日本史
「日本」概念ができて共有されるようになったのは7世紀以降。それ以前は、「日本」「日本人」はいない。アジアとの関係、人間社会にフォーカスする。 第1章 原始の列島と人類社会 ・・・ 日本列島も氷期・間氷期で姿を変える。およそ8000年前に現在とほぼ同…
2023/07/07 網野善彦「日本社会の歴史 上」(岩波新書) 教科書に出てくる時代区分や政権の名称を使わず、社会システムの変遷として日本の歴史を見る。列島に住む人たちの生活や暮らしは重層的で多様。 1997年の続き 中巻では10世紀から14世紀前半までを扱う…
2023/07/06 網野善彦「日本社会の歴史 中」(岩波新書) 中世の日本。西の大和朝廷は中国化・グローバル化を目指し、東の武士政権は江戸時代化・鎖国化を目指す。 1997年の続き 日本は「一つの国家、一民族」というのは幻想であり、誤りであって、複数の王権…
さて日本の歴史を勉強しよう。テキストに選んだのは、中央公論社の「日本の歴史」シリーズ。1960年代に当時の碩学や若手を動員して作られた。歴史学は戦前に政府や国家などの介入を受けて、学問として展開できなかった。その壁が取り払われて、資料や事物に…
対象にしているのは、7-8世紀。天皇家を頂点におく制度はできていて、大和朝廷の権力は東国(今の関東)から朝鮮半島にまで及び、仏教や鉄製農具はすでに伝わっていたがアーリーアダプターだけのもので、地方に行けば数世紀前とほぼ同じ。奈良盆地とその周辺…
高校の日本史で最初のつまづきになるのは、奈良時代(本書の記述は704-771年)。法律や官位が煩雑になり、徴税や戸籍の仕組みが細かくなり、人名がたくさんでてくる。およそ1200-1300年前のこととなると、現在に引き付けて考えることもできず、それを数か月…
770-967年までの200年を扱う。ここも高校の日本史の躓きの時期であって、延々と宮中のできごとが語られる。時間は過ぎているのに、事態はほとんど変化がない。そのうえ、宮中の政治は事なかれの棚あげで、出る杭は打ち、スキャンダルはフレームアップし、談…
前回読んだのを読み直し。 いわゆる平安時代は800年ごろから1200年ごろまでの400年間続く。さらに3つの期(前期・中期・後期)にわけるようだ。この本で扱っている966-1068年はほぼ中期にあたり、平安文化の最盛期とみていいのではないかしら。すなわち8世…
王朝貴族はとてつもないエリート。当時の列島の人口は1000~1500万人と推定されているが、そのうち公卿は20人、天皇に拝謁できる殿上人は20~100人くらい。この位を得られるのは特定の氏だけで、その他の貴族は数百のポストを獲得するために、右往左往するこ…
平家の滅亡は、「平家物語」「源平盛衰記」などの文学によってよく知られている。それらから派生したさまざまなエンターテインメントによって主要な人物は明確なキャラがつくられ、日本人のある種の典型とされている。しかし史料を検討すると、文学は後から…
平安末期が乱世になるのは、「方丈記」などで知っていたが、その理由がわかった。 「平安初期(西暦820年)の嵯峨天皇の頃に最高気温(25.9℃)を記録しました。一番寒かったのは、平清盛の生きた平安後期(11~12世紀,約24.0℃)で、聖徳太子の活躍した飛鳥…
2023/06/20 五味文彦「大系日本の歴史5 鎌倉と京」(小学館ライブラリー)-1 気候変動による寒冷化によって平安末期は乱世になった 1988年の続き 鎌倉幕府が政権を担当するようになる13世紀には温暖になったのだろう。生産が上がって治安は穏やかになる。そ…
1333-1409年までの14世紀を扱う。ああ、もっと面白く記述できるのに、単調な仕上がりになってしまった。その理由はこの時代の描くのに京都中心にしたこと。そのために、後醍醐天皇と尊氏との正統争いに矮小化されてしまった。これらの関係者がいなくなったあ…
先に杉山博「日本の歴史11 戦国大名」(中公文庫)を読んだ。そのために前掲書のエントリーで疑問にしたことの説明がこちらにあった。読む順番をコントロールできないので(入手順に読むから)、そういうこともある。本来なら第9巻の「南北朝の動乱」を読ん…
前巻である杉山博「日本の歴史11 戦国大名」(中公文庫)の続き。文庫版は1974年だが、単行本では1960年代初頭の初出。 1550-1600年までの天下統一運動のまとめ。主要登場人物は織田信長に豊臣秀吉、そして徳川家康。この国の人がとても好きな時代と人々。自…
