odd_hatchの読書ノート

エントリーは3000を超えているので、記事一覧よりもカテゴリー「INDEX」をご覧ください。2023/9/21

2019-04-01から1ヶ月間の記事一覧

福岡安則「在日韓国・朝鮮人」(中公新書) 日本人から見えないものとされた在日の意識。一枚岩ではなく、多様な考えをもっている。

1910年の韓国併合によって、日本は朝鮮人を「臣民」とした。併合にいたる経緯とその後の植民地政策は以下を参照。海野福寿「韓国併合」(岩波新書)高崎宗司「植民地朝鮮の日本」(岩波新書) 1945年夏のポツダム宣言受諾と無条件降伏は、この国には敗戦を、…

朴一「「在日コリアン」ってなんでんねん?」(講談社α新書)

チェスタトンの探偵小説では「見えない人間」というモチーフがある。20世紀前半のイギリスの階級社会では、その階級に属さない人間は「見えない」、存在を認識しないのだ。ラルフ・エリソンの「見えない人間」1952年の小説ではアフリカ系アメリカ人が見えな…

加藤直樹「NOヘイト! 出版の製造者責任を考える」(ころから)

書店の棚にヘイト本(とくに韓国・北朝鮮・中国への憎悪煽動をタイトルにした本)や「日本スゴイ本」がでるようになる。50代より上の男性が買っていたのが、若年層にも普及していて、いまや(2014年当時)不況の業界では売れ筋商品になっている。とはいえ、…

有田芳生「ヘイトスピーチとたたかう!――日本版排外主義批判」(岩波書店)

2013年の始めにある作家が投稿したツイートに、在特会のヘイトスピーチが載っていた。それに触発されて、日本のヘイトスピーチ問題にかかわっていくことになった国会議員による反差別の記録。出版された2013年は、在特会に代表されるレイシストの運動の最高…

神原元「ヘイト・スピーチに抗する人びと」(新日本出版社)

本書でヘイトスピーチや排外主義が強くなった経緯をまとめてみる。ほかの本でも取り上げられているが、自分の覚えていないことがあったので、再度。・1990年代のバックラッシュ。歴史修正主義がサブカルや漫画にでてくるようになった。村山政権時の慰安婦に…

安田浩一「ヘイトスピーチ」(文春新書) 21世紀10年代の排外主義と差別主義の「運動」。

この新書は2015年に出た。それ以前に、著者は2012年に「ネットと愛国」(講談社)を出していたので、2012年から15年までのできごとが追加されている。もちろん新書という形式であるので、「ネットと愛国」に登場した自称「愛国者」のインタビューや路上のヘ…

李信恵「#鶴橋安寧」(影書房)

タイトルの「#鶴橋安寧」はツイッターのハッシュタグ。鶴橋駅前でヘイト街宣が繰り返されていたころ、アンチレイシズムの抗議者が鶴橋付近を警戒しているとき、現状報告に使ったのだった。のちには、鶴橋周辺のグルメ案内にも使われたりする。 鶴橋周辺はオ…

野間易通「実録・レイシストをしばき隊」(河出書房新社)-1

「しばき隊」のことは、笠井潔/野間易通「3.11後の叛乱 反原連・しばき隊・SEALDs」(集英社新書)でも触れられていた。 笠井潔/野間易通「3.11後の叛乱 反原連・しばき隊・SEALDs」(集英社新書)-1 2016年 笠井潔/野間易通「3.11後の叛乱 反原…

野間易通「実録・レイシストをしばき隊」(河出書房新社)-2

2019/04/15 野間易通「実録・レイシストをしばき隊」(河出書房新社)-1 2018年の続き 後半では、広義のしばき隊が行うアンティレイシズムの論理と倫理が語られる。キーワードは「公正としての正義」「正義はだいたいでいい」「どっちもどっち論はだめ」。こ…

法学セミナー2018年2月号「ヘイトスピーチ/ヘイトクライム III」(日本評論社)

雑誌「法学セミナー」のヘイトスピーチ特集は2年ぶり3回目。前回では国内には法や条例はなかったが、2016年にHS解消法が、いくつかの自治体で条例が制定された。また、ヘイトクライムの裁判判決が確定したり、地裁などで被害者勝訴の判決が出たりした。行政…

木下ちがや「ポピュリズムと「民意」の政治学 3・11以後の民主主義」(大月書店)-1

1990年以降の政治をポピュリズムという概念を使って分析する。 「ポピュリズムとは、人びとが抱く感情にはたらきかけ、政治的シンボル(言葉やイメージ等)への支持/同一化を広範に喚起する政治」という齊藤純一の定義がわかりやすい。通常は、「一般大衆の…

木下ちがや「ポピュリズムと「民意」の政治学 3・11以後の民主主義」(大月書店)-2

後半は「2011.3.11」以降のできごと。本書の性格から外国の話題は少ししか触れていないが、2000年以降の大規模占拠などの民主化のポピュリズム運動も知っておいた方がよい。 第7章 二〇一五年七月一六日――「安保法制」は何をもたらしたか ・・・ 2015年の安…

ロバート・マキャモン INDEX

2021/10/20 ロバート・マキャモン「ナイトボート」(角川文庫) 1980年2019/04/04 ロバート・マキャモン「奴らは渇いている 上」(扶桑社文庫) 1981年2019/04/02 ロバート・マキャモン「奴らは渇いている 下」(扶桑社文庫) 1981年2019/04/01 ロバート・マ…

ロバート・マキャモン「奴らは渇いている 上」(扶桑社文庫) ロスを制圧しようとする侵略型吸血鬼ホラーの傑作。

1981年作。この前に「バール」「ナイト・ボート」「ベサニィズ・シン」(「ナイト・ボート」以外は未訳)の長編があるが、この第4作でベストセラー作家の仲間入りをして、モダンホラーのトップの一人に名をあげた。まあ、キングはともかくとしてそれ以外の…

ロバート・マキャモン「奴らは渇いている 下」(扶桑社文庫) 最後の審判で取り残される吸血鬼を撃退するホラーは忘れた信仰心を復活させる宗教小説。

2019/04/04 ロバート・マキャモン「奴らは渇いている 上」(扶桑社文庫) 1981年の続き。 事件はきわめてゆっくりとはじまる。まずは「ローチ(ごきぶり)」と呼ばれるサイコパスによる連続猟奇殺人が起こる。他にも、ヒスパニッシュの少女の妊娠と凌辱、筋…

ロバート・マキャモン「ミステリー・ウォーク 上」(福武書店・創元推理文庫) ギフテッドのネイティブアメリカンに向けられるレイシズムが神秘の道を歩く苦難と苦痛を倍加する。

1951年、アラバマ州に生まれたビリー・クリークモア。彼はギフテッド・チャイルド(GC)であったが、通常のGCとは異なる能力をもっていた。勉学やスポーツではほとんどほかの子供らと変わらない。彼にできたのは、死者の霊を感じ、彼らの痛みを引き受けて、…