odd_hatchの読書ノート

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ロバート・フィッシュ「懐かしい殺人」(ハヤカワ文庫)

「英国ミステリ作家クラブの創立者である三人の老作家の経済状態は、まさに逼迫していた。原稿の依頼もなく、ただ世に容れられぬ身の不遇を嘆くだけ・・・そこで協議の結果考え出されたのが殺人請負業《殺人同盟》の結成だった。彼らの本領である伝統的な殺しのテクニックを駆使し、商売はそれこそ順風満帆だった。しかし、遂に彼らは失敗を犯してしまった! 困り果てた老紳士たちは、英国法曹界きっての弁護士パーシヴァル卿に相談を持ちかけたのだが・・・。多彩な著者が、その名人芸を遺憾なく発揮した、ウィットとユーモアにあふれる傑作。(表紙裏のサマリー)」


 著者はアメリカ在住であるけど、舞台がロンドンであるということで、イギリス探偵小説の範疇にいれることにする。
 前半は、うらぶれた探偵作家の「殺人同盟」の活躍。なるほど、これを読むといくつかの教訓を得られる。ひとつは起業するのに年齢は関係ないこと(69歳と70歳)、もうひとつはコアコンピタンスに集中すること、また事業が順調なことをうぬぼれず、どこかに穴や失敗がないか検証すること。こんなところかな。老いたるとはいえ、彼らはまさに英国のジェントルの持ち主であり貧乏ではあっても矜持を失わず、礼儀作法にうるさい。ここらへんに英国の誇りみたいなものをみてもいい。
 ミステリ好きにとっては、彼らの殺人方法がいかにも古めかしいやり方であることに頬が緩む。
 後半は、ミスを挽回するためのパーシヴァル卿の活躍。一転して法廷小説になる。英国の裁判制度はこの国とはずいぶん違っていて、市民の参加が非常に広く行われている。法廷にいくことは特に珍しいことではないのだろう。ここらへんの気分はこの国にいるとよくわからない。老作家三人が気持ちのいい連中だったので、パーシヴァル卿の請負費用は法外に思えたにしても、裁判後の態度はやはりジェントルであってすがすがしい。あと、へまをしたときの依頼内容が、最後のおちにつながっているところが笑える。いやあ、そういうやり方でしたか。
 こういうプロの作品は、さっと読んで哄笑したらすぐに巻を閉じるのがよい。余計な解説は不要。あいにくフィッシュの作品はこの「殺人同盟」シリーズ3巻、シュロック・ホームズシリーズ2巻が品切れ中。もったいないなあ。まあ、この作が1968年初出。ほかも1960−70年代にかけてということではしかたないか。古本屋で見つけたら、すぐさま購入すべし。

2012/04/12 ロバート・フィッシュ「懐かしい殺人」(ハヤカワ文庫)
2012/04/13 ロバート・フィッシュ「お熱い殺人」(ハヤカワ文庫)
2012/04/14 ロバート・フィッシュ「友情ある殺人」(ハヤカワ文庫)
2013/11/28 ロバート・フィッシュ「シュロック・ホームズの冒険」(ハヤカワ文庫)
2013/11/29 ロバート・フィッシュ「シュロック・ホームズの回想」(ハヤカワ文庫)