odd_hatchの読書ノート

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ジョン・ガルブレイス「満足の文化」(新潮文庫)

 著者の言によると、20世紀後半になると、19世紀に想定されていたような階級は姿を消した。ブルジョアとプロレタリアという階級の二分はありえない(あれ、ここには農・魚民などの1次産業の従事者と官僚の存在が無視されている)。
 かわりに生まれたのが、個人資産を多く持つものとそうではないもののあらたな区分。好きな言葉ではないが、「勝ち組」と「負け組」にだいたい対応するのかな。
 いわゆる勝ち組をその言葉が生まれる前に分析したのが、この本。だいたい1990年のバブル直後に書かれている。「勝ち組」と規定する概念として、著者は「満足の文化」を提唱する。問題は、「満足の文化」の側に立つものは、政治運営に強く働きかけ、自分らの利益を保持できるように要求する。その圧力は強く、政権党の施策を変更させることもある。特徴は、
・短期の、目先の利益を重視する。
・インフレーションと失業が現れたとき、インフレーションを選択する。自分が失業することは予想していないから、失業者に対する共感はない(いわゆる「貧困は自己責任」という言説)。
・自分の資産を減らす政策(増税社会福祉、セイフティネットなど)に反対する。
橘木俊詔「企業福祉の終焉」(中公新書) - odd_hatchの読書ノート
・しかし、国家の防衛機能の強化に賛成する。(軍備は彼らを保護するものとして期待されているため。また彼らの経済政策を他国に押し付けるときの脅しの役割を期待しているため。)
・政策策定にあたり、議員・政府に強い影響力を持つ。
・政策のスローガンは生産の拡大を実行すること。消費(者および消費されたあとの廃棄物)には興味を持たない
・彼らはさまざまな特権を持っている(教育、資産、技術など)が、そのことを意識していない。それらが不足して貧困にあるものを糾弾する。
 こういう職種にとらわれない階層(階級ではない)が、1980年代以降の「レッセ・フェール」政策を支持し、福祉の削減を推進する役割を担っている。そして、政党や国家は彼らを無視できないので、どの政党(念頭にあるのはアメリカの民主党共和党か)が政権を担当しても、同じような政策を取ることになる。構造改革を妨げる反対勢力となっている。
(この本の40年前に書かれ、その後改訂を繰り返した「ゆたかな社会」と主題は共通している。「ゆたかな社会」では国家や企業が分析対象であったが、「満足の文化」では資産階級(むしろカレル・ヴァン・ウォルフレン「日本/権力構造の謎」の<システム>構成者と見たほうがよいか。官僚エリートもふくまれるのだし)を分析対象にしている。)

2012/12/21 参考リンクを張った。