odd_hatchの読書ノート

エントリーは3400を超えているので、記事一覧よりもカテゴリー「INDEX」をご覧ください。2025/9/26

2025-06-01から1ヶ月間の記事一覧

内村鑑三「ヨブ記講演」(青空文庫) 通常、預言者にしか現れない神が一般人で異邦人のヨブの前に現れたことが決定的な体験である。神は人を試し服従を要求する。

「ヨブ記」を読んだが釈然としないので、簡単に入手できる「ヨブ記」解説書を読む。青空文庫にあったタイトルの書。1920年に断続的に講義したのを1925年に出版した。著者が内村鑑三なので「あちゃあ、やっちまったか」と思った(下記エントリー)が、ともあ…

聖書「福音書」(岩波文庫) ローマ支配下のユダヤ人はいくつかのグループに分裂。現れたイエスは神の国運動の推進者だったり、世の光の権威者だったり。

一日十五分の高速音読を初めて1か月。4つの福音書を音読した。素人の思い付きをメモ。福音書の並びは聖書収録順ではなく、聖書学で成立順とされるものにした。 前史: ユダヤ人は前6~7世紀頃にユダヤ王国を建国したが、後に滅亡。以後、他民族に支配され…

溝田悟士「「福音書」解読」(講談社選書メチエ) マルコ伝でイエスの捕縛と復活に登場する「若者」とは誰か。そこが福音書の「謎」の鍵。

最初に自分がうかつだったと知ったのは、最初のキリスト教文書は福音書ではなく、ペトロの書簡だった。そこに書かれたキリスト教の核心は、1.イエスが私たちの罪のために死に、2.7日目に復活し、3.ケファ(「岩」の意)の前に出現して多くの人の前に…

聖書「使徒のはたらき」(岩波文庫) ユダヤ人とローマ帝国から迫害を受けて、キリスト教は民族や人種に関係ない世界宗教になっていく。

福音書のあとは「使徒行伝」とパウロ書簡と黙示録を高速音読した。 ・使徒行伝はルカ伝の続きとのこと。前半はイエスの弟子であるペテロの話。エルサレムの教会から各地に普及していくさまが描かれる。後半はローマ人でありながらキリスト教に転向したパウロ…

土岐健治「死海写本 『最古の聖書』を読む」(講談社学術文庫) クムラン文書を読んで、黙示録的終末論的エリート宗団の教義を知ろう。

先には、M・ベイジェント、R・リー『死海文書の謎』と、B・スィーリング『イエスのミステリー』という与太本を読んでいた。それはアニメ「新世紀エヴァンゲリオン」で引用されていたからなのであるが(アニメでは通常「ぶんしょ」と読む「文書」を「もん…

山形孝夫「聖書の起源」(ちくま学芸文庫) イエスはユダヤ教の禁忌を破って医療行為をするもの、なんだそう。

もとは1976年に講談社現代新書ででた。それを2009年にちくま学芸文庫に入れなおした。(どうでもいいが、1990年までは学術書・専門書といっていい新書がでていた。21世紀の新書にはふさわしくないので、復刻されるときは学術・専門書を集める文庫に入れる。…

加藤隆「『新約聖書』の誕生」(講談社学術文庫)-1 現状追認で保守化したユダヤ教の改革者がイエス。口承で布教したのでテキストをつくらない。

福音書の成立に関する知識(共観福音書とかQ資料とか)はあった。新約聖書27篇が選ばれたのはイエスの死後300年もたってから。その間に、たくさんの文書が作られたのは知っている。邦訳にも、 聖書「新約聖書外伝」(講談社文芸文庫)がある。そういうのを読…

加藤隆「『新約聖書』の誕生」(講談社学術文庫)-2 キリスト教の拡大は無秩序をもたらしたので、テキストを作り平準化を図る。統一的理解が困難な聖書の権威をささえるのは教会の権威。

2025/06/20 加藤隆「『新約聖書』の誕生」(講談社学術文庫)-1 現状追認で保守化したユダヤ教の改革者がイエス。口承で布教したのでテキストをつくらない。 1999年の続き 最初の1世紀で重要な出来事は66~70年のユダヤ戦争。独立戦争に失敗して(あと…

加藤隆「一神教の誕生」(講談社現代新書) 社会的機能から見たユダヤ教とキリスト教の違い。キリスト教の最大の特徴は「人による人の支配」。

「一神教」とあるが、ここではユダヤ教とキリスト教について検討する。ともにルーツを同じにする宗教で同じ神を信仰すると思われている。それを検討する。やりかたはそれぞれの宗教の歴史を見て、宗教活動の構造の違いを検討すること。ともに同じようなテキ…

加藤隆「キリスト教の本質 「不在の神」はいかにして生まれたか」(NHK出版新書) 神なき領域で行われる宗教ビジネス。古代で有効だった二重構造は近代以降ではやっかいになった。

キリスト教は、神と断絶したので律法を遵守することで神につながろうとするユダヤ教の分派として誕生。イエスの運動はいろいろな要素があったが、その中から神の国に至る方法を神がいない領域で説いて信者を増やし、教会の権威と権力に服従させようという「…

