odd_hatchの読書ノート

エントリーは2200を超えているので、記事一覧よりもカテゴリー「INDEX」をご覧ください。

辻真先「『殺人事件』殺人事件」(双葉文庫)

 ポテトとスーパーが主人公の第?作。2人とも20代後半になっている。ポテトはデビューしたばかりのミステリー作家。スーパーは何をやっているのかな、とにかくポテトからポロポーズされたいと焦っている。こういう感情や風景は自分になじみのないものなので、パス。まあ、こういうキャラの人たちの気分はそれなりに描いているのではないかしら。ただ、焦るほどにスーパーの魅力がなくなっていくように思う。

 「新進ミステリー作家の牧薩次(まきさつじ)??あだなはポテトを先生とするミステリー教室に七人の生徒がいた。スーパーと呼ばれるポテトの恋人可能キリコは博識で、ポテトの良き助手である。生徒の一人で美人の小早川佳那は『湯河原温泉殺人事件』を最初に書きあげたが、自分の作品に書いた通りの状況で湯河原で殺されてしまった。作品の後半を読めば、犯人がわかるだろうと思われたが、その行方は誰も知らなかった。ポテトとスーパーをはじめ生徒たちは、湯河原に駆けつけたが、佳那のほかに二人の生徒も習作をほぼ完成させていた? 」

 シリーズ最初のころは「意外な犯人」の捻出に余念がなかった(作者が犯人、出版社が犯人、読者が犯人など)ものだが、シリーズが進むと、「意外な犯人」は意外と少ないことに気づいて、このころにはごくふつうのミステリになっている。とはいえシリーズにはあるこだわりがあり、それは「誰がミステリーを書くか」をいうこと。たいていはスーパーやポテトが書いたことになっているのだが、ときに別の人物が書いたものとされたりして、スーパーとポテトは(小説内に)実在しているのか、(小説内でも)架空の人物であるのか判別できないときがある。そういう複数の語り手がいることで幻惑させるというやりかた。
 ここでは、ミステリ志望者のあつまりで、それぞれの原稿通りに執筆者が殺されていくという趣向。「同人誌」「印刷会社」などがこの趣向を成り立たせる時代状況(1991年初出)。「カラオケマイク(ハンディサイズのカセットテープレコーダーにマイクが付いているというもの)」なんていう懐かしいアイテムも登場。その後のIT機器と通信設備の発展で、これらの状況やアイテムは一掃されてしまった。一時期は、キーボードや携帯電話をトリックに使われたものだが、そんなのもなくなってきている。最新機械を使ったトリックは古びるのが早いね。
 途中で小説指南のようなことが書かれているので、エンターテイメント作家志望者はしっかりと読んでおくように。