前巻「日本の歴史12 天下一統」に続いて、1600-50年ころを記述。前半の主人公は徳川家康。後半になると、特長的な個人は登場しない。強烈な個性を持つ人物の栄枯盛衰が、組織や制度の変革にとって変えられる過程に照応する。これは中世が近代の中央集権制・…
1945年からの占領期に、占領軍は日本の近代化を阻むものとして地主と大規模土地所有制を解体することにした。そのため、小作による農民運動がさかんになった(山口武秀「常東から三里塚へ」(三一新書))。なので当時は革新政党の支持が高かった。では新し…
前の巻になる佐々木潤之介「日本の歴史15 大名と百姓」(中公文庫) は大名と農村から17世紀を見たが、ここでは都市と商人から17世紀をみる。 徳川家光が死んだ1651年から吉宗が将軍になる1716年まで。すでに国内統治体制はでき、鎖国で外国との交通も閉じた…
自分が知っている日本の19世紀の歴史は1960年代の研究で止まっているので、比較的最近の研究をまとめたものを読む(初出は2006年)。これまでは「日本の歴史」として記述してきたが、当時の世界情勢(ウィーン体制、ルイ・ボナパルト即位、阿片戦争、クリミ…
2023/02/07 井上勝生「幕末・維新」(岩波新書)-1 2006年の続き 本書で気の付いたのは、江戸時代と明治時代の境界をひかないこと。大政奉還、江戸開城、天皇入城のようなあるできごとで区別されたとしない。次第に江戸幕府の権威が落ち、明治政府の命令に従…
初読は高校3年の春。大学受験が終わり、結果発表を待っている間だった。この本を読んだ理由は単純で、受験勉強中に司馬遼太郎「竜馬がゆく」を読んでいたから(中学1年以来2回目)。龍馬の生涯を別人による記述で確かめたかったのだ。司馬の小説は1964-67年…
「武士」とはどういう存在だったかは自明のように思えるが、そのような階級が無くなって150年もたつと、時代劇・小説や歌舞伎に描かれた武士が実在していたかのようにおもう。これが極右やネトウヨになると、日本人の精神を代表する存在に化けてしまう(江戸…
2023/02/02 高橋昌明「武士の日本史」(岩波新書)-1 2018年の続き 前2章で歴史的変遷をみてきたが、こんどは武芸や戦闘行為をあきらかにする。自民党、極右、神道系宗教、ネトウヨなどがいう「武士」「武士道」は胡散くさいものだという印象があったが、そ…
井上勝生「幕末・維新」(岩波新書)で1840-70年ころまでの日本をみてきた。このときに攘夷運動に基づく帝国主義国家が成立した、というのが自分の見立て。その後、この国はほぼ10年おきに対外戦争を繰り返した。兵員と軍事費の増加は国の経済を成長するおお…
2023/01/27 加藤陽子「それでも、日本人は「戦争」を選んだ」(朝日出版社)-1 2009年の続き 日本の「国防」思想は、恐らく孝明天皇の攘夷と焦土を辞さない戦争の意志から始まる。外国からの危機が迫っているという恐怖がもとにあるのだ。なので、政策は彼ら…
2023/01/27 加藤陽子「それでも、日本人は「戦争」を選んだ」(朝日出版社)-1 2009年2023/01/26 加藤陽子「それでも、日本人は「戦争」を選んだ」(朝日出版社)-2 2009年の続き 20世紀前半の朝鮮と満蒙をめぐる国際関係が奇々怪々なのは、同盟と敵の関係が…
昭和の歴史を振り返る1980年代の企画。第1巻は昭和の前の1918-1925年。今井清一「日本の歴史23 大正デモクラシー」(中公文庫)-1今井清一「日本の歴史23 大正デモクラシー」(中公文庫)-2 「改造」の時代 ・・・ WW1の終了後。西洋の貿易が止まったので、…
2023/01/23 金原左門「昭和への胎動 昭和の歴史1」(小学館文庫)-1 1988年の続き 大きなトピックは関東大震災。日本の流れをかえた。 関東大震災と天譴(てんけん)論 ・・・ 1922年9月1日の関東大震災と朝鮮人虐殺はリンク先を参照。社会主義者のリンチ虐…
1927年から1931年にかけての時代。テーマは大不況・軍縮・金解禁。不況に対して国債発行で乗り切ろうとしたが、赤字財政が増大することを恐れ公債発行を漸減しようとする。これが軍事費削減になる軍部が反発する。 昭和の開幕~はじめに~ ・・・ 大正天皇の…
2023/01/19 中村政則「昭和の恐慌 昭和の歴史2」(小学館文庫)-1 1988年の続き 1920年からの日本の不況をいかにして克服するか。他国の不況対策と比較すると日本の対策の特長はどういうものか。その問いに答えるために、金解禁とアメリカのニューディール…