odd_hatchの読書ノート

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ローレンス・D・クシュ「魔の三角海域」(角川文庫)

 バミューダ・トライアングルについての与太話を楽しもうと思ったら、これは個々の事例についての調査報告。およそ100例の事件について当時の新聞記事にあたるなどして、ほとんど疑問のない事故なんだよ、真相は不明とはいえ理由は推測可能な範囲(ハリケーンに巻き込まれた、地震にあった、船長たちの判断ミスなどなど)にあるよ、事故直後から捜査は行われていて事故原因は発表されていたよ、ということ。あと、事例の中には、バミューダ・トライアングルの外にあるのに、無理やりこの地域にしているというのもあるということ。原著は1972年で、この時期からデバンキングをする人はいたのだね。
 この本によると、日本近海もおなじような危険地帯ということになっているらしい。その理由は1952年代明神礁爆発に漁船が巻き込まれれ行方不明になった事件があったから、というもの。やれやれ。この国に半世紀ほど生きていますが、たいていの海難事故は調査が行われて原因も明らかになっているのだが。原因不明の海難事故があるとか、幽霊船が出たという話は聞いていないのだよ。このことを日本のバミューダ・トライアングル研究者はどう考えるのか。
<参考エントリー:明神礁爆発が登場する小説 当時の日本人の受け止め方がわかります>
入江徳郎「泣虫記者」(春陽文庫)
(のちに「トンデモ超常現象99の謎」を読んだら、明神礁の事故の報道の際に、「魔の海」という見出しを付けた新聞があって、それが海外で報道された。それを引用する連中によって「魔の海域」ということになったという。)
 こうしてみると、バミューダ・トライアングルも日本近海の危険海域というのも、差別意識を露骨に表したイデオロギー(と呼べるほどのものではないのだが)なのだ。それに加えて、情報の取り扱いが誠実でない、という問題も。とはいえ無味乾燥な報告を読むのは苦痛なので、50ページで挫折。
 それでもバミューダ・トライアングルの本はなくならなかった。少なくなったが、ときどき姿を現す。