odd_hatchの読書ノート

エントリーは3000を超えているので、記事一覧よりもカテゴリー「INDEX」をご覧ください。2023/9/21

山田風太郎「くノ一忍法帖」(角川文庫) 大阪夏の陣を逃れた千姫を守る女忍者と服部半蔵らによる夜と闇に紛れた暗闘と蒲団の上の死闘。

 夏の陣で千姫は亡くなっていないという奇想からさらに想像力(というより妄想力)をたくましくしていき、そこに実在の人物のさもありそうな思惑を加えていく。大阪夏の陣で五人の女忍者が千姫を連れて逃げ出し、千姫のおなかには秀頼の子供が宿っている。その情報を知った家康は豊臣家再興の企図を打ち砕くために服部半蔵に命じ、彼らの暗殺を謀る。一方、女忍者はこれを防ぐとともに、家康の命を狙う算段をつける。主題になるのは、エロスとグロテスク。女忍者はいずれも容姿端麗、知略とベッドマナーに優れていて、伊賀忍者は異形の身体・相貌の持ち主で、こちらは身体能力に勝る。彼らの夜と闇に紛れた暗闘と蒲団の上の死闘とが交互にあらわれて、ページをめくる手が止まらない。歴史改変小説ではないので、小事件では女忍者が勝利を遂げても、史実の通りに彼女らは追い詰められていく。そこにいくばくかの悲しみと寂しさを見出していくことになる。
 忍者小説は、立川文庫の昔(1911年(明治44年)から1924年大正13年)まで出版)からあって、猿飛佐助に真田十勇士などはたいていの人が知っていた。邦画では黎明期から忍者はトリック撮影に都合がよいのでよく作られたし(それこそ目玉の松ちゃんのころから)、TV黎明期にも忍者ものが作られて(自分には「忍者部隊月光」とか「風のフジ丸」「サスケ」がなつかしい)、人気を博した。そのような系譜の中で、山田風太郎のは奇想天外さと爽快さで人気があったのだった。最近でも忍者ものアニメがいくつかあるようだから、興味があれば元祖のこちらを古本屋を探してみたら。

 10代の水野美紀をみたくて(「ガメラ2」でファンになった)、1990年ころに制作された「くノ一忍法帖」のDVDを購入。この小説が、DVD通りの筋で進んでいくのに驚愕(当然のことなのだがね)。

 ただ、小説では最後に大女が出てくるけど、Vシネでは出てこない。そうだよな、そんな俳優はいないし。女子プロレス団体に頼んで、デビル雅美ブル中野選手に登場してもらったらよかったのに。ところで、この時代のVシネには新日本プロレスの選手がよく登場していたなあ。グレート・ムタとか藤原喜明とか馳浩とか。別団体では佐山聡とか石川雄規とか。佐竹雅昭もか。と興味のない人には全く無駄な知識を披露しておく。あとAVでは「くノ一」というジャンルが確立されているのだね。驚きました。