odd_hatchの読書ノート

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都筑道夫「少年小説コレクション2」(本の雑誌社)-「ゆうれい博物館」

 「少年小説コレクション1」に続いて本格探偵小説を集める。前の巻よりも少し後の時代のものを集める。初出誌は「中〇コース」「中〇時代」「高〇コース」「高〇時代」「少女コース」など。〇には学年を表す数字がはいる。

ゆうれい博物館 1970.04-71.03 ・・・  以下の5つの短編。探偵は民俗学を学ぶ大学生・和木俊一、二つ名は「おばけ博士」。一緒に動くのは警視庁の近藤刑事に、中学一年生の功一くんとしのぶちゃん。
崖上の三角屋敷 ・・・ 人が住まなくなった洋館に幽霊が出るという噂がたった。ここを買い取る人も出たというが持ち主はマンションに建て替えるという。深夜幽霊を見にいくと、中で何ごとか騒ぎが。いあわせた警官が入ると透明人間に襲われて、ナイフで刺されて死んでいるのがみつかった。ゆうれいが出るという噂で人は逆に集まるのだが、なんででしょう。幽霊騒ぎよりも、こちらの問題をロジカルに考える。
のろわれた人形 ・・・ 人形作家の作品、それも女性のものだけが「殺されて」いた。ひとつをもっているしのぶの家に人形が現れて、誘拐されてしまった。翌日、身代金の電話が入る。なぜその作家の女性人形だけが殺されるのでしょう。とうところからロジカルに考える。
人魚殺人事件 ・・・ ある水族館のまわりでは、人魚の歌を聞いたものは死ぬという噂が流れていた。そんな迷信は日本医はない、では誰が流している。水族館では警備員が殺され、夜浜辺にでた功一は誘拐されてしまった。和木青年に、返してほしければ暗号を解けと犯人から連絡が入る。無人の水族館の水槽に人魚がいるというところで乱歩「緑衣の鬼」を思い出した。
星の亡命者 ・・・ 学校の花壇をうろついている青年がいた。星を追われテロリストに狙われているという。宇宙船の鍵を預かってほしいといわれた。翌日、その青年が殺される。現場を見に行った功一としのぶは男4人組にさらわれてしまった。なぜ星の王子様と名乗ったのか、どうやって危険をおばけ博士に知らせたのか。
幽霊は昼歩く ・・・ 町の本屋で和木にあったのに、本人はしらないという。離婚病ではないかと言い出すので、あとをつけると、自分は青山で、住所はサラサラという。和木の部屋は荒らされて、そこには番町皿屋敷の絵が広げられている。いったい何が起きたのでしょう。というわけで、中学生が和木のやっていることをロジカルに解明する。
 中学生が誘拐されたり、拳銃で脅されたりが日常茶飯事の世界で、なかなか物騒なのだが、中学生には刺激的。でもそのことより、功一くんとしのぶちゃんがいちゃついていることに読者は嫉妬するのではないかしら。
 以下は和木探偵の単発もの。
血をすうへや 1961夏 ・・・ 吸血鬼伝説のある別荘地。夜中に青白い背の高い男が歩いている。次の日の夜、寝ずの番をしているところに男たちが忍んできた。ふたりの男はそれぞれ和木俊一だと名乗る。怪談仕立てで、解決は論理的。 
鬼が来た夜 1971.03 ・・・ スキー場のある村で「おんごもち」という祭りが始まった。その途中、離れの邸で女主人と息子が密室で殺されていた。事件の前に目撃された白髪の男も素焼き釜に頭を突っ込んで死んでいた。事件の状況その他がのちの「七十五羽の烏」にそっくり。
殺人迷路 1971.06 ・・・ 西洋館を改造したホテルには迷路があり、支配人室に面している。夕刻、悲鳴が聞こえ、そこにいくと胸を刺された足の悪い支配人が倒れている。横には血の付いた探検をもった支配人の息子のフィアンセが。自白もしたのに、和木探偵は真相は別にあるという。それをしゃべるのは事件と同じ時刻でなければならないと謎めかす。
 以上3編は西洋館におきた怪異に端を発する事件。怪談仕立てになっているのが共通。


 以下はノンシリーズの単発読み物。。探偵になるのは、和木探偵のように、中学生や高校生のお兄さんにあたる人物。 
鬼の顔 1971.06 ・・・ 川越の喜多院の近くの古い屋敷。そこで深夜鬼の顔をしたおばけを見た。おじいさんに聞くと盗まれたものはないが、絵巻物がニセモノにすり替わっていた。入れ替えているのを見つかった時、とっさに鬼の面をかぶったのだろう。では絵巻物を隠した場所はどこ。
午後十時の日食 1962.01 ・・・ 航行から帰る途中、親友の家に誘われると、そこには給料泥棒が逃げ込んでいた。どうやって逃げ出すか。団地が珍しいころで、固定電話とテレビが普及しはじめたころ。日食は突然訪れる非日常の象徴。次の国内の日食は1963年7月21日(その次が2012年5月20日)という記述に軽いめまいが。当時遠い先に起こると思われた日食を自分は経験してしまった。
黄色いポロシャツ 不明 ・・・ 死んだはずのお父さんが黄色いポロシャツをきて現れた。そいつの正体を調べようと、黄色いポロシャツを着た青年が正子に話しかける。女子高校生の父への思慕と母からの自立の物語。このころの高校生は大人びているなあ。ボーリング場、宇宙時代、喫茶店というアイテムからすると1970年前後なのだろう。
五ひきと二羽が消えた! 1972.08 ・・・ 近所の家で犬、猫、猿、インコなどが盗まれた。犬小屋や専用トイレまでも。最近宝石泥棒があったのを思い出して、中学生と大学生が推理する。
竜神の池 1972.09 ・・・ 深夜に竜神の池におこわを沈めるという祭りがある。ふんどし姿の青年が、ひとりがお櫃を頭に載せ、二人が松明を掲げて従う。お櫃を沈めようと潜ったら、出てこない。松明を捨てて二人が潜ると、背中に40㎝の長さの短剣で刺された姿で見つかった。なぜ衆人環視の中で、殺人を行ったのか。探偵小説好きの大学生が話を聞いただけで解決する。衆人環視のなかで、あるグループで殺人が行われるというのは、センセーの好きなテーマ。「なめくじ長屋」にそういう一編があったと記憶する。
帰ってきた幽霊 1976.09 ・・・ 3か月前に亡くなったはずの新関さんが幽霊になって帰ってきた。下宿先に聞くと、そんな人はいませんよという。そのことを話した下宿の奥さんが血まみれになって下宿の前で死んでいた。犯行現場は下宿の中だが、唯一の出入り口はねじりこみの錠がかかっている。どうやって、そしてなぜ。すごく難しいわくわくする謎だけど、少しずれて国際スパイ小説になってしまった。逆密室も拍子抜けする解決。でも、当時はそういう方が中高生にはウケがよかった(と記憶)。