年俸制や業績給、専門職制や契約雇用制等の導入により、日本型雇用システムは「市場指向型」「流動型」へと本当に変化していくのか。 著者は、アメリカ、ドイツのモデルとの比較を通して、日本独自の能力主義である職能システムを核とする日本型システムは、情報・金融産業が経済の主導権を握る現在においても、その優位性を失っていないことを論証する。
日本の雇用をどう守るか | 宮本光晴著 | 書籍 | PHP研究所
本書の構成は以下の通り。
●序章「「雇用危機」の正体」
●第1章「雇用システムの構造と機能」
●第2章「「市場型」システムとは何か」
●第3章「日本型能力主義?職能資格制度」
●第4章「日本型システムの高パフォーマンス」
●第5章「機能低下はなぜ起こったのか」
●第6章「内部労働市場と職業別労働市場」
●第7章「日本の雇用はどこへ向かうのか」 戦後最悪の失業率という危機的状況の背後にひそむ問題の本質を見抜き、雇用を守るために真に必要な「漸進的」改革と選択を問う。」
雇用問題といったときに、どういう考え方のフレームを作るのかというところで参考になった。
2日間で内容を忘れつつあるので、いくつかの指摘を貼っておく。
・労働環境には、内部労働環境と外部労働環境がある。(内部は雇用後の企業内で行われることで、外部は失業中や学校などの企業以外の就業準備のこと)
・労働者を雇用した後、生産性をあげるための教育が必要になる。
・どこで労働者教育が行われるかは、国によってさまざま。アメリカや日本は内部労働で、ドイツは外部労働で。
・労働者の生産性の向上とインセンティブのために、社内システムで日本とアメリカは異なる。日本は「職能」、アメリカは「職務」。
・日本では内部昇進や転属などを行うことで、OJT型の教育を行う。アメリカは原則として経験蓄積による内部昇進はないので、外部の教育をうけ資格を持つことにより同じ業界の別の企業に転職することで昇給の実現を目指す。
・日本の雇用状況は、バブル経済以後に大幅に変わっている。しかし、単純にアメリカモデルに移行すればOKというわけではない。雇用の流動性が上がったとしても、労働者教育はどこかで行わなければならない。そこをどこが担当するのか(ドイツ型の仕組みにはなれないだろう。それこそ日本の経済の歴史があるから)。失業者対策のために、「基金訓練」という制度がある。この職業訓練および就業支援を行うと、事業主と生徒に補助金が出るようになっている。すこし調べたことがあるけど、問題はいろいろあるなあ。
・コストを下げるために、業務の効率化を達成すると、雇用は減ることになる。