フランス文学
1829年(著者27歳)に匿名で出版され、2年後の再販時にユゴー自身が序文を書いた。 ミステリでいうなら、事件は解決した。しかし関係者には重苦しいしこりが残った。なぜ犯人はあのような事件を起こしたのだろうと内省する。ここで「エンド」の文字がはいる。…
神々は何に乾いているのか。人間の血、とりわけ「革命」に関与した人たち(賛成、反対、協賛、拒否いずれにかかわらず)のそれ。「革命」の熱狂はすさまじいのであるが、そのあとに興奮を冷ますための人身御供を要求するのであって、フランスで起きたものに限…
レーモン・クノーは映画ファンには「地下鉄のザジ」の原作者として(中公文庫に翻訳あり)、アンサイクロペディアファンには「文体演習」で有名な作家。1903年に生まれて、奇想天外な小説や詩や戯曲を書き、1976年没。フランスにはこういう洒脱な人がときど…
大状況が全く書かれていないので、断片的な情報から推測するしかない。フランク・フリードマイヤーが16歳の時に町は占領され、今では19歳というから1942年なのだろう。登場人物の名前はゲルマン風だ。しかし、この「本格ロマン」がフランス語で書かれている…
1933年の作。この前にマルローは1925年にインドシナにわたり、帰仏の途次、中国に渡り国民党政権に協力した。1926年に帰国した。 小説の背景は1927年3月の南京事件。共産党指導のもとに労働組合がゼネストを開始。それにあわせて、党員の武装部隊が警察その…
モーツァルトの同名オペラで筋をよく知っているので、サマリは略。 訳は辰野隆先生。1952年の訳なので古臭いなあ、と読み始めた。みんな難しい漢語を使うし、回りくどい言い回しをするから。途中で思ったのは、「フィガロの結婚」が初演されたのは1784年。時…
老いた医師(それでも40代だろうが)が後見している若い娘がいる。彼女は美しく、どうやら資産もちであるらしいので、医師バルトロは娘ロジーナと結婚しようとしている。バルトロによっていわば幽閉されている美女に哀れを感じたアルマヴィーヴァ伯爵は、雇…
「トリスタンとイゾルデ」のバリアント。今度はフランスの場合。 「愛の媚薬を誤って飲み交わしてしまった王妃イズーと王の甥トリスタン。このときから二人は死に至るまで止むことのない永遠の愛に結び付けられる。ヨーロッパ中世最大のこの恋物語は、世の掟…
アナイス・ニンはヨーロッパに住んでいたが、12歳ころに両親が離婚。アメリカに渡ることになる。そのころから日記を書き始めて、生涯途切れることがなかった。全訳すると、600ページ掛ける10巻くらいの巨大なものになるらしい。ここには、1931年から1934年ま…
高名な作家が匿名で書いたポルノ小説。一時期はマンディアルグが作者ではないかといわれていたが、いまはどうなっているのかな(どこかの個人ブログに「数年前(2000年前後)になって編集者ドミニック・オーリーが自分であるとインタビューで認めた」との記…
1914年生まれ。父親のことは誰も知らず、母もすぐに子育てを放棄。そのため孤児院で生活。その後は、男娼、泥棒、その他の犯罪で生計を立てながら、1930年代にヨーロッパ中(文中にでてくるだけでもスペイン、イタリア、ユーゴスラヴィア、チェコ、…
ぼくは二十歳だった。それがひとの一生でいちばん美しい年齢だなどとだれにも言わせまい。 一歩足を踏みはずせば、いっさいが若者をだめにしてしまうのだ。恋愛も思想も家族を失うことも、大人たちの仲間に入ることも、世の中でおのれがどんな役割を果してい…
1933年フランス、パリ。17歳の青年が銀行に勤めるが仕事が面白くない。数ヶ月でやめて、知り合いのつてでジャン=ジャック・ルソー街のアパートに行く。そこには20代前半の青年が勝手に寝ては出て行く、無秩序な共同体ができていた。彼らは腹をすかせていた…
中学生のころは、同じ作者の「博物誌」がとても好きだった。とくに、短いスケッチ――ほとんどコント――が好きで、真似をしていくつもかいたのだった。しかし、子供をいじめる話である「にんじん」はどうにも手を出す気持ちになれなくて、ヘッセ「車輪の下」と…
「クラルテ」は1919年の刊行で、前年までの第1次大戦でバルビュスは40代でありながら従軍するという経験をもっていたのだった。その体験に裏打ちされた戦場描写は迫真的である。 物語はフランスの地方都市。叔母と同居する内向的な青年が主人公。彼には生や…
高校1年の夏休み、読書感想文の宿題にバルビュスの「地獄」を選んだ。人生に倦んだ青年がホテルの一室に引きこもり、のぞき穴から隣室の宿泊客を覗き見るという話。単なる旅行客がやってくるだけではなく、金持ちの老人、夫をなくした未亡人など人生の種種の…
沈黙と憂愁にとざされ,教会の鐘の音が悲しみの霧となって降りそそぐ灰色の都ブリュージュ.愛する妻をうしなって悲嘆に沈むユーグ・ヴィアーヌがそこで出会ったのは,亡き妻に瓜二つの女ジャーヌだった.世紀末のほの暗い夢のうちに生きたベルギーの詩人・…
奥付とカバーを見て記憶をたどると、高校2年の夏に川越の紀伊国屋書店で購入したのだった。クラブの練習を終えて帰宅する途中で、部活仲間と立ち寄った際に買ったのだろう。白星ひとつの100円、パラフィン紙のカバー。たしかその夏休みに読んだのだったか? …
ネルヴァルについて知っていることは少ない。シェリーやバイロンの同時代人。若いうちより海外雄飛の夢覚めやらず、イタリアからエジプト、トルコその他への地を放浪した。その経験をいくつかのファンタジーにまとめもし、ベルリオーズとの友愛は「ファウスト…
ノルウェーのフィヨルドに囲まれた寒漁村。そこには、スウェーデンボルグが名付け親になったセラフィタという人物=天使がいた。彼=彼女は、生まれながらに霊性を持ち、天に昇ることが可能な超人であった。彼=彼女が17歳の時、牧師の娘ミンナと放浪の哲学探…