odd_hatchの読書ノート

エントリーは2400を超えているので、記事一覧よりもカテゴリー「INDEX」をご覧ください。2020/10/13

デヴィッド・ルードマン「エコ経済への改革戦略」(家の光協会)

 柄谷行人「世界共和国へ」は資本主義経済社会の行き詰まりを打開するための理念を示しているが、具体策には乏しい。それは読者個々人で現場を作ることになるのだが、どのような問題をどのように解決するのかということを具体例なしに個人で抱えるには大きすぎる。というわけで、経済学による検討が進んでいるらしいので、参考にすることにしよう。
 タイトルには「エコ経済」とあるが、これがどのような社会であるのか捉えにくいと思った。2000年直前に時期に、なにかのイメージを描こうということになると、それはユートピアになってしまうし、専門家向けに書かれているようだから共通理解になっていると判断したのか。本文から読み取るとすると、「自然環境破壊を抑える(もっと積極的な言い方になるかもしれない)」「持続可能な低成長ないし成長のない経済」「経済格差の是正」「たなぼた利益の排除」「ステークホルダーによる政策判断」などかな。そこからさらに落とし込んでいく作業は行っていない。
 代わりに
補助金の廃止(補助金は既存利益者にしか使われない、経済弱者の救済に役立たない、問題の解決(技術的、政治的)を阻害する)」、
「汚染者負担の税制(通常の税制では汚染被害者が負担することになる、経済弱者にとって逆累進課税になりがち、汚染行為の減少を見込む、克服技術に使いやすい)」、
たなぼた利益の排除(ステークホルダーでない機関が政策決定を行う、賄賂や権力行使によりステークホルダーでないものが利益を得る:ステークホルダーの貧困化や未来の人々の利益を先取りになる)」、
「よりマクロな経済分析(1工場・企業の汚染防止目的の投資はマイナスの効果になるが、近隣住民の健康良化をあわせるとプラスの効果になる)」などを提案している。
 基本的なところは、政府・国家による再配分を公正にしなさい、自然環境の保持に役立つように使いなさい、特定の受益者のためになるようにするとそれは自然の破壊と技術の停滞をもたらすよ、ということになるのだろう。すでに多く聞く機会のある意見ではあるのだが、こういうシンプルなことを達成することがもっとも難しいのであって、くどくなったとしても繰り返す以外のことはできない。
 このように落とし込み実現可能な提案があってももどかしく感じるのは、ここでの提案が国家政策に終始していることにあって、労働者や消費者の視点や超国家的な施策についてはほとんど触れていない。となると、個人的には汚染や大量消費に加担しないですむ生活を送りなさいということか。「汚染者負担の税制」からみると、最近の石油の値上がりはたいしたことには思えなくて(というより、自分が運転者であった1980年前後のガソリン代は150-160円/リットル、現在140円前後というのはまだ安い。80-90円/リットルだった2003年ころのほうが異常だ)、さらに車両税が加わって、自動車を保持し、運用することがさらに困難になるべきだと思うのだ。自動車がなければ不便でしかたがない場所や地方があるということには、公共交通機関の充実、内燃機関を用いない交通手段の日常使用、商圏や物流の見直しなどで対応するべきと考える。というよりほんの数十年前まで自動車を使わないで済む生活をしていたのだがなあ。

2018/11/13 柄谷行人「世界共和国へ」(岩波新書)-1 2006年
2018/11/12 柄谷行人「世界共和国へ」(岩波新書)-2 2006年