odd_hatchの読書ノート

エントリーは2400を超えているので、記事一覧よりもカテゴリー「INDEX」をご覧ください。2020/10/13

日本史

桜井哲夫「思想としての60年代」(講談社)

自身の20代がほぼ1960年代と重なる著者によるこの10年間の鳥瞰。個人的体験を交えていて、それほど「科学的」ではなく、むしろその時代の気分を味わうためのものかしら。初出は1988年。 青春の伝説―ポール・ニザンと『アデン・アラビア』 ・・・ 「ぼくは…

赤塚行雄「戦後欲望史 60年代」(講談社文庫)

表紙は、上段がビートルズ(左からジョージ、ポール、リンゴ、ジョンと思うが自信がない)。下段は左から植木等、デビィ夫人、不明、岸信介、背後に全共闘のバリとゲバ棒写真。 サブタイトルが「黄金の60年代」とあるわけで、この時代をそのように規定する…

赤塚行雄「戦後欲望史 4・50年代」(講談社文庫)

表紙は左から吉田茂、美空ひばり、マッカーサー元帥、マリリン・モンロー、力道山。この時代を象徴する人物としては欠かせない人たちですな。漏れているのは・・・思いつかない。 1985年にシリーズ3部作がほぼ一気に発売。戦後40年ということで、昭和をふり…

週刊新潮編集部「マッカーサーの日本 下」(新潮文庫)

下巻は昭和23年から24年にかけて。このころから占領政策が変わってくる。民政局とGIIの確執が起こるとか、民政局の大立者が辞任してその力を失うとか、もともと仲のよいわけではないトルーマン大統領がマッカーサーを解任したがったとか、アメリカ本国の外交…

週刊新潮編集部「マッカーサーの日本 上」(新潮文庫)

1945年から1952年までこの国はアメリカに占領されていた。外国の軍隊が駐留し、軍票が通貨として使えるところがあった(ドルの持ち込み制限があり、兵士は買い物にドルを使うことが難しかった)。この国の人々の活動が制限されることがあり、公職から追放さ…

竹前栄治「占領戦後史」(岩波現代文庫)

初出は1992年。2002年に改訂。1945-1952年の占領時代をまとめる記述。ここでは占領統治を担ったGHQは主題から外れている。なので、民生局と参謀部の確執とか、マッカーサーのパーソナリティとか、経済政策など興味あることがたくさんあるが、一切割愛。それ…

井上清「天皇の戦争責任」(岩波現代文庫)

これは半藤一利「日本の一番長い日」とあわせて読むのがよいな。「日本の…」では、8月14日から15日までのクーデター未遂が主に下級士官視点で書かれているが、こちらは開戦から終戦までの政府首脳の動きが書かれている。その資料は、「木戸日記」「杉山メモ…

日本戦没学生記念会「きけわだつみのこえ 第1集」(光文社)

1949年昭和24年に東大協同組合出版部が刊行したもの。そのまえに東大生のみの戦没学生の手記「はるかなる山河に」を出版していて、それを母体にして、ほかの全国の大学高等専門学校出身者の遺稿を集めた。集まったもののうち、75名分をこの題名で出版した。 …

荒俣宏「決戦下のユートピア」(文春文庫)

目の付け所が違うなあ。「あの戦争」を語るとなると、切り口はいろいろあれど、被害者か兵士であった日本人というところに落ち着く。空襲や機銃射撃、空腹、いじめ、買い出し、インフレ、物資不足、教練の記憶か、新兵訓練に外地派遣、死地、飢餓、収容所体…

山中恒「ボクラ小国民」(講談社文庫)

1938年(昭和13年)第1次近衛内閣によって国家総動員法が制定された。これによって、総力戦遂行のため国家のすべての人的・物的資源を政府が統制運用できるようになった。経済が国家統制になり(資源分配、生産計画、商品分配などが市場を経由しないようにな…

中村隆英「昭和恐慌と経済政策」(講談社学術文庫)

昭和恐慌の時代は別の本の感想でまとめてきた。 徳川直「太陽のない街」(新潮文庫) ・・・ 同時代の不況と労働争議の様子をみるのによい。 高橋亀吉/森垣淑「昭和金融恐慌史」(講談社学術文庫) ・・・ 高橋亀吉は井上準之助の向うを張って、金解禁反対論…

長幸男「昭和恐慌」(岩波現代文庫)

昭和恐慌のうち、1930年に実施された金解禁に焦点をあてる。昭和恐慌の原因を探ると、それこそ日露戦争くらいまでさかのぼることになるのだが、そこまではみない。またここでは1923年の関東大震災および震災手形、あるいは蔵相の失言から発した1927年の取り…

遠山茂樹「昭和史」(岩波新書)

1955年に書かれて、1959年に改訂版のでた新書。改訂版がでるにあたって、「昭和史論争」という論争があったと聞く。とりあえずその論争の中身には触れないで、この本を読むことにする。 ・昭和史ではあるが、出版された時期を見ての通り、昭和34年までの出来…

松尾尊兌「大正デモクラシー」(岩波現代文庫)

「内には立憲主義、外には帝国主義」とまとめられる大正デモクラシーの、別の、多彩な面をみようとする研究。もとは1974年に刊行。 大正デモクラシーは1905年から1925年にかけての民主主義運動。主な政治目標は、普通選挙の実施、軍縮と徴兵制の改革、税制改…

井上清「自由民権」(岩波現代文庫)

自由民権運動の単著は出さなかったが、折に触れて書いた論文を収録。 自由民権運動1951 ・・・ 明治維新前から民衆の民主改革要求はあったが、散発的な運動にとどまった。明治政府ができて封建的な体制はなくなるかにみえたが、官僚制と資本主義を基とする政…

