2026/02/24 マーヴィン・ピーク「タイタス・アローン」(創元推理文庫)-1 脱出した先の社会は無機質で無関心で、ゴーメンガースト城を誰も知らない。注目されないタイタスは不満。 1959年の続き

再び地上に出たタイタスは〈科学者の娘〉チータァと出会い、彼女の家に匿われる。チータァはタイタスを一方的に愛するが、タイタスは応えない。彼の貴族性が傲慢として現れ、居心地の悪さは「道に迷う」という感覚と産む。「ぼくのいる場所はここではない」「ぼくがぼくだって証拠をくれ」と癇癪をおこしている。ついにチータァはキレてしまい、タイタスを深く憎むようになる。
年下の娘とのうまくいかない恋愛は、第2部の「恋愛」のネガ。フューシャの信頼や〈やつ〉の野生がチータァにはない。チータァの粗暴さと傲慢はまるでタイタス自身のよう。そのうえチータァもタイタスを所有物のように占有したいのもタイタスには気に入らない。そして二人は決裂して互いを憎むようになる。
そこにおいてチータァはタイタスを「黒い家」のパーティに招待する。そこに行くには飛行艇やヘリコプターで半日くらいは移動しないと着かないような辺境にある。タイタスは来そうにないので、チータァは拉致同然にして連れてくる。そして娘の命令を受けた科学者はタイタスの前に、ガートルード妃やフューシャ、その他城の者を召喚する(というか幻影を見せる)。混乱するタイタス。黒い家に集まる群衆も動揺する。そこにマズルハッチが到着し、科学者のからくりを暴く。チータァは怒り、憎んで、逃げ出す。マズルハッチは鎧を着た男に殺される。そこにジュノーと新キャラ〈錨アンカー〉がきて、〈錨〉が操縦する飛行艇で怒る群衆をあとに、黒い家から離脱する。繰り返し他人に助けられてばかりのタイタス、機内にある落下傘をつけて飛行中に勝手に降下。着陸したところはなんとゴーメンガースト山。徒歩で城に戻れるのであるが、タイタスは今度こそ城に背を向ける。
何を言っているかわからないと思うが、俺にもよくわからねえ。第2部までの重厚長大な文体はどこへやら。飛躍が激しい文章と、感情を叩きつけるような言葉が続き、一文ごとに場面が転換する。上のサマリーのように物語を語るには端折らざるをえない。ゴシックロマンスの末裔の小説がいきなりヌーボー・ロマンになってしまったかのよう。後半は前掲のオールディス「世界のAの報告書」、リンゼイ「アルクトゥールスへの旅」にくわえ、バラードやデュラスを読んでいるかのようでした。
とりあえずは、タイタスがアイデンティティを探すのがテーマになっている模様。でも、自由と独立は実行できても、その先の「友情・勇気と信頼・才能の自負・伴侶との出会い」に至らない。その理由は前のエントリーを参照。タイタスは教養小説の主人公になりうるなにかの使命をもっていそうな貴種であるのだが、成長の儀式には失敗し続けるのだ。
〈参考エントリー〉
ヤンソン「ムーミンパパの思い出」
荒俣宏「別世界通信」(ちくま文庫)で、マーヴィン・ピークの「ゴーメンガースト」三部作がふれられていた。まだ邦訳のない時代(1977年)だったので、物語のサマリーと引用にページを費やす。作品論でとくにメモしておきたいことは書いてなかった。なお、「タイタス・アローン」はピークが晩年病床で書いたものだという。文体が異なり、即物的なイメージになるのは体調不良のせいかな?
ピークはここまで書いて物故。ネットによると、ピークの関係者が彼の意図やメモを使って第4部を書いたとのこと。邦訳あり。教養小説の骨格である「自由・独立・友情・勇気と信頼・才能の自負・伴侶との出会い」があるらしい。あまり芳しい評価がないので、今のところ読む予定はない。
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