稲垣良典「トマス・アクィナス『神学大全』」(講談社学術文庫) 人間の生や存在の目的は「創造主」「人間を超える何か」に向かうことという考えに同意できない俺はトマスに縁なき衆生。

トマス・アクィナス(1225-1274)の「神学大全(スンマ)」は、大部にして難解。邦訳はあっても、とてもではないが、ひとりで読みとおせることはできないので、研究者による簡便な解説書を読む。文庫で200ページに満たないのはありがたい。 とはいえ、す…

斎藤栄「イエス・キリストの謎」(徳間文庫) トンデモを発見してバカにする練習に使いましょう。

タイトルを見て手に取り中身を見て、史的イエス問題を扱っているのをみて購入。同じ志で書かれたブラウン「ダ・ヴィンチ・コード」やスィーリング「イエスのミステリー」を読んでいるからね。そういや、アベカシス「クムラン」なんてのもあったな、と果てし…

ライナー・マリア・リルケ「ロダン」(岩波文庫) ロダン作品の評価は凡庸だろうが、ロマン主義芸術観を知るのに便利な小著。

このブログからわかるように、自分は小説と西洋古典音楽には一家言を持つようなマニアであるのだが、それ以外の芸術にはうとい。本書を読むまで、ロダンが1840年生まれ1917年没ということすら知らなかった。作品も有名な一つしか知らない。なので、ロダンに…

高階秀爾「近代絵画史 上」(中公新書) 19世紀のフランス絵画史。近代を把握するにはそれ以前のスタイルを知る必要があるが、ここには書かれていない。

1980年代に出版社に入社したいなら著者の「近代絵画史 上下」1975と「名画を見る眼 正続」1969を読んどけと言われた。読んだけどよくわからないし、就職試験には使えなかった。本書の初版(1975年、今流通しているのは2017年以後の増補改訂版)から半世紀た…

高階秀爾「近代絵画史 下」(中公新書) 近代絵画は実験なのだ。色彩と形態の目新しさにどれだけ心惹かれるかで見ればよいのだ。

2025/06/11 高階秀爾「近代絵画史 上」(中公新書) 19世紀のフランス絵画史。近代を把握するにはそれ以前のスタイルを知る必要があるが、ここには書かれていない。 1975年の続き 1972~74年にかけて中央公論社が「世界の名画」全24巻を出した。各巻の解説を…

ベラ・バラージュ「視覚的人間」(岩波文庫)-2 WW1直前の映画革命にワクワクしている熱気が感じられる無声映画の理論書。

十数年ぶりの再読。前回の感想は下記。 odd-hatch.hatenablog.jp この間の大きな変化は、youtubeがさまざまな制約をとっぱらって、巨大ファイルをアップできるようになったこと。その結果、著作権切れになった無声映画が大量にみつかるようになった。これま…

小林信彦「世界の喜劇人」(新潮文庫) 1910~20年代スラップスティック・コメディ無声映画賛。マルクス兄弟を再評価する最初の狼煙だった。

著者によると、スラップスティック・コメディは1912年に誕生した。俺は、映画の革命が起きた年は1913年とみたので、寄しくも一致した。ベラ・バラージュ「視覚的人間」(岩波文庫) さて著者は映画によって、新しいコメディ(むしろファースのほうが当を得て…

カール・ポラニー「ダホメ王国と奴隷貿易——古式経済の分析」(Kindle版) 市場と貨幣がないダホメの贈与経済は生贄と奴隷販売で成り立つ。資本主義はダメ、それはいいがダホメは未来のモデルにしてよいか。

懐かしいニュー・アカの時代(1980年代)に、栗本慎一郎が力を籠めて紹介していた(俺が読んだのはたしか別冊宝島「現代思想のキーワード」)。本書の「視点」にあるように、市場システムに基づく資本主義は種々の限界に達しているので、別の経済システムに…

友野典男「行動経済学 経済は「感情」で動いている」(光文社新書)-1 行動経済学は功利主義を経済学で説明する試みのよう。

数年前に行動経済学の提唱者がノーベル経済学賞を受賞したので、「感情、直感、記憶など、心のはたらきを重視し、私たちの現実により即した経済学を再構築しようとする新しい学問、『行動経済学』」には興味があった。そこで、入門書を読む。この簡単な解説…

友野典男「行動経済学 経済は「感情」で動いている」(光文社新書)-2 人間の行動と感情の関係を理屈つけられるようになるのはまだまだ先

2025/06/04 友野典男「行動経済学 経済は「感情」で動いている」(光文社新書)-1 行動経済学は功利主義を経済学で説明する試みのよう。 2006年の続き。 第6章 フレーミング効果と選好の形成―選好はうつろいやすい ・・・ まったく同じ内容であるが、状況や…

原田泰「ベーシック・インカム」(中公新書) 経済企画庁のキャリアが提唱する内容では理解も合意形成もできなさそう。

2021年にNHKBSがウガンダのベーシックインカム実験のドキュメンタリーを放送した。他の村とは離れていて、自活が難しい村に二年間ヨーロッパのNGOが全村民(子供含む)に一定額を配布する。使い方には口を出さずに、村人がどう使うかを追跡する。その結…