エラリー・クイーン
倒産した発電会社の社長ソリー・スペイスが、ハリウッドの屋敷で殺された。彼は倒産にもかかわらず私腹を肥やし、欺かれた共同経営者や一般投資家から深い恨みを買っていたばかりか、正義感の強い彼の息子もまた父を憎んでいた。ハリウッドへ脚本を書くため…
ギャングの大物バーニー・ストリートが殺され、二百万ドルの遺産が残された。当然自分の手に入るとおもっていた妻のエステルは、遺言書に目を通し、愕然とした。すべての財産を、戦時中命を救ってくれたチェコスロバキア人ミーロ・ハーハに遺贈するというの…
クイーンが手に取った受話器から聞こえてきたのは「殺される」というジョニー・Bの断末魔の悲鳴だった・・・ 華々しい社交界の旋風の中でしか充足できなかったジョニー・B。そんな彼が三人の元妻たちをライツヴィルの別荘に呼び集め、遺言状の書き換えを発表…
売り出し中の作家デイン・マッケルは、母の打ち明け話に耳を疑った。厳格勤勉な大実業家の父に女ができたというのだ。まさか・・・デインの驚きは、やがて母への同情に変わった。古風で世間知らずの母を救ってやらなければならない。父の浮気をやめさせるた…
エラリイ・クイーンの許へ匿名の手紙が届いた。中には最近のライツヴィルのゴシップを知らせる新聞の切り抜きが数枚入っていた----“町の隠者”の病死、“大富豪”の自殺、そして“町の乞食”の失踪。この三つの事件の共通点は? この手紙の主は、不敵にもクイーン…
”自分の声を演奏する”といわれた歌手、グローリーは莫大な財産を築いた後に引退していた。その彼女が何者かに拳銃で射殺されるという事件が発生した。現場には、―― face ――の文字が書き残されていた。エラリイはダイイング・メッセージの謎を解き明かす…
事件の発端はいまを去る50年前、1905年の新年に遡る。某大出版社社長夫妻が、ニューヨークからの帰途、折からの雪にあって車は転覆した。懐妊中だった夫人は双生児の男子を産み落として死んだ。残された夫は、妻の死をもたらした二番目の男子を憎むのあまり…
エラリイは登場すると、現在(書かれたのは1963年)では探偵小説はまことにやりにくくなった。探偵に挑戦しようとする犯人は現実にはいないし、なによりも犯罪捜査の科学化が探偵の推理を必要としなくなった、と慨嘆する。1955年以降のアメリカの経済発展と国…
40人の騎手を従え、2万人の観衆の歓呼の声浴びて、さっそうと躍り出たロデオのスター、たちまち起こる銃声と硝煙の乱舞の中で煙とともに消えた生命。ありあまる凶器の中から真の凶器が発見されない謎を、名探偵エラリー・クイーンはいかにして解くのだろうか…
悪徳弁護士がいる。彼は私生児を生もうとする貧しい女に近寄り、出産費用を立て替えるかわりに、私生児を富豪に斡旋する仕事をしている。今回は、クラブのジャズ歌手の息子を富豪に渡した。その直後に、赤ん坊が殺される。富豪の別荘の近くにいたクイーン警…
ネバダ砂漠の真ん中でエラリイが迷い込んだのは、文明社会から忘れ去られたような共同生活をおくる人々の村だった。独自の宗教と法にしたがう彼らの姿は平和そのものに見えたのだが、エラリイの目前でその「殺人」は起こったのだ……。 不思議な味わいの探偵小…
ここに書かれた民主主義については評価が難しいなあ。外界と途絶し、没落している村落。しかし、そこには開拓時代の自主独立の民主主義政治が営まれている。形式的には彼らのやり方は正しい。ただし、そこにある種の偏見、ドクサ、思い込みがなければ。村の…
ニューヨークとフィラデルフィアの中間にあるあばら家で、正体不明の男が殺されていた。男は、いったい、どちらの町の誰として殺されたのか? 二つの町には、それぞれ殺人の動機と機会を持った容疑者がいる。フィラデルフィアの若妻とニューヨークの人妻をま…
宝石と切手収集家として著名な出版業者の待合室で殺された、身元不明の男。被害者の着衣をはじめ、あらゆるものが“さかさま”の謎。〈ニューヨーク・タイムズ〉紙が「クイーンの最大傑作」と激賞したが、読者の判定はいかがだろうか? クイーンがつくりあげた…
1.ドン・ファンの死(The Death of Don Juan) 2.Eの殺人(E=Murder) 3.ライツヴィルの遺産(The Wrightsville Heirs) 4.パラダイスのダイヤモンド(Diamonds in Paradise) 5.キャロル事件(The Case Against Carroll) 1.3はライツヴィル…
オリジナルの小説ではなくて、ラジオドラマと映画のノベライゼーション。いずれも1940年(かその前後)。はなから小説で発表することを前提とした長編と比べると、重厚さも論理の徹底さもなくて、物足りない。・大富豪殺人事件・・・殺されると思い込んだ大…
探偵小説家ダークと女流演出家のマーサは誰もが羨むおしどり夫婦だったが、いつしか仲が悪くなり、やがてトラブルを起こすようになった。ダークの暴力に耐えかねたマーサから相談を持ち掛けられたエラリイは、自らの秘書ニッキーをダークの秘書として雇わせ…
書誌が複雑なので、憶測を加えて書くと、1950年代に新潮社でだした訳(一部は新潮文庫で出ていた)を1960年代に中央公論社が使って、推理小説の選集をだした。それを中央公論社の元社長の一族の嶋中文庫が再発行。ややこしや。収録されているのは「神の灯」…
それはまだ、英語の学習意欲が旺盛だった19歳(大学一年生)のこと。新宿・紀伊国屋書店の3階でペンギンブックスの「The murder is a fox」を買った。歯が立たなかった。3週間ほどかけて2章まで読んだところで挫折。その直後に、この文庫本がでて一度読んで…
中学2年か3年かにこの大著を読んで、今よりもずっとページをめくるスピードがなかったから、この複雑な設定と長い尋問が頭に入らず、何人かの容疑者を用意しておいたもののいずれも作中探偵と同様に間違え、つまりは最後に驚愕することになった。あまりにシ…
欧米探偵小説の黄金時代を飾る作品。1932年作。もちろん今日の捜査状況から見れば甘いところやいけないところが多々ある(いくら被疑者が鼻持ちならない奴だとしても、私怨で叩きのめしてしまうのはいけないだろう、ヴァーン警視)。にもかかわらず、最後の…
30年ぶりに再読。今回は宇野訳の創元推理文庫版でなく、大久保康夫訳の新潮社版。昭和32年刊行のもの(新潮文庫と同じ)。 1932年発表の高名な小説なので、サマリは略。中学3年の時が初読だが、このとき犯人をあてたぜ、イエー。スゲーだろ。え、そんなこと…