odd_hatchの読書ノート

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アンドレ・ゴルツ「エコロジスト宣言」(技術と人間社)

 タイトルからすると、博物学者か有機農業を行うコミューン生活者を志すように思える。この本が出版されたのは1975年ころ(翻訳は1982年)であるので、反=資本主義的な生き方が志向され、このような隠遁的な生活スタイルが試みられたものだ。そういう印象をずっと持っていたと思う。購入後、20年以上未読にしていた理由のひとつがそのあたりにありそうだ。
 実際に読んでみると、ここに書かれている主張は1990年以後に目立つようになる「第三の道」を目指すものであった。著者はドイツ生まれでフランスで活躍していた人。当時、世界を改革、生活を変革したいと考えるとき、それを根拠付ける思想はマルクス主義しかなかったので、ここに収録された論文の多くはマルクス主義の影響を大きく受けている。それは時代に制約されたものであるとしても、著者の志向は国家権力の奪取にあるのではなくて、高度成長的な経済から開放されること、労働と生活が楽しく生き生きとしたものであることを目指すことにあるので、マルクス云々というところはそれほどない。せいぜいのところ、社会や生活の変革主体として労働組合に期待しているくらいのところ。
 市場主義でも社会民主主義でもない別の道を模索しているものからみると、多くの論点はすでに1970年代にそろっていたことに驚く。ただ、高度経済成長を続け、同時に共産主義国家が存立していた時代には、この主張を受け取るものは少なかった。
 1980年代になって、ドイツ「緑の党」ができるなど、状況は変わってきていて、その大元がわかる本ということで貴重。もちろん現在のわれわれにも通じるところがある(一方で、捨てなければならないものもあるので、その意味では「古典」だ)。1980年の雑誌クライシスにこの本の紹介があって、エコロジーマルクス主義の融合に成功していないと書いてあった。今となると、マルクス主義と融合していないからこそ、この本が「古典」であるということができる。実際、マルクス主義者の中の経済成長を優先する考えのものは、この本のような定常経済をダメといって、公害運動に反対する一派もあったそうだ。

 急遽追記。もとは技術と人間社が出版していたが、出版社を変えて再販された。まあ、読者の要望に促されてのことだろうが、自分はこの本から「運動」とか「活動」のヒントを得るのはよくないと思う。