2025/01/24 フョードル・ドストエフスキー「罪と罰 上」(岩波文庫)第2部1.2 ラスコーリニコフは熱病になり証拠隠滅を図る 1866年の続き
家族や世間と縁を切ったはずなのに、ラスコーリニコフの後を追いかけてくる。


3.高熱を出したラスコーリニコフは5日間(第5章のラズミーヒンの証言)もうなされる。だれかが来たような気もするが何も覚えていない。ようやく意識が戻ったとき、ラズミーヒンが訪ねてきた。「まるで船室」の部屋の住所を警察に聞いてきたのだという。女中のナスターシャが食事をもってきて、ようやく人心地。ラスコーリニコフの母親が35ルーブルの仕送りを送ってきたので、ラズミーヒンはその金でラスコーリニコフの服を買ってきた。
(ラズミーヒンが警察に寄ってきて署長や「火薬中尉」らと話しをしたときいてラスコーリニコフは緊張する。ともあれ杞憂に終わる。ラズミーヒンは金に細かい。買ってきた服を取り上げてはいくらだったかをいちいち報告する。ドストエフスキーは細かい数字を記載する癖がある。)
4.ラズミーヒンの友人で医師のゾシーモフ(27、8歳)がやってくる。ラスコーリニコフを診察して、食事などの注意を伝える。ラズミーヒンは警察で聞いた「金貸し婆さん」殺し事件の概要を伝える。金貸しの妹のリザヴェータも殺され、彼女はラスコーリニコフのシャツを繕ったことがあるという。警察は事件当日、現場の建物で仕事をしていたペンキ塗りを逮捕して尋問しているという。婆さんの持ち物の耳輪をもっていたからだ。しかしラズミーヒンはペンキ屋は犯人ではなく、別の真犯人が途中で落としたものを拾っただけだと推理してみせた。
(この章ではラスコーリニコフのことがほとんど書かれない。リザヴェータと関係があったことを知らされた時、ラズミーヒンの推理を聞いた時、どのように反応したかはわからない。それでもラズミーヒンの話で動揺し蒼白になっているのは手に取るようにわかる。)
5.続いてルージン(45歳)がやってくる。ペテルブルクに貸し部屋を借りたので、あいさつに来たのだ。みなぼろの古着を着ているのにルージンは新調品ばかりを身に着けている(部屋にいるナスターシャを含めた5人の服装の違いは強烈だ。経済格差をみせつける)。気取屋紳士といったふう。実際に、経済学と科学が社会をよくするという信念の持ち主で進歩派。これがラスコーリニコフだけでなくラズミーヒンもルージンを嫌う理由になった。ルージンの話をさえぎってラズミーヒンは金貸し婆さん殺しの犯人は入質人であるという推理を披露する。ルージンが口を挟もうとしたので、ラスコーリニコフは結婚は認めない、出ていけと命じた。「その背中に、おれは恐ろしい侮辱を背負って出ていくのだぞ、とでも言いたげな表情が表われていた」。ラスコーリニコフは一人になりたいと、ラズミーヒンもゾシーモフも追い出す。
(一月の間誰も訪れなかったラスコーリニコフの「狭苦しい檻」「戸棚か大型トランクを思わせる黄色い部屋」「船室」はにわかに人が集まる場所になる。「あれ」「醜悪な計画」を実行して社会に関わったことで、ラスコーリニコフはいやおうなしに「地下室」にこもっていることができなくなる。そして自分の考え、空想とだけ会話をかわしていたのが、他人の話を聞き、他人に話をするようになる。話をしあう場は他人を否定できない。ラスコーリニコフは複数性@アーレントを認識せざるを得ない。)
(ルージンは西洋の近代化をロシアに持ってこようとする進歩派で、拝金主義者。金を増やすことが人生の目的であるような経済人だ。ロシア的な民衆への信頼や宗教心を持たないから、ラスコーリニコフにもラズミーヒンにも激しく嫌われる。経済人嫌い、科学嫌いの論理は「地下室の手記」の第1部、とくに7~9を参照。)
フョードル・ドストエフスキー「罪と罰」
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2025/01/21 フョードル・ドストエフスキー「罪と罰 上」(岩波文庫)第2部6.7 マルメラードフは死に、ラスコーリニコフを生きていけると確信する 1866年に続く