odd_hatchの読書ノート

エントリーは2400を超えているので、記事一覧よりもカテゴリー「INDEX」をご覧ください。2020/10/13

門茂男「力道山の真実」「馬場・猪木の真実」「群狼たちの真実」(角川文庫)

 すでに品切れで店頭に並んでいない本。「力道山の真実」「馬場・猪木の真実」「群狼たちの真実」の3巻からなる。著者は、日本プロレス創生期(1954年)の東京スポーツ記者で、試合・選手・興行に深くかかわった人。1970年代初頭に全日本プロレス(馬場)・新日本プロレス(猪木)が相次いで設立されたころ、全国のプロモーターを束ねるユニオンを設立し、事務局長になっている。ユニオンの存在はこの著者以外の本や雑誌では聞いたことがない。1980年代後半の第2次UWF設立後、プロレス興行の形態が変わったので(端的には地域のプロモーターから広告代理店へ)、そのような存在がなくなっていったのだろう。
 一種のプロレス内幕暴露本である。この種のものは定期的にマスコミに登場してきた。最近の元新日本レフリー・ミスター高橋のものから、1980年代半ばのタイガーマスクの「ケーフェイ」など。この著者のものはそのはしりということになるだろう。選手や試合に関するスキャンダルは、すでに聞いていることばかりであるので、その面での新味はない(この本を読む前に知っていたスキャンダル・内幕暴露のかなりのネタはこの本であるのだろう)。とはいえ、芳の里遠藤幸吉豊登駿河海、東富士というような黎明期に活躍した物故者レスラーの話を今から読むのはなかなか大変だろう。登場するレスラーのうち、存命者は、アントニオ猪木坂口征二くらいか。
 むしろ興行に関する問題の方が面白く、古くはグレート東郷力道山のファイトマネーピンはねであり、暴力団との癒着であった。そのような不正や腐敗は正されねばならず、おそらく著書が書かれてからの数十年で正しいやり方に変わってきたのであると思いたい。もちろんダフ屋の存在やチケットの高額転売はいままでの組織的なものから素人参加型に変わってきていて、完全になくなったわけではない。
 気がついたのは、このような不正や腐敗の内幕暴露があっても、ジャンルとしてのプロレスはなくならないということだ。なにかの「ファン」であることはこのようなスキャンダルがあろうと「ファン」であることを続ける熱意があるものだ。とりわけ権威がないようなジャンルでは熱意はとても高くなる。誰かがいったことの誤った引用をすれば、プロレスファンはだまされていることにだまされたふりをしながらだましかえしているのだ。こういう複雑な感情を持っているファンやマニアは、この著者の本を読んでプロレスから離れることはなく、さらに熱意をもってこのジャンルの奥深くに分け入っていくのである。

    

 というようなことをまだ週刊プロレスを毎週買っていた2003年には考えていた。それから8年後の2011年となると、もう最新のプロレスに興味を起こすことがなくなってしまった。現役のレスラーをみると、みんな下手になったなあと思うし、興業の最初から最後まで一生懸命・まじめなので見るほうの根気が続かない(途中に箸休め的な気軽で短い試合、そう晩年のグレート東郷とか悪役商会とかフロリダ・ブラザーズとかホーンスワングルとかの試合はあったほうがいいんだ)とか。ますます精神や好奇心が硬直化してきたかな。機会があればみるのは、WWFくらい。これはDVDが50セットを超えてしまった。ライバルのTNAのDVDも15枚くらいになっている。