odd_hatchの読書ノート

エントリーは2400を超えているので、記事一覧よりもカテゴリー「INDEX」をご覧ください。2020/10/13

クラシック・セサミ・ストリート

 PDFの自炊を進めることによって、面白いものを発見することがある。その面白さは自分だけのものなのだが、その当時の気分を含めて記憶を掘り起こしてみよう。とはいえ、倉のあるような旧家ではないし、両親は本とは無縁の生活(なにしろ父は斜陽産業の一サラリーマンで、子供3人に祖母を養っていたのだ)なので、高額な値のつくお宝などはないので、そこはご了解のほど。

 セサミ・ストリートは自分の記憶によると、アメリカの放送は1968年から。たぶんその数年後にはNHKが番組を買い取って放送を開始していた。毎週土曜日の夕方午後4時と日曜日の午後7時に再放送。夏休みや春休みになると、平日の朝9時からと午後2時から。そして土曜日と日曜日はいつもと同じスケジュールで。
 もともとは幼児から児童(および移民者)の基礎教育のための番組であったが、この国では中学生の英語教育のために使われたのだった。そのために、放送時には吹き替えも字幕もなく、本国の放送そのままだった。それでは内容がわからないから、というのか、毎月番組のスクリプトを英語と翻訳で紹介するテキストが販売されていた。今回見つけたのは、そのテキストで1973年の5月から11月まで。上記のように夏休みや春休みは放送回数が増えるので、その月のテキストはいつもよりも分厚い。平常月は100ページ150円で、7月8月は180-200ページ270円。8月は前期後期の2冊が発行された。当時のガキにはなかなかふところに痛い値段だった。
 さて、そのようにして自分はセサミ・ストリートを見たのである。どこに興味を持ったのか。たぶん言葉のギャグ(アメリカン・ジョーク)の楽しさ、そしてポップやロックの音楽だな。Classic Sesame Street songで検索すると、Youtubeでいろいろみつけることができる。リンクをはったので、40代以上なら懐かしいのじゃないかしら。

 というわけで、テキストの表紙を紹介しよう。キャラクターの名前がわかるかな。

 左からビッグ・バード(カーミット・ザ・フロッグとならんで別番組にもでられる稀有なキャラクタだな)、名無しのセールスマン(アーニーに5ニコルズ(ニッケル)で「7」とか「B」とかを売りつけようとするが、いつもアーニーにやり込められる)、ご存知アーニーとバート(二人の笑い声を真似したことのある人、手を上げて)、ヘリーモンスター(クッキーモンスターと掛け合いをする)、フランクリン・ルーズベルト(駄々っ子だったな 追記。姓と名が逆だったかもしれない。この子の母の声をスーザンが担当していたので、時に混乱したなあ)、最後にゴードン(たぶん)。

 セサミ・ストリートの特長はマイノリティがその町に自然に生きていること。黒人夫婦(ゴードンとスーザン)が主人公で、白人のボブがいて、ユダヤ人のミスター・フーパーがいて、ヒスパニックのルイスとマリアがいる。子供たちも同じくらい多様な肌の色。僕らガキはアメリカの人種差別の存在など知らなかったので、TVの画面が現にある「自然」なものだと思ったのだった。のちに年をとって、アメリカといえどもセサミ・ストリートをそのまま映した現実の場所などないことを知ったのではあったのだけど、あの風景はよいと思った。


 もうひとつ。番組のなかでさかんに教えていたのは「cooperetion(コワープレーション)」。協力しよう、協力すれば問題は解決するよ、ということ。問題(公務員ストでゴミが町中にあるとか、街の選挙があるとか)がおこると、それぞれ意見は異にしていても、どこかで現実的な解決点を見つけましょう。そのとき、個人的な感情はとりあえず脇にしておいて、みんなが一致できる具体的なアクションをみつけましょう。一致したらそれぞれ分担して、ことにあたりましょう。そんなことが頻繁に描かれていた。
 この国の有様と比較すると、この国の番組では「なかよし」「ともだち」になることが重要なメッセージ。そういう協調関係が必要といわれるけど、そのグループでなにをするのかとかどういう問題を解決するのかは不問に付される。もしもそういう問題が起きたときは、「ねえ、誰か、助けて」となり、運よく母や先生やときには黄門様がやってきて、こうしなさい、ああしなさい、わたしにまかせなさい、となって、彼らの活躍の様子を見守り、後を見送ることになる(ときに尻拭いが残されるのだが、そのことに文句は言わない)。このあたりの違いが面白かったな。
 セサミ・ストリートには、大統領とか州知事とか市長なんてでてこない(最近のは知らないので過去形にしたほうがよいか)。大人たちだって、問題を解決する方法をもっているわけではなくて、討論しながら解決策を見つけていくのだった(そういうのは西部劇映画でよく見ることができる。アメリカの大事にしている草の根民主主義のモデルなのだろう)。


