2022/12/02 芝垣和夫「講和から高度成長へ 昭和の歴史9」(小学館文庫)-1 1988年の続き
以後は社会世相。生まれる前の時代だが、文学やノンフィクションでこの時代をいろいろ調べて知っているので、感想は簡単に。
高度成長のスタート ・・・ 数年おきに好況・不況が交替したが、日本は全体として経済発展した。
(この章では経済発展の理由を国内の状況から説明しようとする。それは正しいのであるが、この章で欠落しているのは、アジアの周辺諸国の状況。多くの国は1950年代に独立運動、内戦、代理戦争などを行っていた。そのために経済に投融資が行われず、発展のチャンスがなかった。しかし対米従属下の日本では戦争・内戦状態がなかった。この違いに意識的であるべき。)
国民生活の変貌 ・・・ 衣食住の洋風化、家電製品の普及、都市への人口集中、農業の生産性向上(それが農村の人口流出になる)。マイノリティ(貧困者、引揚者、公害被害者など)の放置、差別。
(在日朝鮮人問題はこの時代の政策の不備による。本書に記述がないのは大きな瑕疵。)
文化と世相 ・・・ マスメディアの伸張、論壇・批評が機能していた時代、大衆化社会。まだカウンターカルチャー、サブカルチャーは生まれていない。10代、20代をターゲットにした商品はまだなかった。
1960年安保闘争 ・・・ 1958年2月に発足した第2次岸内閣が安保条約の改定をめざす。党内の慎重論を根回しして抑え、59年から審議開始。1960年に国会で提出されたが、質問に答えない・強行採決を行う。これに対する反対運動が全国で起きた。6月に自然承認。岸内閣退陣。岸信介や浅沼稲次郎などへの要人テロが行われた。
2015/06/19 日高六郎「1960年5月19日」(岩波新書)
2015/06/18 保坂正康「六〇年安保闘争」(講談社現代新書)
2015/07/02 中島誠「全学連」(三一書房)
2015/07/01 高木正幸「全学連と全共闘」(講談社現代新書)
「経済大国」への道 ・・・ 岸信介退陣のあと池田内閣になり、「所得倍増計画」のスローガンで高度経済成長が開始する。この成長ができた理由は多々あるが、日本が軍隊を持たなかったことと周辺の戦争による「特需」を利用できたこと、固定相場制で円安を継続できたことが大事。経産省の指導とか日本型経営の優秀さとか国民の勤勉や貯蓄率の高さなどは副次的な理由。同時代、ソ連は雪解け、アメリカは久々の民主党政権(JFKが大統領就任)などがあって、自由主義の気分になり、次の60年代を用意する。
(一方、産業構造の転換があった。石炭産業が斜陽化して、大量解雇が行われる。転業支援や社会保障が脆弱なので、大規模な労働争議が起こった。ここでも失業者を救済しない政策が行われる。)
これが書かれたのは1980年代頭。のちのバブル経済はまだだったが、日本の経済は好調だった。なので、1950年代の様々な問題をかなり素通りすることができた。海外情報や国際情勢との関係もほとんどかかれない。なので、21世紀にはここに書かれなかったことやわずかな記載しかないことに注目し、海外との関係を考えながら読むべき。
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