井上清「明治維新」(岩波現代文庫)

1913年生まれ2001年没の歴史家。近代日本史を専攻し、羽仁五郎の大きな影響を受ける。もっとも師のアジテーター的なところは継承していないで、アカデミシャンとして冷静な発言をする。師の影響もあって、歴史の人民解放という視点を強調する。 明治維新につ…

杉山博「日本の歴史11 戦国大名」(中公文庫)

ここでは1470年から1570年にかけての歴史がおもに大名の視点で語られる。このあとの天下統一は次の巻の主題なので、織田・豊臣・徳川の話はほとんど出てこない。かわりに、伊達政宗、武田信玄、上杉謙信、北条早雲、毛利元就などの地方大名が語られる。戦後…

網野善彦「日本の歴史をよみなおす」(ちくま学芸文庫)-2

網野善彦「日本の歴史をよみなおす」(ちくま学芸文庫)-1 後半は「続・日本の歴史をよみなおす」というタイトルで出版されたもの。ちくま学芸文庫版は二つの本の合本。「日本中世の民衆像」(岩波新書)から10年を経ての講義なので、前著の内容を覆す発言も…

網野善彦「日本の歴史をよみなおす」(ちくま学芸文庫)-1

この国の通史を勉強するのに便利なのは、中央公論社の「日本の歴史」シリーズ。昭和30-40年代にこの国の歴史家を動員して書いたこの浩瀚な大著は読み通すのも大変。とはいえ、その後、この国の歴史の研究の仕方が変わったらしい。単純には過去の歴史書を読ん…

矢吹邦彦「炎の陽明学 山田方谷伝」(明徳出版社)

山田方谷は備中松山藩(現岡山県高梁市)の人。江戸末の百姓生まれであったが、幼少のころより聡明であったので、朱子学に勤しむ。長じては大阪の塾に留学し、陽明学(大塩平八郎、吉田松陰などが有名)を学ぶ。折から、藩財政が悪化していたことに加え、藩…

多木浩二「天皇の肖像」(岩波新書)

以下は不正確なまとめになるだろう。 ストーリーは大政奉還と江戸城の開城から始まる。幕府は潰れた、ではどうするか。新政府に力がないのは明白。しかも人民(そんな階級の人はいなかったが)も信用していない。そこで、早急に新政府の「中心」を作らなけれ…

色川大吉「自由民権」(岩波新書)

「今から百年前,アジアで最初の国会開設要求の国民運動が日本全国からわきおこった.一八八一年は,この自由民権運動の最高潮の時であり,民衆憲法草案が続々起草され,自由党が結成され,専制政府は崩壊の危機にまで追いつめられた.各地で進められている…

沼田多稼蔵「日露陸戦新史」(岩波新書)

そう簡単には入手できない一冊。自分の手元にあるのは昭和15年初版のもの。新規開店した古本屋にいったらこれが300円で売られていた。1990年ころの話。数年を経ずしてつぶれてしまった。 内容を例によってまとめてみるが、今回は超訳をところどころで採用。 …

野村實「日本海海戦の真実」(講談社現代新書)

1905年5月25日の日本海海戦のことは、ノビコフ・プリボイ「ツシマ」によってロシア側のことを知ることができるとはいえ、この国の多くの人は司馬遼太郎「坂の上の雲」で知ることになるだろう。ここには、1968年ころの連載中、まだ存命中だった日本海海戦経験…

家永三郎「太平洋戦争」(岩波現代文庫)

文字から炎が湧き上がるかのような熱い文章。1913年生まれ。学生時代の1932年にマルクス主義と出会い、圧倒的な体験になった。その後、高校の教師になるが戦前・戦中は時局批判の活動ができない。戦後、その体験から現代史を講義するとともに、政治批判を活…

森本忠夫「マクロ経営学から見た太平洋戦争」(PHP新書)

「あの」戦争について書かれた本は多岐にのぼる。小学生のころに手にした太平洋戦記を皮切りに多くの本を読んできた。最近の問題意識は、「あの」戦争の個々の局面における決断や戦局推移にではなく、どうすれば「あの」戦争を回避することができたのか、ど…

大江志乃夫「徴兵制」(岩波新書)

書かれたのは1981年。レーガンがアメリカ大統領になり、新たな冷戦の開始を意図した。共産圏の周辺国家に核兵器を配備しようとして、反核運動をおこす原因になった。日本には核兵器を配備することはできなかったが、大幅な防衛費の負担増加を求めた。そのた…

平岡正明「日本人は中国で何をしたか」(潮文庫)

だいたい3つの区分で旧日本軍の行った残虐行為を紹介し、その背景を分析する。その際に、国民党軍や八路軍の戦略、政略も検討対象にする。そのことは、残虐行為の背景を理解する助けになる。 いつものように著者の主張をまとめよう。 ・1931年の柳条湖事件…

森村誠一「悪魔の飽食」(カッパノベルス)

1982年のベストセラー。百万部を超えたらしい。このような陰惨なノンフィクションを受け入れる土壌があったことを懐かしく思い出す。レーガン政権になって核戦争の可能性が増したと思われた時代だったこと、それから医療行政の不手際が目立つことあたりがそ…

多川精一「戦争のグラフィズム」(平凡社ライブラリ)

対米開戦の避けられないと思われた昭和14-5年ころに、陸軍参謀部は考えた。米にはLifeが、ソ連にはUSSRというグラフ誌があるではないか。それに比べわが軍、わが国には。というわけで、参謀本部の肝いりで「対ソ宣伝計画」を目的にした民間雑誌会社を作るこ…