odd_hatchの読書ノート

エントリーは3000を超えているので、記事一覧よりもカテゴリー「INDEX」をご覧ください。2023/9/21

2019-07-01から1ヶ月間の記事一覧

久生十蘭「キャラコさん」(青空文庫)-2 キャラコさんの善や正義があまねく普遍的になっていって抽象化していき、八紘一宇の日本に居られなくなる。

2019/08/1 久生十蘭「キャラコさん」(青空文庫)-1 1939年の続き。ここから小説の長さがそれまでの半分になる。1939年7月から。なにかあったのか。紙の配給減少とか雑誌の統制とか。 盗人 ・・・ 卒業後豹変した女学校のクラスメイトから、昔のラブレターを…

久生十蘭「日本探偵小説全集 8」(創元推理文庫)「湖畔」「昆虫図」「ハムレット」他 完璧にすぎ、取りつく島もないほど冷たい短編。

「ハムレット 久生十蘭「日本探偵小説全集 8」(創元推理文庫)には「顎十郎捕物帳」全24話と「平賀源内捕物帳」4話が収録。それらは別エントリーで感想を書いたので、残りの短編を読むことにしよう。2019/07/26 久生十蘭「日本探偵小説全集 8」(創元推…

久生十蘭「日本探偵小説全集 8」(創元推理文庫)  顎十郎捕物帖-1 異相の持ち主で、侍の徳義から妙に外れた風来坊は法と権威に頼れない、ノンシャランな探偵。

収録されているのもののうち重要なのは、「顎十郎捕物帖」。これについて見ていこう。この捕物帳の傑作はあまり情報がなくて、雑誌「『奇譚」に1939年1月から1940年7月号にかけて連載されたそうな。戦時統制経済体制になって、紙の配給、割り当てに制限が出…

久生十蘭「日本探偵小説全集 8」(創元推理文庫)  顎十郎捕物帖-2 作者は顎十郎に飽き、役人をやめて駕籠かきに身を隠す顎十郎の心根はどうにも計り兼ねる。

2019/07/26 久生十蘭「日本探偵小説全集 8」(創元推理文庫) 顎十郎捕物帖-1 1939年に続けて後半12編。 遠島船 ・・・ 時は文久二年というから1862年。初鰹船が伊豆沖で遠島船(まあ、八丈あたりに罪人を送る船と思いなせえ)にであう。奇妙なのは、飯がた…

久生十蘭「平賀源内捕物帳」(朝日文庫) とても良い文章と巧みな構成の小説を読んでいるのに、余韻を残さない作風で妙に心に残らない。

講談倶楽部に1940年1月から8月まで連載された捕物帳。書かれた時期は「顎十郎捕物帳」と重なっている。 平賀源内は名前は知られているわりになにをしたかはよくわからない男。博物学者で洋学者で洋画家で、コピーライターで戯作者(横田順弥「日本SF古典集成…

久生十蘭「十字街」(朝日文庫) 根無し草の日本人がパリの政治の大状況(1933年スタヴィスキー事件)の中翻弄され、政治的寝技の駒にされる。

1951年朝日新聞連載。 舞台は1933年元日から約3か月間のパリ。このとき、フランスでは「スタヴィスキー事件」なる疑獄から右翼左翼の入り乱れる大事件がおきていた。詳細は、wikiにまかせよう。スタヴィスキー事件 ja.wikipedia.org なるほど社民政権のある…

小林正弥「サンデルの政治哲学」(平凡社新書)-1

正義はこれまで宗教や倫理による要請として語られてきたが、そのような権威を人があまり認めなくなったので、功利主義で説明するようになった。個人の幸福の増大が社会全体の幸福につながるという考え方。でも、不遇な人をさらに不遇にさせたり、再分配を拒…

小林正弥「サンデルの政治哲学」(平凡社新書)-2

2019/07/19 小林正弥「サンデルの政治哲学」(平凡社新書)-1 2010年 サンデル、あるいは政治哲学の議論を読むときに、ヨーロッパとアメリカの違いを意識することは重要。本書の指摘をまとめると、社会契約説はヨーロッパでは仮構であるとみなされるが、アメ…

