステリの要素もある時代ものというところ。だから、この時代について知識を持っていないと、舞台や人物に感情移入するのが難しいことになる。この本を最初に読んだ頃に、ディケンズ「二都物語」、バロネス・オルツィ「紅はこべ」も読んだのだが、こちらもなんだかよくわかならかった。というわけで、これらの時代ものを読むときにはフランス革命前後の歴史知識をもっていたほうがいい。できれば、ロレンス・スターンやフィールディングなどの18世紀のイギリス文学も読んでいたほうがいい。夏目漱石の「文学評論」で補講しておくことも忘れずに。こうしておけば、より楽しむことができるだろう、かな。(ハードル高い? 苦笑)
とはいえ、若い男女のサスペンスロマンを楽しむには、ものたりないところがあって、それはユーモアかな。登場人物が真面目すぎるんだ。「パンチとジュディ」「赤い鎧戸の影で」などの同趣向の作品では、フェル博士のおかげで笑いがあった(笑いを取るのはロレンス・スターンだけで、登場が限られているからなあ、もったいない)。それにヒロインにもかわいらしいところがあった。でもペッグのエキセントリックな性格を包容できる甲斐性はないなあ。
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