odd_hatchの読書ノート

エントリーは3400を超えているので、記事一覧よりもカテゴリー「INDEX」をご覧ください。2025/9/26

2025-10-01から1ヶ月間の記事一覧

黒木登志夫「新型コロナの科学」(中公新書) 過去を思い出すと、政治家と官僚の不作為と無関心に腹が立つ。

2023年夏に第8波か第9波の流行があり、その次の波はとても小さくなった。すでにコロナウィルス感染で重症化する人は少なくなり、死亡者もほぼいなくなった。そしてなし崩し的に緊急事態宣言が解除され、三密やソーシャル・ディスタンスなども言われなくなり…

鬼頭昭雄「異常気象と地球温暖化」(岩波新書) 二酸化炭素排出の削減に成功しても、すぐに元の環境・生態系に戻るわけではない。数百年続く可能性がある。

2023年(感想を書いた年)は世界的に暑い夏。国連事務総長は「地球温暖化の時代は終わり、地球沸騰の時代(the era of global boiling)が来た」と発言した。https://www.asahi.com/sdgs/article/14969821 地球がおかしなことになっている。それは新聞やテレ…

ギリシャ悲劇とギリシャ哲学 INDEX

2025/10/07 アイスキュロス「ペルシア人」(KINDLE) ギリシャ悲劇を政治学の教科書として読む。サラミス海戦大勝をペルシャの側から描くことで、愛郷心と愛国心をを喚起し民主制の大事さを教える。 BC472年2025/10/06 アイスキュロス「テーバイ攻めの七将」…

アイスキュロス「ペルシア人」(KINDLE) ギリシャ悲劇を政治学の教科書として読む。サラミス海戦大勝をペルシャの側から描くことで、愛郷心と愛国心をを喚起し民主制の大事さを教える。

アイスキュロスの全作品を読む。この人は紀元前525年頃 - 紀元前456年頃が生没年。ペルシャ戦争の勝利を経験し、紀元前480年9月のサラミス海戦に従軍していた。ペリクレス時代の少し前に亡くなった。ソポクレスより二世代くらい上の人になるのかしら。下図参…

アイスキュロス「テーバイ攻めの七将」(KINDLE) オイディプス神話の一部となる悲劇。攻城戦の描写は当時のスペクタクル演劇の趣き。

この悲劇はオイディプス神話に含まれるもの。先に読んだソポクレスでいえば、「コロノスのオイディプス王」で少し触れた出来事の後に起きたことで、「アンティゴネ―」はこの悲劇の後半に重なる。ただし、アイスキュロスのオイディプス神話はソポクレスのとは…

アイスキュロス「嘆願の女たち(ヒケティデス)」(KINDLE) 亡命者・難民の庇護権は古代ギリシャですでに確立していた。ソロンの民主改革の成果。

タイトルは「ヒケティデス」で、邦訳には「嘆願の女たち」「嘆願する女たち」「救いを求める女たち」など。アイスキュロスが若い時期に作ったものと考えられていたが、1953年に発見された写本によって「ヒケティデス」を含む三部作がBC463年の上演であろうと…

アイスキュロス「縛られたプロメテウス」(KINDLE) 人間に勇気と火を送った英雄は神々による懲罰にも和解の説得にも屈しないで、自己犠牲を実行する。

人間に火(ばかりか数、文字、占い、技術など多くのことを教えた)を与えたために、プロメテウスはゼウスの怒りを買い、遥かな山岳のステゥテイアの岩山に鎖でくくりつけられている。さまざまな苦難と痛撃で日々痛めつけられているが、プロメテウスは決して…

アイスキュロス「アガメムノン」(KINDLE) 三部作の第一作。殺人・近親相姦・裏切りで穢された一族への呪いは代々継承される。

オレステイア三部作の第一作。アガメムノン伝説に基づくもので、彼の死を描く。 本書では本編の前に前史が紹介されているが、それだけでは不十分。ギリシャ、ローマ文化の系譜にあるものはアガメムノンをよく知っているだろうが、この国の人びとは記紀神話の…