odd_hatchの読書ノート

エントリーは3000を超えているので、記事一覧よりもカテゴリー「INDEX」をご覧ください。2023/9/21

ロバート・マキャモン INDEX

2021/10/20 ロバート・マキャモン「ナイトボート」(角川文庫) 1980年
2019/04/04 ロバート・マキャモン「奴らは渇いている 上」(扶桑社文庫) 1981年
2019/04/02 ロバート・マキャモン「奴らは渇いている 下」(扶桑社文庫) 1981年
2019/04/01 ロバート・マキャモン「ミステリー・ウォーク 上」(福武書店・創元推理文庫) 1983年 1983年
2019/03/29 ロバート・マキャモン「ミステリー・ウォーク 下」(福武書店・創元推理文庫)-1 1983年
2019/03/28 ロバート・マキャモン「ミステリー・ウォーク 下」(福武書店・創元推理文庫)-2 1983年
2019/03/26 ロバート・マキャモン「アッシャー家の弔鐘 上」(扶桑社文庫) 1984
2019/03/25 ロバート・マキャモン「アッシャー家の弔鐘 下」(扶桑社文庫) 1984
2019/03/22 ロバート・マキャモン他「ハードシェル」(ハヤカワ文庫) 
2019/03/21 ロバート・マキャモン「スワンソング 上」(福武書店)-1 1987年
2019/03/19 ロバート・マキャモン「スワンソング 上」(福武書店)-2 1987年
2019/03/18 ロバート・マキャモン「スワンソング 上」(福武書店)-3 1987年
2019/03/15 ロバート・マキャモン「スワンソング 下」(福武書店)-1 1987年
2019/03/14 ロバート・マキャモン「スワンソング 下」(福武書店)-2 1987年
2019/03/12 ロバート・マキャモン「スティンガー 上」(扶桑社文庫) 1988年
2019/03/11 ロバート・マキャモン「スティンガー 下」(扶桑社文庫) 1988年
2019/03/08 ロバート・マキャモン「ブルーワールド」(文春文庫)-1 1989年
2019/03/07 ロバート・マキャモン「ブルーワールド」(文春文庫)-2 1989年 1989年
2019/03/05 ロバート・マキャモン「狼の時 上」(角川文庫) 1989年
2019/03/04 ロバート・マキャモン「狼の時 下」(角川文庫) 1989年
2019/03/01 ロバート・マキャモン「マイン 上」(文芸春秋社) 1990年
2019/02/28 ロバート・マキャモン「マイン 下」(文芸春秋社) 1990年
2019/02/25 ロバート・マキャモン「少年時代 上」(文芸春秋社) 1991年
2019/02/20 ロバート・マキャモン「少年時代 下」(文芸春秋社)-1 1991年
2019/02/19 ロバート・マキャモン「少年時代 下」(文芸春秋社)-2 1991年
2019/02/21 ロバート・マキャモン「遥か、南へ」(文春文庫)-1 1992年
2019/02/19 ロバート・マキャモン「遥か、南へ」(文春文庫)-2 1992年
2019/02/18 ロバート・マキャモン「遥か、南へ」(文春文庫)-3 1992年

 


 ロバート・マキャモンが紹介されたときから、この作家はただものではないと感じて、翻訳をずっと追いかけて熱狂していた。そのときには「スワン・ソング」が圧倒的なナンバー・ワン。続くのは「ミステリー・ウォーク」「アッシャー家の弔鐘」かなと思っていた(尾之上浩司編「ホラー・ガイドブック」(角川文庫)参照)。
 さて、老年になってからの再読では感想ががらっとかわる。個々の作に感じた問題や瑕疵はそれぞれのエントリーを参照してください。この人は社会の悪と「神秘の道」を歩くことをテーマにしてきた。自分に引き寄せれば「正義」をどう実現するかを問いかけてきた。正義の実現を困難にするのは、悪がどのようにあるかを認識することと、正義はしばしば共同体の善とコンフリクトを起こして自分の不利益になることだ。マキャモンはまず悪は社会の外からやってくると考える。吸血鬼やゾンビや宇宙人や地霊など。社会の外に悪があるとすれば、それを退治することは社会の共感と支持を得られる。でもそのような話を書くうちに、社会の外にある悪を退治することはしばしば社会の中でマイノリティを迫害し差別することを起こすことになる。そして、悪を退治する行為がマイノリティの迫害や差別に加担し助長することにもなる。それが現れたのが「スワン・ソング」。そこでは、作者の描く復興する社会は、スワンの意図を超えてマイノリティの迫害や差別を内包するものになってしまった。そのあとの作品の主人公が「神秘の道」を歩いて、自己実現を図ることに成功しても、乗り越えには成功しない。典型的なのは「マイン」。
 ようやく「遥か南へ」で乗り越えの道が示されるようになる。作品の中ではまだ不十分なものであるのだが、その先、作者が行ったその先は未読なのでよくわからない。
 以上のことを考えて、推薦作品を選ぶと
ミステリー・ウォーク
少年時代
遥か南へ
の三作になる。
 もちろんB級エンタメの精髄を集めた「奴らは乾いている」「スティンガー」を能天気に楽しんでもよい。