odd_hatchの読書ノート

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岩田規久男 「マクロ経済学を学ぶ」(ちくま新書)

 経済学のマクロ的側面は、国民総生産、国内総生産、雇用量、物価などの集計量。これらがどのようにして決定されるかを明らかにするのがマクロ経済学

第1章 国民総生産の決定 ・・・ 国民総生産GNPはある一定期間に国民が生産されたモノとサービスの合計額から中間投入を控除した付加価値の合計。国内総生産GDPは国民のかわりに国内が計算される。二つの差はこの国ではあまりない。最近はGDPを使うことが多い。物価の変動でGNPやGDPは変わるから、名目の集計値よりインフレを勘案した実質値で見るほうがよい。GNPもGDPも、総需要・雇用量・物価の変動を反映するから、まずこの数値で見るとよい。
第2章 景気の変動と雇用 ・・・ GNPやGDPの変化を景気と呼ぶが、景気は総需要で変動する。総需要の構成要素は民間消費と民間総投資、政府支出に分けられる。この中で景気の変動に大きいのは、民間総投資。ここには乗数効果・加速度効果がある。これにはマイナスの効果がでることもある(雇用量と賃金の減少、物価の低下など)。輸出−輸入の純輸出の持続的な増大も景気に反映する。このようなマクロ経済の不安定(とくに雇用量の減少と賃金の減少)は社会を不安定にする。例は昭和恐慌や世界大不況、ハイパーインフレーションなど。
第3章 不況と財政政策 ・・・ 不況は総需要の不足によっておこるを考えるのが、ケインズ経済学。それに基づくと、不況の対策は需要の創出が有効と考えられる。税や社会保障は景気を安定させる仕組み。ほかに財政支出を増やすのも布教には有効。そこには乗数効果も期待できる(変動相場制では効果が薄れるようになった)。ただ、議会の承認を得る必要があるから立案から実施までタイムラグが生じることがある。収入確保のために赤字国債を発行することがある。景気がよくなったら、すぐに償還したほうがよい(1980年代にそうしなかったのが、現在の財政赤字の原因のひとつ)。
第4章 金融と総需要 ・・・ 民間総投資は企業や事業者の将来予想で大きく左右される。それでも、在庫投資は短期予想実質金利に、設備投資は長期予想実質金利に連動する(低くなるほど投資が増える)。1990年代には長期、短期の金利が下がったが民間総投資は増えなかった。その理由はデフレにより実質金利が上昇したことと、急激な円高にあると考えられる。
第5章 貨幣と金利 ・・・ 流動性の高い貨幣と流動性の低い債券のいずれを所有するかは、長期債の金利と債権の価格で決まる(価格の安い債券は金利が高く、価格の高い債券は金利が低い)。将来受け取る貨幣量と現在の貨幣量を比較して債権の購入量が変化する。ここらは「金融入門」岩波新書と重複する内容。
第6章 金融政策とGNPと物価の変動 ・・・ ここも「金融入門」岩波新書と重複する内容。景気の安定には、貨幣供給の増加率を安定的に保ちながら、予想実質金利の自動調節機能を活用することが重要。
第7章 為替レートとマクロ経済 ・・・ ここは「国際金融入門」岩波新書と重複する内容。
第8章 経済成長の諸要因 ・・・ これまでは景気の安定のために総需要をみてきたが、経済成長は総供給の持続的な成長が必要である。それには、生産性の向上と技術革新、貯蓄が必要。生産性の向上には投資がいるが、生産性が上昇するまでは一時的に消費を抑えなければならない。それを補う貯蓄が必要。発展途上国が成功しない理由のひとつが国内貯蓄が乏しいこと。戦後日本の経済成長は、勤勉な労働者・革新的な企業家・貯蓄に励む大衆があったことによる。


 安定した記述に安心できる内容。初心者が経済学を読むときには、著者の名前で決めれば問題ないだろう。クルーグマンのいうように、間違った知識を述べる経済学者、経済評論家がたくさんいるから。
 これは勝手な願いで、この本など著者の啓蒙書がクルーグマンの文体で書かれていればなあ。もっとわかりやすくなるのに。そういう書き手が将来生まれることに期待。
 なお1996年初版なので、記載されている事例は古くなった。不良債権や銀行破たん、さまざまな金融自由化、リフレ論、諸国の通貨危機など、この後に起きたことは別の本で補完しておこう。