odd_hatchの読書ノート

エントリーは2600を超えているので、記事一覧よりもカテゴリー「INDEX」をご覧ください。2021/9/25

太平洋戦争研究会「日中戦争がよくわかる本」(PHP文庫)

 ここでいう日中戦争は1937年の日華事変から1945年の敗戦まで。
 とはいえ、日本軍が中国大陸に軍隊を常駐するようになったのは1900年の義和団事件のとき。以来30年以上にわたって、常駐した軍隊が中国軍と交戦したり、市民に暴虐をふるうことがあったので、1937年を開戦とするのはおかしい。なにしろ日本は中国に宣戦布告していないから。なので、1930年の張作霖爆殺事件以降の日中間の戦闘状況を日本は「変」と呼んで、戦争状態であることを認めなかった。それはおかしいというので、上記事件以降から敗戦までの期間である15年戦争と呼称する場合がある。俺はこちらのほうが実情に合っていると思う。

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 本書は「日中戦争や太平洋戦争の取材・調査・執筆グループ」による一連のレポートの中の一冊。上記期間に関する20の質問に答えるという形式で、記述されている。取材・調査とあるが、文献調査に限られるようで、2006年当時に存命である戦争体験者のインタビューなどはない。それに視点はおもに日本の陸軍にある。日本の政治家、中国の政治家や政治グループなどの記述は少なく、国際政治や経済の話はでてこない。現地軍の行動や将官・佐官などの言動にきをとらわれすぎて、彼らの代弁者になってしまい、できごとを正確に記述したためにかえって全体像が見えなくなる。全体状況で「アメリカは○○の目的でこうした」と書くときに、それを裏付ける資料の読み込みがないので、あいまいな説明が付け加わる。素人の勉強の限界がここにある。
(文庫や新書で読める大多数の日本史が、こういう素人に書かれたものなのは問題。読み込み不足や思い込みがあって不正確。むしろ日本軍の戦争行為を容認・肯定するイデオロギーの拡散目的のものばかり。本書はまだ良心的な内容ではあるが、それでも瑕疵が多くて読むに堪えない。)
 というわけで、ここでの注目は二点。
 ひとつは南京アトロシティ。文献調査で現地にいた日本兵などから証言を引用する。ページの都合で詳細とはいえないまでも、入城以前から虐殺は起きていて、入城後の数日間に膨大な人数が虐殺された。日本軍は記録を残す手間をしなかったので、全体像は不明。
 もうひとつは三光作戦。日本軍は物資(ことに糧秣)を現地調達することを旨としてきた(日露戦争のころはそうではなかったとおもうのだが、いつ堕落したのだ? 追記:シベリア出兵あたりかららしい)。1938年をピークに日本の生産高は落ちたので(経済制裁を受けて輸入が激減し、大量の徴兵が国内労働者を減らすなどが理由)、中国派遣軍はつねに物資不足。くわえて中国軍はゲリラ戦を行ったので、軍の消耗が激しい。そこで取られたのが、殺しつくし・奪いつくし・焼き尽くす三光作戦。「光」はきれいさっぱり何も残らない状態にすることの意味を持つ。そのような作戦(と言えるのか。軍の暴徒化でも足りない)を中国各地で行う。それが1938年以降敗戦までの中国駐留日本軍の姿。そのおぞましい行為が日本兵らの回想・座談などで引用される。本書によると、三光作戦の犠牲者は中国軍将校をのぞいて247万人以上と推定し、今後の研究でさらに増えるという。
 満州に駐留する関東軍とあわせて中国大陸には常時70-100万人の日本軍が常駐していたという。その戦争と虐殺が膨大な中国人犠牲者をだした。
 これを繰り返さないことの責務が日本人にはある。

 

 

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