odd_hatchの読書ノート

エントリーは2600を超えているので、記事一覧よりもカテゴリー「INDEX」をご覧ください。2021/9/25

都筑道夫「ドラマ・ランド」(徳間文庫)

 都筑道夫の作品は映像化されているものがそれなりにあって、長編で映画化されたのは「なめくじに聞いてみろ」「三重露出」「紙の罠」など。TVドラマではなめくじ長屋あたり。ときにはオリジナル脚本を提供して「100発100中」「黄金の眼」になったり、TVドラマ「スパイキャッチャーJ3」を監修し、あるいは光瀬龍といっしょに「キャプテンウルトラ」を監修したりしている。これらの作品に関与していたことは最近まで知らなかった。
 ここには映画のシナリオにラジオドラマの台本、TV番組の企画書にしてシノプシスが収録。中身は以下の通り。

「パリから来た男」「ベイルートから来た男」 ・・・ インターポールの刑事とも個人の無頼漢ともわからないアンドリュー星野(たしか「未来警察殺人課」の主人公と同じ名前)が警察と一緒に国際スパイ組織と戦うストーリー。1960年代前半の作と思われ、なるほどこの種の荒唐無稽でわかりやすく楽しいコメディ・アクションはあの時代に量産されていた(自分は岡本喜八の暗黒街シリーズくらいしか知らないけど、CSでときおり放送されるね)のであった。その種のものでも、この国のような怨念とか情念のどろどろしたところでてくるものだが、センセーの手にかかるとすっきりして「007」とか「電撃フリント」みたいな洒脱なものになる。当時の岡本喜八組の俳優だったら、星野は加山雄三で、手塚刑事は中谷一郎で、女性陣は団令子に浜美枝水野久美で、敵役には中丸忠雄堺左千夫と藤村有弘と伊藤雄之助平田昭彦かな、などと彼らの顔を思い浮かべながら読んだ。

「秋には苦い夜もある」「口笛」「幽霊屋敷」 ・・・ ラジオ・シナリオ3本。上記の映画スクリプトがト書きで具体的な描写(情景だったりアクションだったりカメラアイだったり)をしっかり書き込んでいたのに対し、こちらはセリフとSEに指定だけ。極力描写を避け、会話だけでストーリーと雰囲気を演出する手腕はみごと。

「スパイキャッチャーJ3」 ・・・ 日本征服を企む組織〈タイガー〉と闘う“チューリップ”日本支部の活躍を描くTVドラマ。企画書なのでシノプシスのみ。会話がなくて、人物のアクションが語られるだけ。それでもなかなか読ませるよ。ちゃんとしたものを読むなら「暗殺教程」で。

 妄想を抱いた指導者がマッドサイエンティストと手を組んで世界征服をたくらむ。毎週、新兵器や怪人を登場させて日本転覆の陰謀を図る。それを察知して陰謀を未然に防いだり被害を最小限に抑える秘密組織と若きヒーロー。こういう設定は1960年代にたくさんあったなあ。もはやこういう陰謀団を想像できないし、正義に燃える若く熱いヒーローもいない(そういう主人公はギャグになるので:「ケロロ軍曹」のコゴロー。ヒーローは苦悩していなければならないので:スパイダーマン)。世の中がせちがらくなったし、携帯電話とインターネットはヒーローの特殊技術を不要にしている。そういう昔のヒーローものをみて楽しんできた一人であるので、最近の状況は残念(とはいえ、いまさらヒーローの活躍に手を汗握るほどの熱中はできないのだが)。なので、こういうレトロな小説やシノプシスがあるというのは自分にはありがたい。

    

<追記2015/8/23>
 とても遅ればせながら「パリから来た男」は、福田純監督「100発100中」のシナリオであることを知りました。

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