 あと、子供の代理として、マペットたちが出てきて、いろいろいたずらやら現実性のないアイデアをだすことがある。このとき、大人は怒るのではなくて、こうしたら、ああしたら、とコーチングとカウンセリングをする。そうすると、マペットたちは自分で、じゃあこうする、自分はこう判断すると意見を交わし、行動に移す。
 くどいけどこの国の番組だと、あなたは××だからこうしなさい、みんなが○○だからあれしちゃだめ、と大人は言うのだよな。判断は大人がして、幼児はそれに従順であることが要請される。たしかにコーチングは時間や手間がかかるから、こうしろ、あれはだめと命令するほうが親や教師にとっては楽チンだと思う。
 ここからアメリカとこの国の民主主義の違いとか、幼児番組の違いとか、いろいろ比較研究ができそうだが、ここでは「独自研究」のおそれがあるので省略。個人的な思い出の枠の中でいえば、幼児から生徒、学生まではたしかにこの国のように指導者とか教師のいうことを従順に聞いているほうが楽。でも、企業に勤めるようになると、自分で考えろとか自分で目標を設定し成果を自己評価しろとか、それまで教わったことを逆の行動を取れという指示になり大いに戸惑うことになった。あんまり戸惑い過ぎて、薬を手放せなくなってしまった。そういう体験をしたので、企業や自治体などで求められる行動規範とか様式は幼児のころから体験・学習しておいたほうが結局あとで得になるだろうと思う。


 以下1970年代のセサミ・ストリートのなつかしい歌の数々。
Sesame Street - People in Your Neighborhood ('77)
www.youtube.com



Classic Sesame Street - "Inch Worm"
www.youtube.com
※ ダニー・ケイ主演のミュージカル映画アンデルセン物語」から。
www.youtube.com


Manamana (Mahna Mahna) Sesame Street
www.youtube.com

「マナマナ」の情報を引用させていただきます。いやあ、知りませんでした。セサミストリートの「マナマナ」はいくつかのバージョンがありますが、自分は最初期のもの(上)が好き。

「マナマナ」は「セサミストリート」から生まれた名曲とよく紹介されるのですが、本当は1968年のイタリアのドキュメンタリー映画「天国か地獄か」のサウンドトラックから拝借したもので、作曲者はピエロ・ウミリアーニです。同映画の内容は、スウェーデンのフリーセックスの性文化に焦点をあてたものなので、それが子供向け番組の名曲になってしまったのですから、おかしな話ですね。ピエロ・ウミリアーニの映画音楽を、ナンセンス曲“マナマナ”(Mais Non, Mais Non)に変えてしまったのはフランスの歌手のアンリ・サルヴァドール。それを1969年にマペットたちに歌わせて、アメリカに紹介したのは「エド・サリバン・ショー」であって、「セサミストリート」ではありませんでした。けれど、“マナマナ”が楽しくて好評だったので、「セサミストリート」で流用したということですしょうかね。
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マナ・マナ/デイヴ・ペル・シンガーズ MAH-NA-MAH-NA/Dave Pell
www.youtube.com


Sesame Street - I Whistle A Happy Tune
www.youtube.com

※ ユル・ブリンナー主演のミュージカル映画王様と私」から。
www.youtube.com


Classic Sesame Street - Octopus's Garden
www.youtube.com
※ ご存じビートルズの名曲をカバー
www.youtube.com


Sesame Street - The 'O' Song
www.youtube.com
※ オリジナル


Sesame Street - Spinning Wheel
www.youtube.com
※ Blood, Sweat & Tearsの名曲をマペットたちが演奏。冒頭から2分半ほど映像無し(残念)。バイシクル・ホーンのミスター・ヘイスチング(左:すぐに寝てしまう間抜けな教授)はバートの声、カウベル担当(右)はオスカーの声、ドラマー(奥)は会話の間はアーニーの声(歌になってからは別人)、インタビューアーはゴードン。声だけ聴いていると、何の場面かわからない。
Blood Sweat & Tears - Spinning wheel
www.youtube.com



<2014/1/9追加>
 ネットを漂っていたら面白い記事があったので紹介。
今なら子供には見せられないセサミストリートの有名10シーン
 ああ、なつかしい。半分くらいはリアルタイムでみたことがある。捏造した記憶かもしれないけど。「今なら子供には見せられない」かは判断しません。

<2019/12/9 追記>
ビッグバードに扮して50年 人形遣いのスピニー氏死去
ニューヨーク=鵜飼啓 2019年12月9日06時45分
「世界中で人気の子ども向け番組「セサミストリート」の人気キャラクター、ビッグバードに長年扮した人形遣いのキャロル・スピニーさんが8日、米コネティカット州の自宅で死去した。85歳だった。筋肉の動きに異常が出るジストニアに苦しんでいたという。/ 番組を制作し、セサミストリートなどを通じて教育支援を行うNPO「セサミワークショップ」が明らかにした。/ スピニーさんは1969年の番組開始時からビッグバード役を務めた。ビッグバードは身長が250センチほどあり、スピニーさんは当初は中に入って操るのに苦労したというが、キャラクターはすぐに子どもたちの人気者になった。スピニーさんはほかに、ゴミ缶の中に住むキャラクター、オスカーも操った。」
www.asahi.com