上巻を読んでから1年ほど放置。一気にまとめて読んだ。
この本は「社会主義」を勉強する際の教科書といわれてきたのであるが、それは過去の話。上巻の感想でもあるように、1870年代の自然科学分野をほぼ網羅しているので、当時としては画期的な本であった。それから100年もすると、どの分野においても新しい知見が加わってくるので、「教科書」として使用するには情報が古すぎることになる。ということで、この本は「古典」の仲間入りをした。
いろいろなところで指摘されているので気恥ずかしいが、彼らの考えの問題点は
1.市場は供給と需要を調整する機能をもつかどうか、という点について、彼らは調整不可能とし、市場主義経済は破綻するとみていたこと。実際のところは、政府、諸外国などの市場以外の経済の構成員が介入するなどして、市場は今でも機能を果たしている(まあ時にハイパーインフレや通貨危機を部分的に起こしているけど)。彼らのような異端があってもそれを取り込んで自己増殖や自己改造をするような調整機能を市場経済は持っているということだろうか。
2.国家による計画経済が可能であるとしたこと。 → 税金の配分の代わりに、資材の調達に分配、生産計画に損益分岐の計算、商品別の原価計算に、給与計算、経費の計上に・・・を国家規模で行うというのはちょっと無理だろう。重要なのは、これらの計算や計画に外部のチェックが入らないことだ。
3.歴史(というか国家と経済)の発展が一方向であり、それが必然となること。
彼らは稀代の勉強家でかつ現実分析と理論構築に優れていたのだが、理論と願望の区別があいまいであったということだろうか。(ふたりの本を少量ずつ読んだ感想では、上記の問題はエンゲルスの側にあるように思う。この人はかなり教条的な考えの持ち主であるようだ。マルクスは未整理なところが多くて判断しにくいのだが、2や3のように単純に考えているわけではないように思う。)
この本からエンゲルスの思想の「可能性の中心」を見出すのは難しそう。自分の頭がよくないこともあるけれど。
「反デューリング論」の一部が抜粋されて「空想より科学へ」というパンフレットができ、大きな影響を持った。高校の時に読んだ文庫を取り出してみたら、赤線がびっしり。懐かしいと思うのと、それを読んでいる時にもこういうふうにはならないだろうと感じたことを思い出した(読んだのは1970年代の半ば)。
2005/10/17
「反デューリング論」を読んでさらに5年を経てから「空想から科学へ」を読み直したら、再読するのが苦痛。論理の展開の強引さ、証拠なしの主張、誤った説明などなど。この種のマルクス主義文献は自分の笑いを誘いだすために読むことはあるけど、最近は笑えなくなってきた。
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