odd_hatchの読書ノート

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岩井克人「会社はこれからどうなるか」(平凡社)

 まとめと自分の感想をごっちゃに。
・法人の定義について、名目説と実在説の2つがある。前者は会社の株主主権論の根拠になっている。
・しかし、法人には、モノがヒトを管理する状態とヒトがモノを管理する状態が同時にあって、単純に名目か実在かに二分されない。どちらも正しい。そして、アメリカの会社は名目説を強調するような組織と法体系になっていて、また日本では実在説を強調するような組織と法体系になっている。
・日本の会社の特徴は、江戸時代ころの「家」概念や、共同所有の概念の延長上にあった。戦後アメリカ占領時に会社の形態とアメリカ型にする運動があったが、不徹底になって、日本的な会社(仲間内資本主義といわれるようなものかな、しかしそれは中国や韓国、イタリアに見られるような血縁を重視したものではない)になった。
・その特徴が、終身雇用、年功序列型賃金、職能型会社内教育体系、組織依存の知識習得など。これは、1980年代に注目された。これらの特徴は、資本を生産資本に投下し大量生産を行う産業資本主義を発達させるのに、目覚ましい成果を上げた。
・また、戦後の高度経済成長を支えたのは、農村の過剰労働人口を工業が接収していくことにあり、農村の過剰人口がなくなった1960年代末で経済成長が終了した。今までは1973年のオイルショックに端を発すると考えられてきたが、そうではないといわれるようになった。
・かつては生産資産に資本を投下すれば利益を出すことができたが、価格や労働力の差異化ができないような状態になった(いわゆるグローバル化)。そのため、会社の生産性は情報の差異化に依存するようになった。その変化の過程で要請されているのが、IT革命、金融ビッグバン、グローバル化経済など。これは、会社名目説による株主主権の経営によって推進、強化されている。しかし、このような経営の正しさは経営者の倫理に依存するようで、株主の強烈なプレッシャーのもとで、不正を働く例が発生している。それを止めるルールや組織形態をもっていない。
・日本の会社は、このような変化に対応できていない。それが1990年からの「失われた10年」の状態。
・しかし著者は今後の状況には楽観的。日本の実在説に基づく会社の形態であれば、経営と労働が同じビジョンを共有することによって不正が行えない状態を作り出しえる。組織依存型の知識が、情報の差異化を生みだす源泉になりうる(たとえば「カンバン方式」みたいな、モノではない価値の創造など)。
・その一方で、会社の寿命はあるから、新陳代謝がどんどん行われるべき。このところ日本のサラリーマンの起業が減っているのは残念。起業で成功するのは、30-40代、企業の勤務経験が20年以上、企業時の自己投資が3千万円以上、らしい。ということは、20代で会社に入社するというのは、20年後の起業を目指して知識、経験、人的ネットワークを作るため、ということに変わるだろう(アメリカだとそれがMBAになっている)。