odd_hatchの読書ノート

エントリーは2400を超えているので、記事一覧よりもカテゴリー「INDEX」をご覧ください。2020/10/13

郡司泰史「シラクのフランス」(岩波新書)

 清水弟「フランスの憂鬱」(岩波新書)の続き。1995年にシラクが大統領になってからのおよそ10年。

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 ミッテラン社会党政権末期には汚職が横行していて議員や大臣にもあったのがわかった。またミッテランの14年の統治に飽きがあった。そこで、ドゴール派のシラクが大統領選で勝利する。いきなり公務員ストが全国に広がり譲歩せざるをえなくなるなど前途多難。そのうえ、2002年の大統領選では、決選投票になんと極右のルペンが選出される事態になる(二次選挙でシラク勝利)。シラクの経済政策は財政赤字削減優先で、失業問題を後回しにしたのが、国民の反感を買ったと思われる。90年代の好景気でシラクの時代に失業率がかなり減った。
 この時期には、EU統合とユーロの使用開始があった(のだが、本書ではほとんど触れられない)。むしろ2003年のイラク戦争での外交に注視。すなわちユーゴ内戦や湾岸戦争では西洋諸国は参戦したのであるが、2001年911後のイラク戦争ではアメリカの参戦に対し、フランスは武力行使抑制-外交による解決を目指した。そこには普遍的な人権意識もあるだろうが、防衛出動を認めると、アジアや中東の防衛名目の戦争に反対できなくなるという現実的な課題があった。
 章立ては以下の通り。
第1章 一九九五年、反乱の冬/ 第2章 地下四五〇メートルの孤独/ 第3章 さまよえるエリートたち/ 第4章 一九九七年、制裁の夏/ 第5章 国家の右手、国家の左手/ 第6章 ルペンのフランス/ 第7章 凡庸な男の特別な犯罪/ 第8章 アメリカ・コンプレックス/ 終章 変わる国、変わる人
 トピック。フランスは強いエリート主義。官僚や経営者のトップはたいていエリート校出身。一方社会主義や労組が強く、かつデモやストライキを辞さない市民なので、エリート統治に対して対抗する軸がある。社会主義政党には1968年世代が多数いる(日本では少数)。ここらへんは政治と公的自由に対する日仏の違いが如実に現れている。フランスは20世紀に二度侵略されアメリカに解放してもらった。1941-45年のナチス占領期はトラウマ的なできごと。なので、アメリカ独立時の思想がフランス由来なのも含めて、アメリカには複雑な感情をもっている。
 著者は政治と政治家をみることに熱心なので、経済の話がない。なので、中身は皮相的。政治哲学とからめる理屈っぽいのを読みたかった。