2025-08-01から1ヶ月間の記事一覧
フリッツ・ラングの大作映画「メトロポリス」。初めて見た時から魅了された。よくあるオールタイムベストテン映画にはキューブリック「2001年宇宙の旅」が第1位になることが多いが、俺なら「メトロポリス」だな。ストーリーのめまぐるしさ、複数あるテーマの…
2025/08/29 テア・フォン・ハルボウ「メトロポリス」(中公文庫)-1 数奇な運命をたどった映画と小説。 1926年の続き ストーリーの主人公は若者フレーダー。独裁者ヨー・フレーデルソンの息子で将来を嘱望されているが、聖処女マリアを幻視してから忘れられ…
2025/08/28 テア・フォン・ハルボウ「メトロポリス」(中公文庫)-2 大人の主人公たちの欲望はアニメ「新世紀エヴァンゲリオン」と同じ死んだ女への追慕。 1926年の続き 映画第3部になると、3つのモッブが現れる。人造人間マリアによる指嗾で、都市の秩序…
2025/08/27 テア・フォン・ハルボウ「メトロポリス」(中公文庫)-3 反資本主義と反機械で殺気立つモッブは民族中心の全体主義運動に絡めとられる。 1926年の続き 映画で最も印象的だったのは、機械人間のマリアでも、大げさなだけで無能なフリーダーの稚拙…
文学好きが高じると、自前の「世界文学全集」を作りたくなる。ヘッセほどの読書家が「全集」(実際は選集)を作ると、他の読書好きが参考にできるよいリストになる。敗戦後日本で筑摩書房、平凡社、新潮社、中央公論社などが作った「世界文学全集」はヘッセ…
2023/11/03 ジェイムズ・ジョイス「ダブリナーズ」(新潮文庫)-1 WW1前、作者20代前半の短編。当時のダブリンの生活様式は今と異なることに注意。 1914年2023/11/02 ジェイムズ・ジョイス「ダブリナーズ」(新潮文庫)-2 WW1前、作者20代前半の短編。ダ…
20世紀文学の大作を再読。今回の方針は、脚注をいっさい見ないこと。本文と注のページを行ったり来たりすると、読書のスピードが落ちるし、ストーリーがわからなくなるし、キャラの心理の進行具合がわからなくなるし。いいことがないので、注をみないこと…
2025/08/22 ジェイムズ・ジョイス「ユリシーズ I」(集英社文庫)1-8 第1巻は午前の章。聖務日課のパロディで始まると、スティーブンは宗教と労働の意味を懐疑する。 1922年の続き 続いて第2巻。章は9から13まで。前回の感想は以下。サマリーはそちらを参…
2025/08/21 ジェイムズ・ジョイス「ユリシーズ II」(集英社文庫)9-13 第2巻は昼の章。理性の光が注ぐ昼から陽が落ちるにつれて、差別があちこちで顔を出す。 1922年の続き 第3巻は難物の「太陽神の牛」と「キルケ」。たいへんだぞ。サマリーは前回の感想…
2025/08/20 ジェイムズ・ジョイス「ユリシーズ III」(集英社文庫)14.15 第3巻は夜の章。まだ生まれない子供が歴史を幻視させ、死者が蘇り地霊が舞い踊る。 1922年の続き 第4巻は深夜。昼間活動する大多数は寝静まった。雨は上がり、地霊も亡霊も隠れてし…
そりゃ、「ダブリナーズ」を三回、「若い芸術家の肖像」を三回、「ユリシーズ」を二回読んださ。でも、この人の「文学」は慣れている19世紀の小説とは全然違っている。たとえば、ドスト氏を読むような仕方ではなにも語ることがでてこない。それでもどうにか…
片山杜秀「ベートーヴェンを聴けば世界史がわかる」(文春新書)をものすごい勢いで再読した。2025/07/25 片山杜秀「ベートーヴェンを聴けば世界史がわかる」(文春新書)-2 参政権のある市民の社会から根無し草の大衆社会になると音楽も変わる。 2018年 そ…
radikoで放送大学が聞けるので、2023年秋から翌年にかけて「西洋音楽の歴史」講座を聞いていた。正式受講を申し込んでいないので、俺はニセ学生。耳できいているだけでは理解が不足するので、古い放送教材(2001年初版、2005年改訂)を購入。上の講義内容と…
笠原潔「改訂版 西洋音楽の歴史」(放送大学教材)に続いて、大学生向けの「西洋音楽の歴史」を読む。こちらは複数の編者が構想をたて、編者以外の研究者に原稿を依頼するというやりかた。中世からルネサンス、バロック、古典派、19世紀市民社会、20世紀とい…
笠原潔「改訂版 西洋音楽の歴史」(放送大学教材)のように、音楽の歴史を表現の形式でみていくと、どうしてもJ.S.バッハ以降はドイツの作曲家に系譜をみることになってしまう。でも、バロック時代以降のヨーロッパでは音楽が作られ聞かれる中心地はイタリア…
16世紀から18世紀の西洋の歴史は把握が難しい。たくさんの参考書があるなかで、成瀬治「近代ヨーロッパへの道」講談社学術文庫の整理はとても便利。すなわち、この時代の大きな出来事はふたつ。ひとつはヨーロッパの中で主権国家ができて、対立と協調のダイ…
再読した。前回の感想。 2014/02/21 磯山雅「J.S.バッハ」(講談社現代新書) 今回の再読で気になったのはここ。 「罪」というキリスト教的な語葉には、抵抗を感じられる方もあろう。だが、心のうちに高みや理想を思い描くとき、自分の存在そのものに痛みを…
バッハを聞きだしたときの導きの糸にしたのは、吉田秀和「LP300選」や皆川達夫「バロック音楽」など。そこには勤勉で努力家が神に奉仕する精神性が高い音楽を作曲した人とあった。真面目に聞いて襟を正すような音楽である。彼らが推薦するのは受難曲とミサ曲…