odd_hatchの読書ノート

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村瀬興雄「世界の歴史15 ファシズムと第二次大戦」(中公文庫)-2

2021/02/02 村瀬興雄「世界の歴史15 ファシズムと第二次大戦」(中公文庫)-1 の続き。

 

 日本は1930年代から一種の鎖国をするようになり、権力の情報統制があったので、諸外国の実情はわからないようになっていた。敗戦とスターリンの死によって、ふたつの巨大な全体主義国家のヘイトクライムとジェノサイドの実情が知られるようになる。本書は1960年代に書かれたので、当時の最新の知見が集められている。ナチスドイツのジェノサイドとソ連の大粛清はあまりに規模が大きすぎて、情報を整理するのが精いっぱいという印象。それでも、イギリス、フランス、イタリア、旧オーストリア=ハンガリー帝国、ソ連アメリカ、中国のこの時代がまとめられて書かれているので、とても勉強になった。

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 各国史も面白いが、ここでは以下の二点に注目。
 1941年のルーズベルト大統領が年頭調書をだし、4つの自由を打ち立てることを主張する。4つの自由とは、言論と表現の自由、みずからのしかたで神を敬う自由、欠乏からの自由(国家はその住民に対し健全な平和生活を送ることを保障する)、恐怖からの自由(軍縮の実行と実力行使による侵略を行わない)。さらに同年8月にルーズベルトチャーチルが会談して、大西洋憲章を発表する。戦争目的と戦後処理の方針を定めたもの。ここにある構想がヤルタ会談からポツダム宣言まで継承され、日本やドイツの占領政策に反映される。さらには国際連合や安全保障機構などの戦後体制にまで続く。この構想が二人だけの創意ではないにしろ、孤立主義や経済ブロック圏などの戦間期の政治を反省したリベラリズムを実現するものになった。ここには瞠目。
アメリカが「デモクラシーの<帝国>」になっているのを了解したうえで、それでもなお普遍的な正義の実現をめざしているところを評価する。)
 もうひとつは1940年代に日本の占領地になった東南アジア諸国の動き。インド、インドネシアビルマなど。ほかに中国、台湾など。これらの国々は長らくヨーロッパの植民地になっていた。インドなどは世界大戦が起きるたびに徴兵してイギリス軍に編入された経験がある。日本の占領は当初は受け入れられたものの、占領政策ヘイトクライムが日本に対する幻滅になり、日本からの独立をめざす運動を起こさせる。日本の敗戦後も独立運動、戦争は継続し、独立を獲得する。とてもではないが、日本が諸国の独立に貢献したとは言えない。(それはインドの独立運動ガンジーらとは別に組織したチャンドラ・ボーズに対しても。彼は運動のために日本やナチスを利用する機会主義者。彼が日本の支援をあてにしたとしても、インドの独立に日本は無関係)
 資本主義社会のファシズム大国はWWIIで壊滅する。しかし、新たな独立国家では開発独裁官僚独裁国家が生まれ、民衆を抑圧し搾取する仕組みができる。共産主義全体主義国家は周辺の国々まで、監視と統制を強化する。それとの闘いは日本の敗戦後も続く。
 また、敗北した日本の官僚独裁全体主義はその後も温存される。