小林正弥「サンデルの政治哲学」(平凡社新書)-3

2019/07/19 小林正弥「サンデルの政治哲学」(平凡社新書)-1 2010年2019/07/18 小林正弥「サンデルの政治哲学」(平凡社新書)-2 2010年 読みながらいろいろ疑問をもっていたら(サンデルの議論は東洋でも使える? コミュニティって封建的じゃない?)、最…

櫻井稔「内部告発と公益通報」(中公新書) 企業や組織の不正や悪を告発する人を保護する仕組みを作れ。

2004年6月に公益通報者保護法が制定された。その説明(のようなもの)。21世紀になってから、企業の不正が連続して発覚した。そのきっかけになったのが労働者(雇用人)による内部告発。これを行政が調査し、マスコミが報じることによって、企業や行政などの…

庄司克宏「欧州連合」(岩波新書)-1 EUは「複数の国家が共通の機関を設立し、主権の一部をプールし、共同行使する統治の枠組」。

第2次大戦の惨禍(と東西冷戦)は、分断された欧州ではふたたび戦争を起こすことが懸念された(と同時に、中世から近世の宗教戦争による分断の記憶も想起された)。そこで、緩やかな統合の試みが戦後に始まる。最初は石炭の生産と流通の壁をなくすことだっ…

庄司克宏「欧州連合」(岩波新書)-2 EUは国際的共生を理念として関係諸国・国際社会と協調し安全保障戦略を運営する。

ここまではEUの仕組みと加盟国内の施策について。後半は、関係諸国・国際社会とのありかたについて。EUは国際的共生を理念としていることを念頭において読む。 第3部 EUの挑戦―国際的共生と対立国際ルールの形成・発展とEU―法の支配・人権と環境 ・・・ 範囲…

明石康「国際連合」(岩波新書) 国際連合はEUよりも行政権限は少ないし、経済に直接介入できないし、軍や警察などの司法組織を持っていない。

たとえば「宇宙戦艦ヤマト」では、仇敵ガミラスの滅亡の後、地球は人種や民族を止揚して世界政府をつくる。そういう想像力はユートピア文学やSFによくあって、たいていの未来社会はそんな感じ。さかのぼれば、トーマス・モア、カンパネラらに、さらにはプラ…

トーマス・ペイン「コモン・センス 他三篇」(岩波文庫)

アメリカ独立戦争(1775-1783年)のさなかの1776年に出版されたパンフレット。アメリカ独立戦争 - Wikipedia ほぼ無名の人物の筆になるものであるが、ベストセラーになり、「その半年後に発表された『独立宣言』の内容に多大な影響を与えた(表紙解説)」と…

外山滋比古「思考の整理学」(ちくま文庫) 勉強すること教養を身に着けることの意味や意義がなく、乱雑な構成で使い勝手の悪い仕様のマニュアル本。

元本が出たとき(1983年)は大学生だったから、そのとき読んでいれば感激しただろうな。大学の専門のこと以外に関心興味が深まっていて、どうやれば勉強できるか考えていた時期だったので。そのような若い年からずっと離れて老年に入ってから読むと、いささ…

斉藤孝「読書力」(岩波新書) 21世紀の大学生向けの読書指南。にしては構成も内容も粗雑。

大正教養主義のころから読書術はいろいろ書かれてきたが(三木清「読書と人生」(新潮文庫))、80年もたち、日本人が読書をしなくなると(明治維新のときに外国人は日本人の識字率の高さに驚いたと日本スゴイ系の番組でよく言われるが、21世紀にはそんなこ…

読書感想のエントリーが2200に到達

タイトルの通り。リンク先にリストを載せました。2001〜2200エントリー 一年前からの進捗を記録すると、埴谷雄高「死霊」他を通読。ドストエフスキーの五大長編を除く小説、論文、記録を通読。 いずれエントリーにします。

法月綸太郎 INDEX

2019/06/28 法月綸太郎「密閉教室」(講談社) 1988年2019/06/27 法月綸太郎「雪密室」(講談社) 1989年2019/06/25 法月綸太郎「誰彼」(講談社) 1989年2019/06/24 法月綸太郎「頼子のために」(講談社) 1990年2019/06/21 法月綸太郎「一の悲劇」(祥伝社…